彼女と彼女
要想健琉夫
彼女と彼女
ユリカは女の子に恋をしてしまいました。
男の人が女の人に抱く様な恋心を女の子に、友達に向けてしまいました。
高校二年が終わろうとしていた三月でした、私ユリカは友達のカスミちゃんと一緒に、春が近づいてきた温かい陽射しに満ちた、夕方の帰り道を歩いていました。
カスミちゃんはユリカ(私の一人称です)のお友達です。
ユリカと比べて引っ込み思案なんですが、とても優しくて気遣いが出来て可愛い子なんです。
夕方の帰り道をユリカはカスミちゃんと一緒に帰っていました。
今日はどちらとも、都合が合って、一緒に帰る事が出来ました。
私達は何時もお互いの部活動だとかで、一緒に帰ろうとも帰れない事が多いのですが、今日は二人共お互いの部活がオフで、一緒に帰る事に成っていました。
ユリカとカスミちゃんは、往来で車が何の気兼ねも無く通過していく中、世間話に華を咲かせていました。
「今日部活休みで良かったね」
「そうだね!ユリカちゃんと久しぶりに帰れるの嬉しいな!」
カスミちゃんは、ユリカに華奢に笑いかけながら、そう言ってくれました。
「そう?なら良かった―――私もカスミちゃんと帰れるの嬉しいよ!」
「ふふ、嬉しい」
「ねぇねぇ、カスミちゃん」
「なぁに?」
「今度の休日のどちらか、一緒にショッピングモールに行かない?」
「良いスイーツ屋さんを見つけたの!」
「それすっごくいいね!」
「でしょ?」
「うん!――休日ね」
「土曜日か日曜日だよね?」
「うん」
「ユリカちゃんは、どっちが良いのかとか有るの?」
「えーとね、ユリカはねぇ……」
ユリカは少し悩んでから、カスミちゃんに返事しました。
「日曜日かなぁ?部活もオフだった気がするし」
「そう、判った」
「それじゃあ、私も帰ったら予定表見て、日曜日が行けるか見てみるね!」
「オッケー!」
私達がそう話している間に、気付けば、私達は分岐点の別れ道に差し掛かっていました。
ユリカはそれを伺って、カスミちゃんに言葉を掛けました。
「それじゃあ、また予定が分かったら、連絡して!」
ユリカは、手を挙げてカスミちゃんに手を振りました。
カスミちゃんはワンちゃんみたいに飛び跳ねながら、可愛らしく手を振って、遠目から言いました。
「うん!バイバーイ!」
「バイバーイ!」
別れ道に差し込んでいた太陽の光は雲で隠れて、それと同時にユリカは辺りがものすっごく暗くなったのに気付きました。
しかし、ユリカはそんなのも考えず、カスミちゃんとの休日の過ごし方を考えながら、薄暗い、街灯が付き始めた帰路を歩き続けました。
カスミちゃんと別れて二時間ぐらい経った頃、ユリカはお風呂上り、薄ピンクのジプソフィラ柄のパジャマに袖を通していました。
その時、ユリカのスマート・フォンにバイブレーションの振動を感じました。
ユリカは化粧水やその他美容品を、顔に撫でる様に触れながら、濡れてない手でスマート・フォンを手に取りました。
待ち受け画面には、カスミちゃんのメッセージが映っていました、ユリカは直ぐにメッセージを開き確認しました。
[ユリカちゃん!日曜日部活オフだったよ!]
ユリカはそのメッセージを確認して、スマート・フォンのキーボードに手を掛けました。
[本当!これで日曜日遊べるね!!]
[うん!すっごい楽しみ!]
ユリカはそのメッセージを見て安心して、アプリを閉じようとしました、すると、一際目を引くメッセージがカスミちゃんとのトーク画面に何通も表示されていました。
[ねぇ、ユリカちゃん]
[私、悩んでいる事が有るの]
[良かったら、聞いてくれないかな?]
[私…不安なの]
ユリカはそのメッセージを見て、直ぐ様、フリック入力を済まして、カスミちゃんにメッセージを送りました。
[うん、いってごらん?]
[私何でも聞くよ]
ユリカは、そこで心臓の鼓動が少し早まったのを、感じました。
すると、次の瞬間、予想外のメッセージが、ユリカ宛に届くのを、確認しました。
[私のお母さん、お父さん、最近すごく仲が悪いの]
[それで、この前、三人で話し合った時、二人が離婚するかもしれないって……]
[私それがすごくすごくショックで、最近どうすればいいのかって考えちゃって、気分が悪くなっちゃったりするの]
[私はどうすれば良いのかな……]
予想外だった、カスミちゃんが、そんな悩みを持っているなんて、何時も平然を装っていたのかもしれない。
ユリカはそんな事を考えながら、心臓の鼓動がさっきとは相対して速くなって行くのを感じました。
そして、軽く震えた手で、カスミちゃんに返信しました。
[そうなんだね]
[うん]
[嫌だった事はしばらくつきまとって来るよね]
[わかるよ、その気持ち]
[そんな状況の中家に居たくないって思っちゃうよね]
[う、うん]
[うーん]
ユリカは戦慄しながらも、考えました、カスミちゃんの最善を尽くす考えを、そこでユリカはふと思いついた考えをカスミちゃんに提案しました。
[カスミちゃん]
[うん]
[正直、両親がそんな状態の中だったら、それが治まるまで、嫌な気持ちに成ると思う]
[……うん]
[その時は、ユリカに
[え?]
[正直、ユリカはカスミちゃんの両親二人の、夫婦間に立ち会ったりする事は出来ない、それはカスミちゃんも一緒かもしれない……]
[だけど、ユリカはカスミちゃんの支えにはちょっとだけ成れる気がするの!]
[だから、もしどうしようも無く、イライラしたりしたら、そのイライラをユリカにぶつけて!]
[ユリカは、カスミちゃんの愚痴を黙って、いつもでも聞くよ]
[ユリカちゃん……]
大いな不安感と申し訳なさが、心臓を圧迫して苦しい間、ユリカはカスミちゃんの返事を待ち続けました。
僅か一分の刹那が流れた時、カスミちゃんから返信が来ました。
[ごめんね]
[カスミちゃんは謝らなくても良いんだよ]
[カスミちゃんのお母さんお父さんの夫婦間のお話だよ]
[私たちには立ち会えない、だから]
[私に存分に愚痴をぶつけて良いよ!]
[私は何も気にしない!]
[ユリカちゃん、本当に良いの?」
[うん、ばっち来い!]
[ありがとう、それじゃあユリカちゃん]
[少しだけ、愚痴を言うね]
[うん、全部聞いてあげる、自分のペースで言ってみて]
八時から十二時までの時間、カスミちゃんは愚痴と言う名の、自分の気持ちを表現してくれた、その表現を見聞きしている内に、私はカスミちゃんの支えに成ろうと決意しました。
午前十二時、日付が変わった頃、カスミちゃんは少しはスッキリした様で、ユリカに、もう寝るよと言いました。
ユリカはおやすみと返信して、何処が誇らしげな気持ちを浮かべながらも、ベッドに寝転がり、部屋の照明を落としました。
翌日、火曜日、一日学校を過ごした、その間にも、ユリカは度々カスミちゃんの愚痴を聞きました。
カスミちゃんは少しはスッキリした様でその日の笑顔は特別明るいものでした、目を少し閉じてしまうほどに、一時間目と来て四時間目と来て、昼休みと来て、六時間目と来て、放課後に終わった校舎をユリカはカスミちゃんと一緒に出ました。
正門には昨日よりも強い夕陽が照らされていて、私達は一緒に眼を少し閉じる素振りをしました、それを見て、二人でニヤニヤと微笑していました。
信号を二、三個超え、私達は何時もの田舎道に差し掛かりました、言わば田んぼ道です。
稲か何かが、夕陽に照り付けられ、緩やかな風を浴び、緩やかに揺れる、ユリカはそれを横目に見ながら、夕陽から眼を逸らして、カスミちゃんに話し掛けました。
「ふぅー改めて疲れたー」
「そうだね」
カスミちゃんはユリカの事を優しい目で見つめながら、そう労いの言葉を掛けてくれました。
「ねぇ、ユリカちゃん」
「うん?なぁに?」
「今日はそのありがとうね」
「え?何の事?」
「私の文句を全部聞いてくれて……」
「ああ――全然」
「ユリカちゃんのお陰で気持ちが楽になったよ」
「そう、なら良かった」
「また何時でも言ってね、ユリカ、カスミちゃんの役に立てるの嬉しいから」
「ユリカちゃん……」
カスミちゃんは、そう呟いて、ユリカに目線を向けました、その恍惚な目線を向けられ、ユリカは何か照れ臭くなって苦笑してしまいました。
「へへへ、まぁ何時でも言ってね」
「うん、ありがとう!」
「うん!」
カスミちゃんがご機嫌そうに私の右肩越しに歩いているのを感じ、ユリカは何故だか気まずくなって、照れ臭くなって、変な笑みばかり浮かべていました。
それを見た、カスミちゃんは物珍しい、悪戯めいた眼つきで、ユリカを見て言いました。
「どうしたのぉ?そんなにニヤニヤしてぇ?」
「いやぁ、特に??」
「ただ、こんなに面と向かってお礼を言われる事って中々無いじゃん?」
「だからその少し……照れてる……」
「へーそうなんだ」
カスミちゃんは悪戯っぽい眼つきで、尚、ユリカを見つめてきて、ユリカはただ、眼を少し逸らす事しか出来ませんでした。
ですが、その眼差しは悪いとも微塵も思いませんでした。
しばらく歩き続けて、何時もの別れ道に出て、カスミちゃんとユリカは別れました。
私が反対側の道を歩いていくのに、対して、カスミちゃんは夕陽何か目じゃないとも思える、笑顔を浮かべながら度々こちらに手を振ってくれました。
私も照れながら手を振り返し、カスミちゃんを見送りました。
カスミちゃんと帰ってから、独りで帰るまでの間、ユリカは終始、自分の心臓の鼓動が速くなっているのを感じていました、その鼓動の速さと言うものは心地の良い鼓動の速さでした。
カスミちゃんと別れてから、一日が経った頃、ユリカはその日、カーテンから差し込む強い光で眼を覚ましました。
今日は晴れ、蒸し暑い日光が辺りを照らしていました、ユリカは枕元のスマート・フォンを手に取り、待ち受け画面を見ました。
画面には通知の一通も届いていなく、ユリカは大層不思議がりました。
一昨日の様に、カスミちゃんがユリカに愚痴を言ってくれるのかと思っていたからです。
ユリカは、その場で伸びをしてから、取り敢えず、学校への支度を始める事にしました。
母に見送られて、ユリカは家を出ました、外に出てみると、外の空気は温かいもので一か月前の冬の厳しい寒さを忘れさせるほどでした。
着実に春が迫って来ている、三月の通学路をユリカは歩きました。
その間、ユリカは春が近付くなど目もくれずに、カスミちゃんだけの事を考えていました。
どうして、昨日は連絡して来なかったんだろ、寝ちゃったのかな、また、ユリカの昨日のドキドキは何だったんだろ、そんな事を呆けながら考えてみました。
そんな事を考えていると、ユリカは何時の間にか正門の前に着いていました、ユリカは、誰も見当たらない朝の運動場を見ながら、カスミちゃんに昨日の事を聞いてみようと思い、颯爽と玄関に駆けました。
下駄箱にお気に入りの靴を仕舞い終えて、ユリカは太陽の光で満ちた玄関を渡り、三階の自分の教室へと上がりました。
玄関とは違い何時でも薄暗い嫌な階段を上って、ユリカは自分の教室まで、廊下を渡りました。
朝も早いというのに、男子に限らず女子も、大声で笑っている、ユリカは鬱陶しいなと言う心地をそっと心に仕舞い、教室の扉を開けました。
教室には人が点々としており、ユリカはその中でも、真っ先に、窓側で座り込んでいた、カスミちゃんの元へ向かいました。
「おはよう!」
ユリカは、鞄を下ろしながら、カスミちゃんに挨拶しました、カスミちゃんは何だか装った様な笑顔でユリカに挨拶を返しました。
「おはよう…」
ユリカは何か違和感を覚えながらも、慣れた手つきで鞄を、棚に放り込み、カスミちゃんに向き合って、声を掛けました。
「ねぇ、カスミちゃん、何か元気無いんじゃない?」
机に俯き加減なカスミちゃんにユリカは尋ねました、カスミちゃんはユリカの方を見て、言いました。
「そう?」
「そんな事無いと思うけどなぁ……」
カスミちゃんは今度は見慣れた笑顔を浮かべ、ユリカにそう言い返しました。
ユリカはどこか違和感を感じ取りましたが、いざ聞き出す気にも成らず、ユリカはカスミちゃんとの話に華を咲かせました。
五六時間の授業を終え、学校は何時の間にか放課後にへと姿を変えていた、朝とは違い、より暖色を帯びた、オレンジ色の太陽がカスミちゃんの元に差し込んでいた。
カスミちゃんは終始憂鬱そうだった、ユリカは他のクラスメイト達が帰るのを、特別気にしない様子で、カスミちゃんに言いました。
「ねぇねぇ、カスミちゃん、いっしょに帰ろー」
「……」
カスミちゃんとの間に少し間ができてから、カスミちゃんは口ごもりながら言いました。
「ユ、ユリカちゃん……」
「どうしたの?」
「私……」
「まだ……帰りたくない……かな」
ユリカはカスミちゃんの予想外の発言に少し狼狽えながらも、直ぐにユリカはカスミちゃんに返答した。
「そっか!」
「何処か寄りたい所でも有るの?」
「カスミちゃんさえ良ければユリカも付いていきたいな!」
ユリカは不自然にも思える、満面の笑みを浮かべながら、カスミちゃんに言いました。
カスミちゃんは眼を見開いてから、微笑して言いました。
「良いよ、行こう、ユリカちゃん」
「うん!ありがと!」
カスミちゃんの承諾を受け、ユリカとカスミちゃんは残った荷物を持ちながら、教室を出ました。
カスミちゃんが言う目的地までの渡り廊下、ユリカはカスミちゃんと一緒に過ごせる時間が増えたと、えらく嬉々としていた。
渡り廊下にはさっきカスミちゃんに差し込んでいた様な夕陽が差し込んでいて、カスミちゃんが太陽に照らされた向日葵に思えた、ユリカはそんな惚気でいるとカスミちゃんが口を開いた。
「ユリカちゃん、私図書室に行こうと思うの」
「図書室?良いね!何か調べ物?」
「ううん、読書」
「ああ、読書か!良いね!流石文芸部!」
「へへへ」
カスミちゃんは珍しく、照れくさそうな顔をしていて、可愛かった、するとカスミちゃんは続けて呟いた。
「嘘」
「え?」
「ごめん、嘘付いた」
「私、家に帰りたくないの」
「そう…なの?」
「うん」
「――また家で何か有ったの?」
「うん、昨日家に帰ってからお母さんとお父さんの関係が少しギクシャクしててさ、それで」
「そうなんだ、だから今日浮かない顔してたんだね」
「はは、バレてたんだ」
「ああ、ごめん嫌だったかな??」
「ううん、嬉しい」
「え?」
「私の変化に気付いてくれるのは、ユリカちゃんだけ、何時も私は自分を作ったりしちゃうから……」
「カスミちゃん……」
「………」
「ユリカ、カスミちゃんがどんなに装っても構わないよ」
「え?どう言う事?」
「だってユリカ」
ユリカは気取った表情で、ウインクして言いました。
「何時でも、本当のカスミちゃんを見つけてあげるからさ」
「え」
「ふ、ふふふ」
「ええ?!どうしたの?!」
「そんなに可笑しかった?!」
「違うよ、ふふ、余りに恰好良かったから照れ隠し」
「ああ、そうゆう事、へへへ」
「だけどユリカ、女の子だよ??」
「女の子の中での格好良さって意味だよ」
「ああ、そう!なら良かった!」
そうして、ユリカとカスミちゃんは楽し気に話をしていると、何時の間にか図書室の前に着いていたみたいで、私達は図書室に入ってお互い、読書に耽りました。
その時のカスミちゃんは楽しそうで、ユリカは安堵しながらも、カスミちゃんとの楽しい出来事を噛み締めながら、その時を夕暮れまで過ごしました。
一週間の終わりに差し掛かる前の曜日、木曜日、ユリカは放課後の教室でカスミちゃんに声を掛けました。
「カスミちゃーん、一緒に帰ろ―!」
「うん、帰ろっか!」
今日のカスミちゃんは比較的に楽しそうだったし、落ち着いていました。
「今日は図書室とか寄ったりするの?」
「ううん、ユリカちゃんと帰るね!」
「そう?分かった」
ユリカとカスミちゃんは幾分かある階段を下りて、下駄箱でお互い靴を取り出しながら、続けました。
「ねぇ、カスミちゃん」
「うん?何?」
「昨日カスミちゃんが、おすすめしてくれたあの本、夜更かししちゃって読み耽っちゃったんだけど……」
「すっごく、面白かったよ!」
「本当?良かった!」
「純文学は難しいかなぁ何て思ってたけど、流石ユリカちゃん!」
「へへへ、読書は恋愛小説で慣れてるからね」
「そう?なら――」
カスミちゃんと校舎を後にしてから、カスミちゃんはユリカにおすすめの純文学の恋愛小説を教えてくれました、ユリカは改めて一つの事を二人で楽しめるのは良いな何て心地を浮かべていました。
カスミちゃんとの話で夢中で、何時の間にか世間は夕暮れも夕暮れ、暗くなっていました。
「暗くなってきたねぇ」
「そうだね」
他愛もない会話を交わしていると、私達は何時もの別れ道にやって来ていました。
ユリカは街灯が付き始めた夜の帰路を眺めて、カスミちゃんに向き合って言いました。
「それじゃあね、カスミちゃん」
ユリカが、カスミちゃんに背を向けると、次の瞬間、カスミちゃんは刹那の勢いでユリカの右手を左手で掴みました。
ユリカは、狼狽して、後ろを振り向いてしまいました。
「ど、どうしたの??」
「待って……ユリカちゃん……」
「えぇ??」
「私まだ、帰りたくない」
「まだユリカちゃんと一緒に居たい」
その発せられた言葉を聞いて、ユリカの心臓の鼓動が速くなっていくのを、感じました。
カスミちゃんと居ると偶に鳴り響く心臓の鼓動、ユリカはその鼓動の正体に戸惑いながら、カスミちゃんに言い返しました。
「……」
「そっか」
「よし、なら今日は不良に成ろう!」
「え?」
「私みたいな不良娘は」
「友達と黄昏を過ごすの!」
ユリカは思い切って、そう声を上げましたが、カスミちゃんはすこし、困惑気味に尋ねました。
「ねぇ、ユリカちゃん」
「なぁに?」
「私が提案しといて、申し訳ないんだけど」
「本当に大丈夫??」
「うん、問題無いよ、退屈な家何かで過ごすより、カスミちゃんと過ごす方が、ずっと楽しいから!」
ユリカは淡々とそう言いました、カスミちゃんは何処か照れくさい様で、笑いながらも、少し頬を染めていました。
「それじゃあ、何処に行こうか?」
「うーん、公園に行かない?」
「良いね!行こうか!」
照らされた夜道を、不良学生二人が歩いて、私達は公園へと着きました。
ユリカは公園に着いた途端、ベンチの近くにある、ブランコに、脚を掛けました。
「夜の公園って最高!」
「ユリカちゃん、楽しそうだね」
「うん!楽しい!」
カスミちゃんは、ユリカとは相反して、大人っぽく、ゆっくりと近くのベンチに座り込み、鞄から本を取り出しました。
ユリカは、船のクルーザーの様な柄のブランコに、差し込む微かな夕陽を見て、気付きました。
「あ」
「どうしたの?」
「カスミちゃん、前を見て、ここの公園がよく夕陽が見えるのをすっかり忘れてた」
「あ、本当だ」
私達の前には、山に沈みゆく、夕陽が見え、私達は眼を見張りました。
ユリカは、ブランコを飛び降りて、カスミちゃんの隣に座り、カスミちゃんの肩に頭を寄せました。
「ユリカちゃん?」
「ごめんね、少し傾かないと、見えなくてさ」
「そう」
カスミちゃんは、満足そうに夕陽を見つめて、その横顔は綺麗だった、ユリカよりも数倍大人っぽい笑顔、洒落た笑顔、そんな笑顔と共に夕陽を見て、ユリカはカスミちゃんの様に満足気になりながら、今日一日の良さを思い返し、噛み締めました。
一週間も終わる、金曜日、ユリカは既にカスミちゃんと別れ、家に帰って、午後の時間を過ごしていました。
その間、ユリカはあの心臓の鼓動の感じは、あのドキドキは何なんだろうか、そんな事を夢見心地で考えていました。
そんな夢見心地で考え事をしようが当然捗る事も無く、ユリカはその週の終わりを告げる様に、眠りに就きました。
眠っている時、夢を見ました、ユリカとカスミちゃんが、今日一緒に帰っていた時に寄った、公園で今日の様に、ユリカがカスミちゃんに膝枕されながら本を読みながら、談笑していた、夢を見ました。
カスミちゃんとの、ショッピングモール巡りの前日、ユリカは気付いてしまいました。
ユリカの気持ちに、自分の気持ちに。
私は女の子に恋をした、生まれて初めての恋でした。
男の人が女の人に抱く様な恋心を女の子に、カスミちゃんに向けていました。
私は――ユリカは元来、恋はしていませんでした、したとしても、相手との将来や未来を考えて、勝手に幻滅していました。
ユリカにとって、将来を共にする事に成っても、冷めそうな人達ばっかりでしたから、だけど、カスミちゃんだけは違う、そんな気がしました。
まともに出来た最初の恋の相手が、同性の女の子、ユリカは禁断にも思える恋をしている心地を浮かべました。
だけど、ユリカはカスミちゃんにこの想いを伝えなくして、散る等と言う選択肢は、甚だ有りませんでした、有ってはなりませんでした。
確かに、カスミちゃんの魅力にはその可愛らしい女の子らしい容姿も関係しているのかもしれないが、ユリカにはカスミちゃんだからこそ好きなんだ、そんな考えが浮かんでいました。
性別など関係無く、貴方を好きになった、その性格、中身に惹かれて、ユリカは決意しました。
この恋がたとえ、砕けて、幻滅して、散って、溶ける様な恋かもしれないが、ユリカはこの気持ちをカスミちゃんに伝える。
一生一緒に居て、楽しいのはカスミちゃんしかいない、この事実は紛れもない事実だ、事実じゃなきゃ考えられないんだ。
ユリカは、私は明日カスミちゃんにこの想いを伝える。
どうなるか何て、気にしない、ただカスミちゃんが物凄く好きだからやった、それで良いと思います。
ユリカは明日に想いを馳せ、明日に備え、眠りに就いた。
ショッピングモールに行く翌日、ユリカは春を感じれるには充分な陽射しの中、何時もの別れ道に佇んでいました。
ユリカは春を感じたい時分でしたが、カスミちゃんとのこのデートについて、考え込んでいました。
そうこうしている内に、別れ道の反対側からカスミちゃんが歩いて来ていました。
その時、カスミちゃんからは、もう着くよとメッセージが届いており、ユリカは顔を上げて、カスミちゃんに手を振りました。
「カスミちゃーん!」
カスミちゃんはユリカの声に気付き、小走りでユリカの方に駆け寄ってきてくれました。
「おはよう、ユリカちゃん」
「それじゃあ、早速行く?」
「そうだね、バスもそろそろ来そうだし」
「こっちの方に有るんだ」
そうして、ユリカはカスミちゃんと一緒にバス停まで、歩いていきました。
午前九時前の八時五十六分前、バスが向こう側の道路から姿を現しました、ユリカは鞄を右手に下げながら、左手でカスミちゃんを揺すって言いました。
「カスミちゃん」
「うん?」
「来たみたいだよ」
「あ、本当だ」
ユリカはカスミちゃんを軽くエスコートする様に、バスに乗り込みました。
バスは私達が席に着いたと同時に、発車して幾分か長い、車窓からの景色が流れ始めました。
ユリカは、緊張している事を考えない様に努めながら、ショッピングモールに着くまでの間、カスミちゃんと話しました。
三十分程、バスに揺られ、バスはショッピングモールに位置するバス停に停車しました。
私達は、ICカードを翳し、決済を終え、バスから降りて、ショッピングモールの入り口に差し掛かり、口を開きました。
「ユリカちゃん、ようやく着いたね」
「そうだね、何処から行く?」
「そうだなぁ、先ずは本屋さんからとかはどう?」
「良いねそれ、賛成!」
「カスミちゃん、おすすめの本教えてね」
「うん、任せて」
それから、私達は入口からショッピングモールに入り、エスカレーターを上ってから、三階にある書店にへと着きました。
本屋さんは落ち着いた雰囲気で、田舎だからか、より広々とした心地を感じました。
ユリカは、カスミちゃんに導かれ、本屋さんを歩き回りながら、文庫本コーナーやエッセイコーナー、将又、ライトノベル、マンガ、を巡りました。
ユリカはカスミちゃんと共に本屋さんを巡る事が出来ていると言う、事実に夢見心地を感じながらも、小説コーナーにあった、ガールズラブの小説を見掛け、夢心地は直ぐ現実に引き戻されました。
幾分か本屋さんを巡り終えて、カスミちゃんは、探偵小説や詩人の詩集諸々を買って、ユリカは恋愛小説を買い揃えました。
何か、役に立つ事は無いかなっと。
本屋さんを巡り終えて、想像以上の時間を費やしていた事に気付いた、私達はショッピングモール内の飲食店で食事を取る事に成りました。
女の子二人が食べる様なもんじゃ無いと言われるかもしれませんが、私達はフードコートに有った、チキン専門のファストフード店で、食事を取りました。
ユリカも、カスミちゃんもチキンにがっついて、チキンを頬張りましたが、がっついて品が無い私に対して、カスミちゃんはやはり最低限の上品な食べ方をしていました。
しかし、間違えて、骨を齧ってしまった時の反応は可愛かったです。
ご飯を食べ終わり、私達は一階に下りてから、前々から言っていた、スイーツ屋さんを見つけました。
ユリカはスイーツ屋さんを見つけて、カスミちゃんに興奮気味に語り掛けました。
「カスミちゃん、カスミちゃん!」
「あれだよ、あれ!ユリカが言ってたスイーツ屋さん」
「あ、あれ?」
「ユリカちゃん、流石に太るんじゃ……」
「なぁに、言ってんの、スイーツは別腹でしょ!」
そうして、私達は念願のスイーツを平らげました。
行きたいと思っていた場所も全て回り終えて、私達は午後五時半過ぎ、バスに揺られていました。
まだ、外は暗く無くて、街灯も灯っていなかった、私達が帰った頃には、暗くなっているのかな、そんな役にも立たない考えを考えていました。
そして、存外にも落ち着いた心地で、私達はバスを降りました。
二人でバス停から、歩いて、別れ道を過ぎて、私達は彼の公園に居ました。
辺りは闇に包まれていても、彼の木曜日の様に、夕陽が沈む途中で、そのお陰か、私達が隣り合わせに座っているベンチには、ちょっとした影が出来ていました。
ユリカが、カスミちゃんの肩に寄りかかる影が、ユリカは輝く夕陽を見つめながら、加速する鼓動を宥め、カスミちゃんに話し掛けました。
「今日、楽しかったね、すっごく」
「うん!やっぱりユリカちゃんと一緒に行ったから楽しいっていうのも有るんだろうけど……」
カスミちゃんはユリカの気も知らず、罪な笑顔を浮かべて、そう言いました。
ユリカは更に心臓の鼓動の加速に拍車が掛かる気がして、緊張が強まる心情をどうにか治めようと立ち回っていました。
「そう?それは嬉しいな!」
ユリカは、全てを察した上で、カスミちゃんに語り掛けました。
「ねぇ、カスミちゃん」
「うん?どうしたの?」
「私もカスミちゃんと一緒に居ると、何時も楽しいんだ」
「カスミちゃんと居ない時が億劫に感じるぐらい」
「それは……私もだよ」
「そう………」
「だからさ、私もう自分の気持ちに正直に成りたいんだ」
「え?」
「私、ユリカは、カスミちゃんが好き」
「それは友情と言う物でもあてにならないぐらいに」
「好きなんだ、一人の愛おしい人として」
カスミちゃんは私が淡々と言葉を発していた時、さぞ驚いていたと思う。
だけど、私は自分の心の気持ちを綴るのを続けた。
「女の子が女の子に恋をする何て事は、もしかしたら人に依っちゃおかしい事なのかも知れないけど」
「私は性別何て関係ないぐらいに、カスミちゃん、貴方と言う人が好きなんです」
「………」
「私はただその気持ちを伝えられただけで、幸福です」
「幸せなんです」
「……」
「………私も」
「え」
「私もユリカちゃんの事大好き、何時でも私の話を親身に聞いてくれたし、私もいっつも居て、一生居て、楽しいと思えるのは、ユリカちゃんしか居ない」
「私もこの恋は歯止めが効かないものだと思うの」
「だから………」
私は迷わず、カスミちゃんの腰に手を回して、カスミちゃんを抱き締めて言った。
「ユリカが、歯止めに成ればいいんだよね?」
「もう、最後まで言わせてよ」
カスミちゃんは私を強く抱きしめ返して、そう言った、私も負けじと抱きしめ返して、二人して照れくさかったか、笑った。
ユリカはカスミちゃんに恋をしました。
この溶けてしまいそうな恋に精一杯足掻こうと思います。
ユリカはカスミちゃんと一生を過ごしたいのですから。
彼女と彼女 要想健琉夫 @YOUSOU_KERUO
★で称える
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