第2話 音が鳴らないイヤホン
コンビニから帰宅するなり哲也さんに私の部屋に案内された。
そして私の兄になる先輩の部屋も...一応、案内された。
私は自らの部屋となる空き部屋を見る。
この場所は...かつては先輩の...じゃなかった。
お兄ちゃんの部屋だったそうだ。
だがお兄ちゃんが嫌ったものだから部屋が変わった。
その理由は何となく察しが...というか。
大体は嫌だと思う。
お兄ちゃんはきっとこの部屋には(思い入れ)があり過ぎるのだろう。
「...」
私は静かに目を閉じる。
それから開けてから荷物を運び入れる。
そして...私は横の部屋を見た。
この部屋がお兄ちゃんの部屋、か。
私はビニール袋を見る。
お兄ちゃんは...お菓子をあまり食べないそうだ。
それは過去の拒絶反応が出るから、だそうだけど。
私は手の中にあるお菓子を見てからごくりと唾を飲みこむ。
それから横の部屋を訪問した。
ノックするが反応が無い。
これは予測していた。
「あの」
そこで私は声を発した。
すると「...何だ」と声がした。
私はビクッとしながら「...そ、その。せん...じゃなかった。お兄ちゃん。一緒に...お菓子食べませんか」と言う。
お兄ちゃんは「いや、いい」と断った。
だろうとは思う。
これも予測していた。
「...その。...私、お兄ちゃんと仲良くなりたいので」
「...俺はいいよ。...俺は表に出たくない」
「そんな事を言わないで下さい」
「...」
そして扉の先は音が消えた。
私はその事に「...」となりながら扉の取っ手。
つまりドアノブに手をかける。
それから開けようとしたが鍵がかかっている。
「だよね...」
私は諦めてから踵を返す。
それから自室に戻ってからハ〇チュウを食べ始める。
涙の味がした。
正直、いつもの味じゃない。
とても辛い味がした。
「...」
横の部屋をチラッと見た。
そして段ボールを片付け始める。
それから私は取り敢えず積んできた荷物を広げながら配置していく。
そうしてから私は汗を拭った。
☆
横の部屋。
俺がアイツに浮気されたと知った時の部屋を使っている様だ。
その事に俺はゴミだらけの部屋を見ながら耳を澄ます。
この家に美少女が居る...か。
俺の後輩が居る、か。
皮肉なもんだな。
「女子と関わらないつもりだったのにな」
そんな言葉を放ちながら俺はイヤホンを着ける。
このイヤホンは音は鳴ってない。
外野の音を軽減させているだけである。
音楽は俺の中では死んだ。
「...」
胸がざわつく。
正直...となりで音が鳴るだけで...こんなにざわつくのは久々だ。
考えながら俺は目を閉じて耳を澄ます。
それからあの日々を思い出した。
中学校の日々を。
「...楽しかったな。あの日々は」
だけど何かがズレて...壊れた。
ぶっ壊れてしまった。
何故こんな事になったんだろうな。
そう思いながら俺は考える。
アイツに...アイツを。
自殺から救ったあの日を。
「懐かしいようで...懐かしくない。...本当に楽しかったんだな」
そう言いながら俺はスマホを見る。
そして目を閉じて寝ようとした時だった。
また声がした。
「あの。先輩」
という感じで、だ。
その先輩っていうのは...。
というか俺、お兄さんなんだが。
まあどうでも良いけど。
考えながら俺はイヤホンを剥ぎ取る様にしながら「何だ」とまた言葉を発する。
「そ、その。荷物が重たくて」
「...」
「...手伝ってくれませんか」
「...」
俺は鍵を解錠する。
それからドアを少しだけ開ける。
するとそこに春奈が困惑しながらも心配げな感じで立っていた。
「...やっと顔を見せてくれましたね。先輩」
「...俺なんか見ても不愉快だろ」
「不愉快って何がですか?」
「...もう2週間も風呂にも入ってない。部屋も汚い」
「...」
「...そんな人間を不愉快に見ないのはおかしい」
その言葉に春奈は「...そうなんですね」と言った。
それから笑みを浮かべる。
そして「...お風呂、一緒に入りませんか?」と言ってく...あ?
俺は怪しげな目をする。
「どういう意味だ」
「あ、えっと...それは裸で入るって意味じゃないです。...私が先輩の身体を洗ってあげますから」
「...いや。いいよ」
「でも先輩。それじゃ...何も...」
「年頃の男女がそれはマズいのもあるが...俺は女性が先ず嫌いなんだ。触らないでほしい」
その言葉に春奈は「...ですか」と落ち込む。
俺はその様子に「...荷物はどこだ」と聞いた。
すると春奈は「あ、て、手伝ってくれるんですか」と言ってくる。
「...お前が手伝えって言ったんだぞ」
「あ、そ、そうですね。すいません。こっちです。小さい本棚が...」
そして春奈は段ボールを慌てて開ける。
すると段ボールで人差し指を切った様だ。
「いたっ」と言って血が滲む。
俺はその様子を見ながら「...」となってから踵を返す。
それから部屋からこの前コンビニで買っておいた絆創膏を取り出した。
「...あ」
「...勘違いはしないでほしいが。お前の為に買っておいた訳じゃない」
「い、いえ。助かります。先輩」
「...」
春奈は人差し指に絆創膏を巻いた。
それからニコニコしながら俺を見てきた。
俺は目線を逸らしてから立ち上がる。
そして本棚を持ち上げて運んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます