適性と戦術/箭嶋仁武

「で、刃闘士じんとうしと武器の相性を決めるファクターは色々あってね」

「いや急に落ち着くなよ」

 仁武ジンブのツッコミをスルーして、義芭ヨシハは淡々と話し続ける。

「身体能力と魔術特性、後は心理面。さらにはバディとなる繋援士けいえんしのスタイルも絡んでくる。その結果、あたしらは本太刀ほんだちメインに落ち着いているんだよ」


 本太刀。太刀という名前が付いているものの、かつての和国ワコク武士が馬上で用いていた「太刀」とは若干異なる。徒歩戦闘で用いていた打刀に近い魔刃を本太刀(刃渡り65センチ)と呼び、それより長いものを大太刀(刃渡り105センチ)、片手用に短くしたものを小太刀(刃渡り45センチ)と呼んでいるのだ。歴史的背景よりも分かりやすさを優先したネーミングである。


「じゃあ、本太刀が向いているのはどんな人なんですか?」

 深結ミユに問われ、実際に使っている仁武から答える。

「本太刀の利点は取り回しやすさ、体の動きを邪魔しないこと。全体的なリーチは短いけど刀身は長いから、柄が弱点になる魔刃スポーツだと扱いやすい。後、リーチが短いぶん魔素効率は良いな」

「あれ、長い武器だと魔素の効率が悪いんですか?」

「えっと……遠くで魔術を発動させるのが難しいってのは魔刃でも同じなんだ。刀身の長さでもちょっと影響するし、非刃部の柄はもっと影響する」

「つまり槍とかだと効率が悪くなるんですね?」

「ああ。ただ、元から魔術が上手い奴にとっては全然気になる差じゃないんだ。けど俺は魔術が下手だから影響されやすいし、そのデメリットを消すために短い得物が向いてる」

「なるほど……分かりました。それで、本太刀の特徴でしたよね」


「ああ。反りを活かした受け流しや巻きもできるから、技術次第では防御面も優秀。ただどうしても、相手の間合いの内側に入る展開になりやすい」

「つまり、激しく動き回る人や、打ち合いでビビらない人に向いている、ですか?」

「そう。パワーとリーチに欠ける分、MAXコンバットらしさ――つまり魔術と体術のシナジーをどれだけ発揮できるかが重要と言えるな」

「アクロバットとの相性もいいですからね、映画とかでも映えますし……って、この話するとキリないんだった」


 アクション演技とダンスとの相性は良いらしい、また深結とゆっくり話すのも楽しそうだ。 

「で、仁の特徴をまとめるとね」

 話しつつ、仁武の二の腕をつつく義芭。

「まず強みは、魔術なしでの戦闘に長けていること、生身のスペックが高いこと。男子の中でも相当に鍛えられてる方だし、魔術なしの純体武術も経験してるから反射神経も間合い感覚もバッチリ。打ち合いに対する度胸があるってのもでかいね」

 熱心そうに頷く深結。

「んで仁の弱みは、とにかく魔術面が貧弱。魔術出力、魔素含量、発動容量……諸々の客観的パラメータは学年ワーストクラス。他県の高専だったら留年もあり得るレベルだね」

「土地柄もあって信坂ノブサカは伝統的に根性とスタミナを重視しがちだからな、義芭の大嫌いな山岳研修とか」

「思い出させるなし」

「義芭ちゃんひたすらアウトドア嫌いだよね」

 仁武の弱みは反応しづらいだろうので、笑い話にまとめる。


「そんであたしの、繋援士としての……つまり連繋式魔術の特徴はね。出力は平凡だけど制御性は高め、後は念声詠唱もかなり速いかな。つまり幅広い術を高速かつ安定して発動できる、けど相手を打ち負かせるような決め手には欠けるって感じ」

「安定性もだが、発動内容の厳密さも特徴だろ?」

「お褒めありがとう相棒くん」


 魔術の発動内容は、大まかには精霊語での詠唱によって指定され、細かい部分は術者のイメージや諸々のコンディションによって決まっていく。つまり同じ術でもブレやすいのだが、詠唱文の工夫や反復練習などによって精度を高めることは可能で、義芭はそれに長けている。


「という特徴の二人は、どんな戦い方を編み出せるでしょう? はい深結学生」

「いや私しかいないって……」

 義芭の振りに突っ込みつつ、深結はしばらく考えてから。

「義芭ちゃんのコントロールが上手いってことは、他の繋援士よりも複雑な魔術補助ができること。仁先輩のフィジカルが強いってことは、魔術による激しい操動に体がついていけるってこと。そして仁先輩の武術的素養は、近い間合いでの見切りに向いているってこと。

 つまり、魔術による激しい戦闘機動で相手を幻惑しつつ、相手の手をしっかりと見切って、最適なカウンターにつなげて勝つ……ってところですか」


「満点だな」

 思わず拍手する仁武。誘導ありとはいえ、理解してほしい要素をちゃんと拾ってくれて感心である。

「ありがとうございます……実はこういう話、義芭ちゃんから前にも聞いてたので」

「そうなのか? だとしてもよく覚えてるし、答え方も上手いぞ」


「そう、生徒が優秀なので応用編にいきます」

 義芭は楽しげに話を進める。

「デュアエルではスタンスって概念があるの、ミユミユは聞いたことある?」

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