第3話
「お父さんとカラオケに行って来るから、お兄ちゃんと留守番しててね。
先にお風呂に入って、遅いようだったら寝てていいから、ね」
母は、先に玄関で靴を履いていた父に同意を求めた。
「ああ、あんまり遅くまでテレビを観てるんじゃないぞ」
父は恥ずかしかったのか、靴を履きながら僅かに後ろを向き、言った。
「
よろしくな」
「分かったから、親父、早く行った方がいいよ。
遅くなるとボックス混むから」
「ああ、今日は何を歌うかな」
「お父さん、着いてからでいいでしょ。
行って来ます」
私達は居間に戻ると、テレビを付けた。
兄はサッカーが好きだ。
今夜はサッカー中継があったが、私はスポーツよりもアニメの年頃だった。
私はアニメが観たかったので、ビデオをセットしてもらって後から見ようと思った。
兄は最近、私に対して不機嫌なことが多い、
両親に対してそういう素振りは無かったが、私が母と会話している時や、父にまとわりついている時などに、冷たい視線を感じていた。
九才の私には、憎まれる理由が分からなかったし、憎まれている自覚も無かったのだ。
兄から身体的な虐待は無かったが、ただ不安にさせるような何かはあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます