ケース5
その少女は美しい少女でした。
その少女は愛されていました。
少女が何もしなくても、周りに人が集まってくる、
少女が望めば、周りの人が勝手に叶えてくれる。
そんな、美しい少女でした。
そんな時、魔女の噂を聞きました。
魔女にならなくても望みが叶う少女。
しかし、だからこそ少女は望みました。
自分を愛してくれてる人は誰なのか。
一番愛してくれてる人は誰なのか。
それを知りたいと願い、儀式を行いました。
そして。
魔女は現れました。
血のように赫(あか)く。
骨のように潔(しろ)く。
魂のように蒼(あお)い。。
そんな魔女が現れました。
まるで最初からそこにいたように。
佇んで、ただ澄んでいました。
驚く少女に魔女は言います。
「魔女になるためには条件が一つだけある」
「アナタを愛してる人を捧げる事」
「はい、捧げます」
少女は悩まず、考えず、答えました。
「……わかった」
魔女はそれだけ言って、指を軽く振りました。
「っ、い……」
少女は右手に走った痛みに、顔をしかめました。
そこには、さっきまではなかった、
尾を噛む蛇の紋様がありました。
「これで契約は成立」
「アナタは今この瞬間から魔女になった」
「これからどうするかはアナタの自由」
それだけ言って、魔女は消えました。
まるで最初からいなかったかのように。
少女はそれから。
何事もなかったようにベッドに着き、眠りました。
一体、誰が消えたんだろう。
一体、誰が私を愛してくれてたんだろう。
そんな事を考えながら。
期待を膨らませ、笑みを浮かべながら。
眠りにつきました。
少女は起きました。
家族は全員います。
少女はバスに乗りました。
いつも乗る乗客は全員います。
少女は学校に着きました。
周りにいる人は全員います。
少女はクラスを周りました。
知ってる人も知らない人も全員います。
少女は学校中を走りました。
知ってる人も知らない人も全員います。
少女は町中を駆けました。
知ってる人も知らない人も全員います。
少女は。
少女は、誰が消えたかわかりませんでした。
少女は。
少女は、誰が愛してくれていたかわかりませんでした。
少女はその時初めて
自分の行いを自覚しました。
顔も名も知らぬ誰かが消えた事を。
顔も名も知らぬ誰かが自分を愛してくれた事を。
それから少女は。
探し始めました。
魔女の力を借りず、
自分の力だけで、
探し始めました。
消えた人を。
自分が捧げた人を。
愛してくれた人を。
自分を愛してくれた人を。
何のために?
見つけるために。
何のために?
弔うために。
何のために?
謝るために。
何のために?
遂げるために。
何のために?
応えるために。
自分の勝手で消えた存在に。
自分を愛してくれた存在に。
「好きになってくれて、ありがとう」
「そして、ごめんなさい」
そう、伝えるために。
それだけが。
少女が出来る事でした。
少女に出来る事でした。
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