第2章 闘宴の序章

信坂魔術高専について/ニジノツヅキの魔術解説ブログ

 はじめまして、あるいはお世話様です。

 信坂高専の覆面ライター、ニジノツヅキです。

 新年度に合わせ、このブログでの魔術紹介も新たな周回に突入です。


 学術書よりはフランクに、SNSよりは丁寧に。

 大人の事情は一切抜き、等身大の学生だからできる発信で、魔術高専のアレコレをお届けします。

 魔適者まてきしゃであってもそうでなくても、魔術を学ぼうとする全員にとって、ささやかでも新たな発見のある場になりますように。


 本日のテーマは、魔術高専という存在と、僕らの通う信坂ノブサカ魔術高専についてです。


 ○魔術高専って誰が通うの?

 まずは基本から、思いっきり基本から振り返っていきましょう。


 魔法とは、人体に存在する宿精霊スピリトを用いて様々な現象を起こす能力です。


 そのうち人間主体で制御できるものが自律制御型魔法技術で、主に魔術と呼称します。魔術を使える人間が魔術適合者(=魔適者)で、一般的に人口の1~2%が該当。

 そうでない大多数の人は、専用の機器によって宿精霊が誘導されることで、魔法の力を使っています。これが機器誘導型魔法技術、つまり器魔術きまじゅつ。僕らの生活を支える魔動機器(=魔器)の原理ですね。熱動機器や電動機器も普及してきたとはいえ、この社会を回す主流は魔法エネルギー。ここの割合は社会科テストで頻出、教科書掲載の値はよく覚えておきましょう。


 ご存知の通り、現代和国では中学卒業レベルまでが義務教育。これは憲法が定めています。

 加えて、中学生までに一定程度の魔術適性が見込まれた児童に対しては、定められた高等教育機関で魔術教育を受けさせることが推奨されています。魔法技術基本法(=魔技法)によります。

 推奨といいつつ実質義務ですし、その後に魔術関連職種に就くまでセットの義務なんですが、この辺りの話は長くなるので割愛。魔技法解説はまたやります、どうせ国会で改正審議やるでしょうし。


 その「定められた教育機関」のうち一つが、僕らの通う信坂ノブサカ魔術高専です。



 ○じゃあ、信坂高専はどんな学校なの?


 信坂県は和永カズナガ本島の北部、銀永ギンエイ山地の南側に位置しています。和国屈指の内陸県、盆地の暑さと北国の豪雪が楽しめるスリリングな大地です。野菜とフルーツはレベル高いよ、魚は高いけど。

 信坂高専は武家時代の英雄・眞幸マユキ氏の築いた植多ウエタ城の跡地に建てられました。今でも城郭の一部は残しつつ、主要施設は21制紀らしい便利で堅牢な鉄コン造り。

 講義棟は勿論、魔術実習や戦闘訓練に使う施設が屋内外に点在しています。敷地の半分以上を占める広大な魔獣飼育園は、他の魔術高専にはない強みです。土地が安い田舎ですからね。


 この山国では山林の恵みだけでなく、そこに棲みつく破壊性魔獣(=壊獣かいじゅう)の脅威が身近です。それを踏まえ、山岳地帯での壊獣討伐を担う人材育成に重点が置かれています。専攻は魔刃戦技科・支援魔術科・衛生魔術科・射出魔術科・魔獣協働科・魔術教育科の6学科、現場直結型の教育方針。

 生徒の過半数は地元出身ですが、適性やガッツを買われ県外から集まる人も多いですね。また、海洋系や工業系を学びたい地元民は県外に出ます。


 さらに近年、つまり嶺上ミネカミ複災以降では。お隣の嶺上県から避難してきた児童を最も多く受け入れてくれた場所でもあります。僕もその一人であり、第二の――いや、それ以上の故郷と呼べるほど、深い感謝と強い愛着を持っています。


 僕がこうした発信を始めたのも、あの災害から僕らを救ってくれた人たちに少しでも報いたい、という想いゆえでした。それだけ大手メディアの発信に憤っていた、という意味でもあります。

 そして今は大手メディアだけでなくSNSでも、実態と異なる――少なくとも僕の実感とは異なる「真実」が、信坂の、魔術高専の姿として流布されるようになりました。


 報道も、投稿も、その全てを否定するつもりはありません。大多数は正しく真っ当で有意義です。

 ただ、僅かな誤解が、少しの偏向が、誰かの人生を大きく変えてしまうことは、確かにあります。


 ならば僕は、人よりも少しだけ文章を書くのが得意な僕は、言葉で微力を尽くしたい。

 そう願ってまた一年、ここで綴っていきます。


 日常の一瞬に、心の片隅に。

 どうかここを、よろしくお願いします。

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