第95話 天罰

「あわ、わわわわわ……っ」


 しばらくして、目覚めた美咲は目の前で起きた一部始終を目撃していた。

 そして最後、リリーは気絶してしまった。


 いつの間にか形勢逆転した弘世は、リリーを子供のように扱った。


「た、高梨……」

「早瀬さん……ごめんね。無我夢中で……」

「そ、それはいいんだけど……それ、まだ大きいままなの……?」


 美咲の知識では、何度もできる人はいるのだと知ってはいたが、弘世のそれは明らかにおかしかった。

 まるで今からはじめるかのような雰囲気があったから。


 ゴクリ……。

 美咲はもうそれの虜だった。


 それに一度もテニスで勝ったことのないリリーが、スポーツ経験のない弘世に完全敗北している。

 体だって多少なり筋肉はついているが、スポーツ選手のそれではない。


 なのに、今美咲は弘世に圧倒的なオスを感じていた。


「今なら、早瀬さんを受け入れちゃうかもしれない……けど、どうする?」


 ひびきからも自分たちだけでは限界があるからと、他人との行為を許されていた。もちろん施術を通してそんな流れになった相手に限る。

 そして美咲もまんざらではない。むしろ嬉しい。


「いいの? 本当にいいの? 私、はじめてだし、さっきのリリーみたいに気持ちよくさせられないかもしれないよ?」

「うん、それはもちろん大丈夫。リリーさんとして、だいぶ落ち着いてきたから、今は少しは冷静になってる。だから早瀬さんのこと、優しくできるはず」

「高梨……じゃあ……」


 美咲はベッドに上がった。

 着させられていた服を全て脱ぎ、リリーをベッドの端へ追いやった。


「早瀬さん……」

「たっ、高梨……っ!」


 美咲はもう限界だった。えっちしたくてたまらなかった。

 だから美咲から弘世の唇を奪い、夢中でキスをした。


「んっ、ちゅっ……んぅっ……はぁっ、んっ……んぅっ……んんっ……♡」


 美咲の今の気持ちが伝わった少し強めのキスだった。

 ぷはぁと口を離すと、互いの唾液が糸を引く。


「すごい、気持ちいい……なにこれ……」


 前回、勢いでしてしまった弘世へのキス。

 でも今は弘世とリリーとの行為で舌を使うキスを覚えていた。


「ふふ、だよね。なんでキスだけでもこんなに気持ちいいんだろうね」

「高梨……その顔ズルいよ――んっ」


 先程のリリーの時のようにがっついていない弘世。

 美咲のキスを受け入れ、舌を絡めた弘世だったが、はじめての相手と正面からキスをすることは、誰が相手でもドキドキしてしまう。

 そんな恥ずかしそうにしていることが美咲に伝わったのか、美咲はそれを可愛いと思ってしまったのだ。

 故にもう一度キスを求め、美咲の顔はさらにとろけていった。


「お願い……高梨の手で気持ちよくして……」


 ゴロンとベッドに仰向けになった美咲。

 弘世はリリーの時とは違い、優しくしていくことにした。


 天井を向く突起にかぶりつくと美咲は声を上げはじめ、次第に体全体を舐め回される。

 施術の時とは違い、これはえっちなんだと認識することで、美咲はさらに感じていた。


「もっとキスしながら……」

「うん……」


 覚えたキスの虜になっていた美咲は、愛撫の途中でも何度もキスを求めた。

 だから最後に到達するまで、結構な時間がかかって――


 そうして体を倒した弘世は、美咲と一つになった。



「い、痛い…………」


 痛いと言ったのは美咲ではなかった。

 逆に言えば、美咲はほとんど痛くなかったのだ。


 途中からは反動の影響か、快感しか感じていなかったようで、リリーの時のように何度も達してしまった。

 では誰が痛いとつぶやいたのか。それは弘世だった。


「ご、ごめん……夢中で……」

「とりあえず血は出てないみたいだから大丈夫」


 ベッドシーツには美咲の血がついていた。

 血がついていないのに痛いのは、弘世の首元だった。


 首や肩には美咲の歯型が大量についていて、耳だって唾液まみれだった。

 美咲は噛むことや舐めることが好きなようで、セックス中、何度も弘世の首から肩、耳までを強く噛んだり舐めったりしていたのだった。


「早瀬さんの方は、本当に体の方は大丈夫?」

「うん。高梨が優しかったから……リリーみたいにされてたら、死んでたかもだけど」


 ふふっと笑いながら、まだ気絶していたリリーを見下ろす美咲。

 すると、やっとのことでリリーが目を覚ました。


「あーっ!! ミサキとヒロセ……ヤッてた!?」


 シーツについた血を見て、リリーはすぐに悟った。


「リリー、高梨に謝って」

「な、なんで!」

「無理矢理はよくないよ」


 弘世には襲われることがあったと聞いた美咲だったが、まさにそれはリリーに当てはまることだった。

 だけど、弘世からの優しい行為を経験した身としては、ああやって無理矢理の行為は良くないと思ったのだった。


「……ご、ゴメンナサイ……」

「大丈夫だよ。俺だってムキになってやり返しちゃったし……」

「むぅぅぅぅっ!! ずっと勝ってきた私が、ヒロセに……ヒロセに……っ」


 リリーは直前までの自分の行為を思い出した。

 自分が勝っていたのはほんの最初だけ。あとは全部弘世にされるがままで、自分があんなふうになるとは思っていなかったから。


「リリー、完全敗北だったね。スカっとしたよ」

「悔しいっ! テニスもセックスだって勝ちたいのに!」

「先に高梨を取られたのは、こっちも悔しかったけどね。でも高梨とのセックスはリリーのと違ってとっても優しかったよ」

「むぅぅぅ!! なにそれ! なにそれぇー!!」


 自分とは違っておそらく多少なり愛のあるセックスをしていたと聞いて、リリーは顔を赤くした。


「ヒロセ! 私とも優しいセックスしてよ!」

「いや、あれはリリーさんが優しくなかったから……そういうのって、互いの意思疎通がちゃんとできて、するものでしょ? リリーさんは優しくなれる?」

「…………なるしかないじゃんっ」


 リリーのこれまでの彼氏は、全てリリーが優位だった。

 この性格だ。天真爛漫で自信過剰。テニスだって他のことだって負けたくない負けず嫌い。

 だからこそ、テニスでも結果を残して来たと言っても過言ではないが、リリーは優しくされてはきたが、自分から人に優しくしてきたことはあまりなかったと気づいたのだった。


「できるなら、俺はいいよ」

「なら――」

「ちょっとまってリリー」

「なに?」


 リリーは今すぐ弘世に飛びつこうとした。

 しかしそれを美咲が止める。


「ほら、せっかくだし、一緒にどう?」

「え…………え?」

「私、リリーのその負けず嫌いな性格、嫌いじゃないよ。でも、たまにはさ、一緒に切磋琢磨してきた関係だし、今日だけはライバルじゃなくてもいいんじゃない?」

「シングルス相手にダブルスで挑むってこと?」

「……そういうことじゃないんだけど……まあ、そういうことでもいいや」


 リリーはあまり美咲の言葉を理解していなかった。

 でも、することだけは理解できた。


 美咲は弘世に向き直る。


「高梨、まだできる? できるよね……」


 弘世の下半身はまだ収まりを知らなかった。


「もう、どうなってるの? こんな性欲の強い男、今までの人にはいなかったよ!」

「はは、はははは……」


 理由は説明できないが、弘世はまだ体力があった。


「じゃあ、リリー。一緒に……優しくね」

「わかったよぉ……ヒロセ、今度はゆっくり気持ちよくなろっ」


 すると二人一緒になって弘世をベッドに倒した。

 そうして美咲とリリーは、収まりを知らない弘世の下半身に顔をうずめたのだった――。






――――




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