第25話 黒髪巨乳生徒会長と結ばれる

 ガチャリと生徒会室に入って、後ろ手で扉を閉める。と、机の上にメイド服姿の紫乃が座っていて、紅潮した顔で俺を見つめてきた。


「いらっしゃい。抜け出してきたわね。メイドの仕事、わりと楽しかったんだけど、執事服の光也を見てたらガマンできなくなって」

「ガマンて……」

「ストレスはないわ。そうじゃなくて、今は純粋に光也と楽しみたくなったの」


 その紫乃が、ストンと床に降りて、近づいてきた。俺の前に来て、両腕を首に絡めてくる紫乃。熱く潤んだ瞳で俺を見つめながら、くすりと微笑んだ。


「私も何も言わずに抜け出してきちゃったから、後で喫茶店に戻ったらみんなに怒られるかもね」

「みんなに……怒られる……」

「? どうしたの、そんな顔して?」

「いや……。俺って嫌われてるんだなーって」

「誰も嫌ってなんかいないわよ。何を言っているの?」

「俺、紫乃の相手にふさわしくないのかもなって、ちょっとだけ思ってしまって……」

「…………」


 紫乃がその紅潮していた顔を真面目なものに変えた。俺の顔の温度を測るように、手を当ててから、続けてきた。


「どうしたの、急に突然?」

「いや、大したことじゃないんだが、クラスの連中が話しているのを立ち聞きしたんだ」

「なんて言ってたの?」

「紫乃には俺はふさわしくないって」

「…………。そんなこと、気にしたの?」

「あながち間違いじゃないとは、思った」


 紫乃の前でうつむく俺。紫乃は、その俺を叱責してきた。


「ふさわしいとかふさわしくないとか、連中が決める話じゃないでしょ。私と光也が互いを気に入っているかどうかって話」

「確かにそうなんだが……。学園祭で自信なくしているところに、冷水を浴びせられて、実は俺が浮かれてただけなんじゃないのかって思ってしまって……」


 と、紫乃が俺の顔を両手でガッシとつかんで、目の奥をのぞきこんできた。


「本気でそれいってるの?」

「本気とか本気じゃないとかじゃなくて、周りはそう思ってるんだなって……」

「私のこと、好きなんじゃないの?」

「それはそうなんだが……」

「周りがどう見ているのかは私にもわかるわ。でも光也が気にすることじゃないと思う。目の前にいる私よりも、周りを気にするの?」


 紫乃が、さらに続けて問い詰めてくる。


「周りの連中の話を気にして目の前の私を見ない、私の話を聞かないのって、私に対して失礼なことよ。一緒に会話して生徒会で活動して何度もカラダを重ねて。でも私って、光也にとってはその程度だったの?」

「紫乃のことは大切に思ってる。でも、紫乃だって俺のことを彼氏だって認めてくれないじゃないか……」


 言葉尻を濁した俺を、紫乃は続きとともにじっと見つめてきた。


「私ももだえて、たじろいているわ。あと一歩を踏み出すきっかけがつかめなくて、もがいてる。でも、光也は自分がふさわしくないという。私から逃げるように」

「紫乃……」


 俺は驚いて紫乃を見つめていた。その紫乃が、俺の頬をそっと撫でてくれた。


「ひどい顔……。今まで、モブっていわれて粗雑に扱われてきたのね……」

「俺は……」

「光也、いろんな感情でぐちゃぐちゃになってる……」


 紫乃が、俺の顔を両手で包んでくれて、いたわるように優しく微笑んでくれた。その微笑みが目に染みた。その温かさが心を震わせた。


「私の相手、そんなに辛い?」


 紫乃の顔に、哀しみが浮かんだ。


「もし私の相手が辛くて苦しいのなら、やめても……いいわ。私が押し付けていただけだから」

「やめるって……?」

「光也が楽になれるのなら、関係はやめても……って、思う。光也の苦しむ顔は見たくないの」

「…………」


 その紫乃の言葉に、俺はこぶしをにぎりしめ、唇を噛んだ。


 だめだ、これじゃあ。いつまでたっても、俺たちはすれ違い続ける。


 思えば、俺は小さいころからモブとして生きてきた。不満も不平もなかったというより、あきらめていたというのが正確なところだろう。だがそんな俺にも、まだあきらめきれないものがある。


 だから、勇気を出して、ここで言わなくちゃいけない。ここで言わなくちゃ、紫乃を失ってしまう。そうしたら一生後悔する。


 そんな想いに突き動かされ、勇気を振り絞って紫乃に向けて言い放ったのだ。


「紫乃! 俺の恋人になってくれ!」

「!」


 雷に打たれたように、紫乃は硬直した。


「カラダだけの契約関係じゃない、本物の恋人になってくれ! 俺はお前を失いたくない! 失いたくないって今わかった!」

「光也……。いきなりすぎて……」


 紫乃の顔が崩れた。顔をゆがめながら、何かを言おうと口を開きかける。


「周りがどう言おうとどう見ようと、お前とわかり合いたいんだ。俺は、もうお前なしじゃ生きてけない! お前なしじゃ、前に進めない!」

「大げさ……ね……」


 紫乃が、微笑みながら、その瞳を潤ませた。


「俺がモブだとかどうでもいいし、お前が学園アイドルだとかも、もうどうでもいい」

「うん……。うん!」

「俺はお前と、ストレス発散の契約関係じゃなくて、互いを大切に思い合うパートナーになりたいんだ」

「こう……」


 紫乃の目から雫がこぼれおちた。紫乃の顔がぐしゃぐしゃになっていく。


「俺は本当にお前のことが好きなんだ、紫乃!」

「こう……やぁ。好きぃ、大好きぃ! そんな風に強引に求められるの、ずっと待っていたの!」


 紫乃が、しゃにむに、抱き着いてきた。俺は、その紫乃の唇を強引に奪った。中に舌を入れてめちゃくちゃにかき回す。紫乃も答えてくれる。俺と粘膜を絡め合って、必死に俺を受け止めようとしてくれる。


 俺たちは、そのまま互いを求めた。むさぼるように絡み合いながら、ソファに倒れ込んだのだった。



 ◇◇◇◇◇◇



 服をはだけて、紫乃の身体をもみくちゃにする。俺は激情のおもむくまま、紫乃のカラダと心を求め、責め立てる。


「好きだ、紫乃! 大好きだ!」

「わたしも好きぃ、大好きぃ、光也ぁ!」


 紫乃も、必死に俺にしがみついて、答えてくれた。


「お前は俺のものだ、紫乃! 俺のだ、紫乃!」

「うんっ、うんっ! 私の光也ぁ! わたしのぉ!」


 紫乃のカラダのどの部分を抱きしめているのか、わからない。もう、俺のどの部位が紫乃のどの部分と重なってつながっているかの感覚もない。ただただ、濁流のように押し寄せる感情のまま、俺たち二人は互いのカラダを絡め合う。


「紫乃ぉ! 紫乃ぉ! おおおおぉ!」

「もっとぉ、もっとぉ! 私をめちゃくちゃにしてぇ!」


 つぶれそうなくらい、紫乃を抱きしめる。俺は、紫乃を組み伏せ、上から押しつぶしながら、咆哮した。

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