第10話
それは、夕食が終わり、テレビを見ながら聡美がスマホを弄っている時だった。
「嘘でしょう!?」
その声を聞いて、台所で後片付けをしていた尾高が慌てたように聡美の方へ飛んできた。
「どうしたの?」
「削除したのよ?なんで!?」
聡美はそう言いながら、スマホの画面を指差した。
「削除したのに、また通知が来た!一体何なの!?」
尾高は聡美の手からスマホを受け取って、画面を見た。
「その人、少し頭おかしいのよ。だから何度も登録解除したのに。また教えてくるの」
「……この人が?」
「変な写真でしょ?わざとフィルターかけてぼかして—―その交差点、きっとあそこの――」
「この、可愛い猫の写真?」
「――え?」
聡美は尾高の手からスマホを受け取った。
そこには、いつも見ていた猫のブログの最近の画像が映っている。
「ち、違う!これじゃなくて」
聡美は慌てて先程見ていたブログを探した。
1woIhという名の、【今日の出来事】を。
しかし、不思議なことにいくら検索しても出てこない。
「うそ……なんで?」
「大丈夫?ちょっと疲れてるんじゃない?」
「……」
聡美は項垂れた。
「最近体調良くなさそうだし。食欲もないみたいだしさ」
「……」
「少し休んだ方がいいよ」
尾高はそう言いながら、優しく聡美の肩を撫でた。
相手がおかしなことを言っているのに、バカにしたり否定したりしない。
(この人は、一体どこまで優しいんだろう……)
聡美は、俯きながらしばらく黙っていたが。
「あのね……」
目を上げると、尾高を見て呟くように言った。
「生理が来ないの」
『何かを生み出す代わりに、何かを失うんだ。バカだな。ほんと。笑える』
暗い交差点の片隅に置かれた弔いの花が。
歩道橋を背にして揺れていた。
ピンボケ画像のはずなのに、聡美の目にはハッキリとそれが見えた。
なぜって……それはいつもの通勤途中に見る。
見慣れた日常の風景だったからだ――
翌日。
聡美は薬局で買った妊娠検査薬で、自分が妊娠していることを知った。
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