第105話 お疲れ様

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 第105話 お疲れ様

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 俺たちがテルケ城を落とした頃、ファッケンバルド城ではソルバーン家の騎士たちが城攻めを行っていた。

 城攻めの指揮を執っているのは、トルク様の弟のシュラーデンさん。参謀としてクスリム・アッジ。将としてブロス・ライデム、グラドス・ダミアンといった面々になる。

 奇襲ということもあって城を守る兵の数は多くないが、残念ながら事前に察知されて守りを固められてしまった。

 戦力は圧倒的だが、ファッケンバルド城は山城でなかなか守りが堅い。百人もこもっていないファッケンバルド城を落とすのに、十二日もかかってしまった。

 それでもこれによってジール州統一が完了した。この偉業に、家内はお祭り騒ぎになった。そこで本当に祭りをしようということになり、また仏法守護社で祭りを行うことになった。

 祭りと聞くと、血が騒ぐ。ジール州の祭り男とは俺のことだ!


 仏法守護社の参道に続々と建物が建っていく。元々仏法守護社は菩薩様と毘沙門天様を祀り、俺たち毘沙門党によって運営されている。

 だから、社殿と毘沙門党員が暮らす建物はあったが、そこで冬になって建設は中断していた。

 今は俺たち毘沙門党が運営する宿や食事を提供する店、土産物店などを建てている。こういったものを整備することで、参拝者が多くやってくるというものだ。

 あと、菩薩様と毘沙門天様の像を魔除けとして売っている。この魔除けの売り上げと、寄進、祈祷、御朱印、そして参道の店々からの上納金が収入となり、仏法守護社を維持する資金になる。


 菩薩様と毘沙門天様の像は、リットの第六部隊(育成部隊)の子供たちの中から、手先の器用な子に彫ってもらっている。手の平に軽々と乗る小型なもので、共になかなか人気があって購入していく人が多い。


 祈祷はマルダが行うのだが、こちらも徐々に広がっており、騎士家と商家を中心に予約が半年以上埋まっている状態だ。


 御朱印を受けるためには、厳しい道を上り、滝行をしてもらう。鍛えている騎士でも結構ハードな修業になっており、簡単には成せない。それでも御朱印がほしいという人はあとを絶たない。


 ソルバーン家は守護神として毘沙門天様を祀っている。そのおかげでジール州の騎士家の多くが毘沙門天様を守護神として崇めるようになっている。

 最近では周辺の州からも商人などがやってきてお参りしていく。ジール州の小さな商店だったホーミン商店が、今ではいくつもの店を出している大商人に飛躍していることで、毘沙門天様の噂が国内に広がっていった結果だ。

 このシュリンダール帝国の商人たちから見た毘沙門天様は、商売の神様なのである。


 そんな仏法守護社には、修業場がある。主に戦で負けた家で殺されなかった女子供が修業をする場である。二度とソルバーン家に歯向かわないように、教育を施している。

 教育じゃなくて洗脳だろって? 何を仰いますか、ウサギさん。俺が洗脳なんてするわけないじゃん(どの口が言うか!?)。

 そもそも、戦と関係ないところで平和に暮らせるのだから、修業場はこの世の天国だぞ?(なぜ疑問形!?)。





 暗い……。今日も俺はこの暗い坑道の中で起き出した。もう何年も外に出ていない。この坑道で寝起きし、働いているんだ。

 こんなはずじゃなかった。俺はこんなところで石ころを掘るようなヤツじゃないんだ。

 どうしてこうなったのか……。

 クソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソックソッ!

 あぁぁぁっ、あいつらが憎い。俺を莫迦にしやがって! 俺を見捨てやがって! 俺をこんな坑道に放り込みやがってぇぇぇっ!


「今に見ていろ!」

「おい、無駄口を利くな!」

「がっ!?」


 監視員の鞭が俺の背中を打つ。こいつらは、ちょっと気に入らないとすぐに鞭で俺たちを打つ。いつか見ていろよ、お前らにこの地獄を味わわせてやる!


 松明の頼りない灯りの下、どす黒い感情が蠢く。


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