勇者と魔王の舌戦(リメイク版

ロキ-M

勇者と魔王の舌戦(リメイク)


「・・来たか、招かざる客よ。」

「・・お前が魔王・・」

「人間が勝手にそう呼んでおるだけだかな。まぁ我に名がある訳で無し、好きに呼ぶがいいわ。」

「会って早々に申し訳ないが、国王の命・教会の要請・民の願いにより、その首を貰い受ける!」

「まぁ待て。」

「な・・何だ?!魔王が手を出しただけで感じる圧力は!全身から嫌な汗が・・」

「ほぅ・・解放した我が力に反応するか。これまで現れた自称勇者共、蛮勇やら猛勇が似合うばかりで我との力の差を分からぬ愚か者ばかりだったが・・我が城で部下と一戦も交えずにここに辿り着いただけはある。」

「貴様との決戦に備え、体力も魔力も温存したかったからな。気配を消し、死角を利用して、ありとあらゆる方法を使ってここまで来させて貰ったさ。」

「ふむ・・睡眠・幻惑・緊縛・魅了・混乱をあれ程に見事に使いこなし、我が部下を全員無力化させたな。その魔法力と使い分けの判断力は賞賛に値するな。」

「後は貴様の首を頂くだけ。それで国王の命を果たし、民の期待に応え、皆に安寧をもたらす事が出来る、覚悟!」

「待てと言うに。貴様どころかこの地上を消し炭に変えるのは簡単だか、我は貴様に聞きたい事がある。」

「・・何だ?」


「勇者よ。お前は国王の命や聖職者とやらの願いでここに来たのだな。その国王や聖職者、本当に平和やら民草の為に我の討伐を命じたのか?」

「それ以外に何がある。貴様が現れてから、魔物の動きは活発化している。それは人間を滅ぼし、世界征服を目指す魔族の差し金以外に考えられん。」

「世界征服?誰がそんな事を望んでいるのだ?」

「貴様ら魔族、それを統べる魔王以外の誰がいる!」

「お前達人間がそう考えるのは自然だが・・残念ながら的外れだな。」

「何だと!?」

「一々説明するのも面倒だが・・まずは我等魔族と魔物は別物だ、一緒にするな。」

「何を意味が分からぬ事を!」

「なら貴様ら人間と猿は同じか?」

「違うに決まってるだろう!!」

「それと同じよ。貴様らから見て、単に異形に見えるから同一視しておるのだろう?我等が人間も猿も同じよと言われたら納得するのか?」

「くっ・・」

「言い返さぬか・・やはり今までの人間とは違うみたいだな。」

「魔族と魔物を混同していた事は事実、その非礼は詫びよう。だからといえ、貴様らが魔物を操って我らに危害を加えてる事に変わりはないだろう!」

「魔物は我らの意志とは関係なく、気ままに暴れてるだけよ。我が力ねか欠片を感じたなら分かろう?我が本気になれば、この世界など瞬く間に滅ぼせるぞ。不思議に思わぬか?これだけの力を持ちながら、今まで人間界に全く介入してない事を。魔物でなく我ら魔族、貴様ら人間に1度でも危害を加えたか?」

「確証はない。だか、魔族の仕業としか思えぬ現象はあちこちから伝わっている!」

「我は世界征服など興味無い。」

「では何故ここにいる?」

「我等がどこにいようと勝手、人間如きに許可を得る必要など無い!」

「魔王から更に力が・・俺との力の差は歴然、魔王よ貴様は確かに強い。だか!人々の希望を集めたこの剣があれば!!」

「確かにその剣があれば、我を討つ事は出来るかも知れぬが・・希望の力が全く足らぬわ。」

「何だと!?」

「我が見た所・・全く力を満たしておらぬな。そんな剣ではかすり傷がせいぜいよ。」

「嘘だ・・世界各地で人々の希望を集め、満を持してここに来たのに・・世界は俺には何の期待もしていないのか!?」

「少し違うな。人間共は確かに貴様に希望を見出しておる。だから多少はその剣にも輝きがある。だが、人々の絶望は全く別の所にある。それが故に貴様の剣は本来の力を発揮出来ておらぬ。」

「どういう・・事だ?」


「我等魔族、能力や魔力の強さだけで畏怖の対象とされがちだが・・もう1つ、情報収集にも力を入れておる。」

「情報・・?」

「力だけで片付けるのは簡単よ。だが、それだけでは奢りや油断から思わぬ形で負けがある。だから情報を集め、必要な時に必要な事にだけに力を注ぐ。さすれば無駄な労力を使う事なく欲しい物が手に入るからな。人間同士の争いでも、情報を軽視しないであろう?」

「・・・」

「我らの情報源は様々よ。国王の傍にに仕える何人か、我が力を見せつけ、金と女と快楽を与えれば・・必要な情報を送る忠実な部下になったわ。」

「何!?」

「暇つぶしに色々と命令を与えたが・・なかなかの余興だったぞ。他には何処の街にでもいる、最底辺の生活を強いられる者共。奴らにも僅かな金銭を与え、毎日食事が出来る生活にしてやれば、喜んで情報を売りに来るし、我が意のままに動く駒になりよった。」

「そんな・・」

「貴様は各地を巡り、希望を集めたと言っておるが・・貴様が集めた希望は生活の不安がない、人間らしい生活を送れる者共だけの上澄みに過ぎん。本当の意味で今の世界に絶望し、希望を望む者共の事は全く見向きをしておらぬ。」

「・・・」

「人間から聞く以外にも、我が力で魔物や動物の耳目からも情報は得ておるがな。人間は密談をしておるつもりでも、屋根裏のネズミや虫にまでは注意しておらぬであろう?あれらも我が耳目よ。」

「では・・人間界の情報は・・」

「厳重な警備を敷いてる国王、そして貴様も含めて全て我に筒抜けよ。」


「さて・・人間界の情報は色々と手に入れておるが、我には理解出来ぬ事がある。」

「何だ?」

「人間の税制と勇者、お前の処遇よ。お前は何も不思議に感じぬか?」

「俺の処遇はともかく、まさか魔族から人間の税制の話が出るとは思いもよらなかったが・・どういう意味だ。」

「民から集める税、それは民の為に再分配される前提に集められる物。弱者救済・復興や支援・防衛や治安維持・生活向上等・・人々の上に立ち、民に自らの生活を支えて貰う以上、民の期待に応えねばならぬ。それは人間も我らも同じよ。だが、貴様らの国王は魔王討伐・そして民の生活の防衛の為といい高額の税を集めておるが、上に立つ者としての責任を果たしておるのか?

もう少し言うと、身を守る為の神の加護を得る為にはお布施が必要と詭弁を弄する聖職者共。そして見かけは立派、実際はガラクタ同然の武器防具を高値で売る商人・・こ奴らは金を集めるだけで、民に何の恩恵を与えているのだ?」

「・・・・」

「人間には理解出来ぬ自然現象、そして人間界でも暗部のみを担う存在がおるであろう?民の理解出来ぬ都合の悪い事は、全て魔族の仕業にしてしまえば話は早い・・そこに国王や聖職者共はつけ込んでおるみたいだな。」

「民の心の拠り所の教会を侮辱する気か!?」

「なら話を税だけに戻そう。貴様が国王の命で我の討伐に旅立つ時、確かに支度金は支払われたみたいだな。だか、その金も装備や旅に必要な身支度を整えれば使い果たしたも同然であったであろう。そして旅をする以上は継続的な支援が必要な筈。なのに国王からの支援は必要最低限に過ぎなかったみたいだな。そしてここに謎がある。

国王は毎月防衛費用として、民から100万枚もの税金を集めておる。だが、実際に貴様に支給されてるのは1000枚に満たん。集めた税を貴様の為に殆ど使っておらんのは明白。

ただ、残った金が民の為の軍備増強・生活や秩序維持の為の部隊の投入。魔族侵攻に備えての防備拡充や後方支援、そして食料の備蓄に使われてるならまだ話は分かるが・・実際はどうだ?それは各地を巡った貴様なら分かるであろう?では・・毎月税金で集めた大金、残りは一体何に使われておるのだ?」

「・・・」

「まぁ・・言うまでもない話よ。厳密には、自らの城を守る為には金は惜しんでおらんがな。ただ、国王は勇者が魔王を倒す事を望んではおらん。」

「どういう事だ・・?」

「勇者が魔王を滅ぼしたら都合が悪い事が思い付く限り2つある。1つは魔王討伐の功績が勇者と国王、どちらが上に立つか相応しいか、民は必ず天秤にかける。さすれば間違いなく国王の座を勇者に明け渡せという声が出る事。

もう1つ。魔族が滅びれば防衛という名目の税収がなくなる。まぁ税収の方は、第2第3の魔王が現れる可能性がある、それに備える名目で徴収し続ける可能性はあるが、今まで隠れ蓑にしていた存在がない以上、民の目は厳しくなる。最悪は反乱も起こりうる・・と。国王には我を討つメリットは全くない筈だ。」

「あくまで魔王、お前の予測に過ぎないであろう。」

「確かに予測にすぎん。だか、我が集めた情報に基づいての予測。見当違いとは言い難い思うがな・・」

「魔王・・力押しだけでなく、まさかこんな戦い方をしてくるとは・・」

「我の予測の裏付けではないが・・勇者よ、国王や聖職者共から、困難は自ら切り開いてこそ価値があると言われたみたいだな?」

「間違ってないであろう。困難を糧にして、人は成長するのだからな。」

「そこはな。貴様は素直すぎるが故、真っ正直に信じていたみたいだが・・何故勇者1人に全てを背負わせる必要がある?」

「?」

「貴様の持つ希望の剣を発見し、入手に限れば分からぬでもない。それは持ち主を選ぶからな・・ある程度の力は必要だ。だが仲間を集める事も許されず、行く先々での困り事を解決するのは勇者の役目。そしてその報酬を支払うのは民の役目・・何のための納税だ?知っておるか?貴様への報酬を工面する為、街によってはただでさえ少ない食べるを減らし、どれだけの幼子が瀕死になったか?勇者に払う報酬の為に、罪のない婦女子が富裕層の慰みものになり、心と身体に消えない傷を負ったか?民の塗炭の苦しみ苦しみを知っておるか?」

「・・・」

「本来ならば・・魔王討伐を命じた国王が勇者の為に全面的な支援を行い、全ての民の安全と生活を守るべきではないのか?集めた税も街の防衛・優秀な人材の配置・民の生活の安定に回せば・・勇者への間接支援に繋がり、貴様の旅の効率は格段に上がった筈。そしてそうなれば、僅かな金の為に我に情報を売る輩も、悲しみや苦しみに嘆く民は少なかった筈だ。そして貴様の希望の剣ももっと輝きを増した筈。」

「・・・」

「国を支えるのは金や力ではない、民だ。民を蔑ろにする国に未来などない。国王が民に輝ける未来を見せないのに、未来なき民から希望を集める事など出来るのか?勇者よ。」

「悔しいが・・今までの言葉に反論出来ない以上、言い返す言葉がない・・」

「勇者として各地を回ったからこそ、色々な話を聞き肌で感じて分かっておるであろう。純粋過ぎるが故、無意識に世間の暗部を見ない様にしていたみたいだが。民の怒りの矛先は我等魔族でなく、実際は防衛と称し高額の税を集めて放蕩三昧、民草を困窮させるだけの無能・・いや寄生虫の国王に向かっていると。そして国王に寄り添い、聖職者や商人等の私腹を肥やす事しか考えぬ輩にも向かっておる。

我に世界征服に興味があるなら、この機を逃す事なく人間を扇動した上、魔族軍を動かすであろう。今なら最低限の力で全てを奪えるからな。だが我は世界征服に微塵も興味がない、だから手を出さぬ。だが、蝿がたかるのは鬱陶しいから振り払いはするがな。」

「・・俺は蝿扱いか・・」

「歴代の自称勇者は蚊だな。鬱陶しいから叩き潰した。それはともかく・・勇者よ、これからどうするのだ?」

「どういう意味だ?」

「幾つか道がある、どれを選ぶも自由だ。

1つはこのまま返り討ち覚悟で我を討つ。

1つは実力差を埋める為、恥を忍んで一時撤退し改めて民から希望を集めるか?

もう1つ。悪政を敷く国王を討ち、すべての民を救う『英雄』となり、今までと違う形で希望を集め直して我ともう一度相まみえるか。

後は・・全てを捨てて悠々自適に過ごす手もあるか、貴様の好きにせよ。

我と再び相見える時は言葉を交わすか剣を交わすか・・それは勇者、お前次第よ。」

「・・魔王よ。貴様と会話してみて、その言い分に一理ある事を認める。今の俺の剣、悔しいが貴様の首には届かない。だが、次に相まみえる時には必ず・・今日論破された屈辱を倍返しにしてやる。」

「今日は貴様の絶望した顔が見れて楽しめたぞ。我に倍返しにする、その日を楽しみにしておこう。」



魔王討伐を一時中断した勇者、各地を巡る旅に出る事になる。街を巡り、弱者の人々の声に耳を傾け・・現実を知る。そして勇者は自らが人々を幸せに導く決意を固め、志を同じくする人々の助力の元に先頭に立ち、民の希望たる英雄になる。


その希望と人々の行く末は・・

・民を連れて今の地を去り、新天地で新しい国を作った。

・民を率いて国王を討ち、新たな王になった

・魔王と和解、共存を図った。

・希望を集め魔王との再戦を制し、不安なき世を築いた。


等と諸説色々出ているが、今の世にはどの道を選んだかは伝わっていない・・




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