心が殺された日
みとか
第1話 今日私は50歳になりました
誕生日の前日、夫の博則が
「明日はママの誕生日だから、おばあちゃんにケーキ買ってきて!て、お願いしてきてよ。」
と一番下の桃香に言っていた。
「パパが買いに行けばいいじゃん。」
「仕事あるし、帰ってきたらジムの予約入れてるから買いに行く時間ないよ。ママに自分で買ってきてもらうのも悪いでしょ?」
(誕生日だと分かっててジムの予約を入たのは誰だよ?しかも娘使っておばあちゃんに頼むなんて!)
「で、誕生日の外食は裕貴の受験が終わってからにしよう。」
三男が高校受験なので、外食は3月くらいになりそうだ。
(結局、ケーキの話はうやむやになってるね。まあ、今は甘いものの口じゃないから別になくてもいいかな。にしても、ジムに行かなきゃ帰りにケーキくらい買えるでしょ!?)
誕生日の朝を迎えたけれど、特にいつもと変わりのない月曜日だった。
博則は既に仕事に出ていった後で、今は4人のうち3人の子どもたちが学校に遅れないように慌ただしく朝ごはんを食べている。一番上の広斗は大学の1限がないためまだ寝ていた。誰も私に「おめでとう」とは言ってくれない。
まあ、こんなもんだ、みんな朝はバタバタだから忘れてるよね。自分ですら誕生日を忘れそうだもんね。毎日忙しくしてると普通の日と何ら変わらなくなってくる。
博則からもLINEで用事のついでに「おめでとう」とあっただけ。あ、帰ってきてから顔を合わせたときも「ただいま、おめでとう。」と言われたっけ。すぐにジムに出かけたけど。
結局、ケーキは何も言わなくても母が買ってきてくれた。みんな食べたい種類が違うからいろんな種類を1つずつ。
でも私はご飯の準備やら桃香の習い事の送迎でケーキを食べる時間もなく、子どもたちと両親に先に好きなものを選んで食べてもらうことにした。
ジムから帰ってご飯を食べた博則は、さすがに私よりも先にケーキを食べるのにはためらいがあったのか、私が子どもを迎えに行って帰ってくるまでケーキは食べずにいた。
そのまま博則は朝が早いので早々寝に行ってしまったらしい。
私は洗濯物を片付けていると博則のパソコンの画面がついたままになっている。
(いつも消してるのに珍しい。)
近づいて何気なく画面を見てみると、YouTubeの閲覧履歴が開いていた。
「えっ?」
履歴には「勃起力をあげる」とか「射精の回数を増やす」とか性的な内容の動画が載っていた。
(何でこんなの?まじめな動画ではあるみたいだけど…こんなの見てるの?)
それを知って私はいい気はしなかった。桃香を妊娠してから、もうずっとそういう営みはない。
(もしかして誰かと・・・?)
何だか見てはいけないものを見てしまった気がして、慌ててそこから立ち去ってしまった。
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