Honey, so sweet!!②

せとの りみ

聖なる朝に愛の誓いを

.



『まほじゃなきゃ、ヤダ……』






彼がそう言ったのは、12月25日の朝。

まばゆい光が差し込む、彼の赴任先のロスのアパートで…。





言葉にならない、甘く熱を帯びる感情をどう伝えたらいいのかわからなくて……、



あとからあとから溢れる涙に顔をぐちゃぐちゃにしながら私はただ、ひたすらに、何度も何度も、頷くことしか出来なかった。



ひくひくとしゃくりあげ、肩を震わせる度に、私を抱き寄せる彼の腕に力がこもる。




「……まほ」



耳元で不意に名前を呼ばれ、彼の胸の中で身動ぎして、遠慮がちに顔を上げる。



見上げた彼の、その……

いつになく真剣な面持ちに……



呼吸が、止まる。




私を見つめながら、私からほんの少し体を離したかと思うと、まだちょっとだけ震えていた私の左の手のひらを、彼の右手がうやうやしく持ち上げて、そして、ゆっくりと、リングがはめられた私の薬指に口付けを落とす。



おとぎ話に出てくる王子様しかしないであろうとおもっていた、その行動に度肝を抜かれ、一瞬意識を持っていかれる。



はっと我に返ったその瞬間。どくどくと騒ぎ出す心臓に声を震わせながら、私は、彼の名を呼ぶ。




「て、てらだ、さん……」




私の声に反応した彼が、私の薬指に唇をつけたまま瞳を持ち上げ、目を白黒させる私を、迷いのない真っ直ぐな眼差しで見つめる。











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