第4話

安楽死が認められたからって、必ずしも「死」を望むすべての人が死ねるわけではない。

 ぼくや、おじさんも死ねない人の一人だ。

 ぼくは、もうすでに10回以上自殺行為を繰り返している。

 それでも、ぼくの安楽死が認められないのは、証人がいないから。元々、ぼくは独りで、家族はいない。クラスで話す人はいても、自殺しようとしていることを明かせる友達なんていなかった。

 死にたいのに、こんなに死にたいのに、最後の砦である『dieメーター』は数値を49のまま、1を上げてくれないのだ。

 ぼくは五体満足で生まれて、これまで大きな怪我も病気もしたことはない。

 怪我、と言っていいのか分からないけれど、ぼくの左腕には大きな傷跡がある。アムカだ。

 痛くて痛くてたまらなかったから、ぼくは自傷行為ではなく、自殺行為に手を出した。その数年後だ。安楽死が合法化した。

 けれど、ぼくは死ねない。

「辛いですよね、死にたいのに死ねないなんて。」

 今時、自殺行為をする人なんて、日本中どこを探してもいない。

「そうだなあ。あの機械、さっさと正常に戻れよなあ。」

 安楽死が合法化されると同時に、日本はありえない法律を作った。

『自殺行為を行った者は、それが何度目の行為であろうと、無期懲役と処する』

 以前よりも、死が近くに存在するようになった世界で、無期懲役は、死以上の拷問だと言われている。

 その自殺行為で死ねたらいいけれど、ぼくは渋って未遂で済んでしまいそうだ。

 ああ、いやだ。しにたい。

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