第2話

ふらふらと覚束ない足取りで、宗一郎さんに吸い込まれるように近づいていく。



「世那!」



仁の声で我に返り、足が止まる。



「世那。帰ぇるぞ」



「‥‥‥」



--‥仁のところに戻らなきゃ‥。



そう思いながらも宗一郎さんの姿を、最後の瞬間まで目に焼け付けたくて、



ポルシェに凭れたまま、私を見ている宗一郎さんから視線を外すことが出来ない。



沢村に刻印を捺されて穢れた私は、何も望んじゃいけない。



沢村の禍々しい手から守ってくれる、仁のところへ戻らなきゃいけない。



‥解っているけど、宗一郎さんの存在を少しでも長く感じていたいと思う、図々しい私が戻ることを邪魔する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る