第3話

地球上で、安楽死を合法化していない国は、日本が最後だった。

中国もアメリカも、インドやロシアも。どこもかしもが、安楽死を認めていた。

一応、先進国と呼ばれている日本も容認しないわけにはいかなかったのだろう。


安楽死が合法化されてから、周りがガラッと変わった。

クラスメイトが数人いなくなっていた。ムードメーカーからクールキャラだった人まで。みんな苦しい思いをしていたのか、と考えると、ぼくはひとりじゃなかったと少し安心した。そのあと、後悔した。誰かに相談すればよかった、と。



ピーピーと無機質な音が部屋に響く。

パソコンのキーボードを男の人が叩き続けている。

「数値は、・・・・・・49ですね。残念ながら、あなたの安楽死は認められません。」

「・・・・・・そうですか。」

 「おかえりください。」と部屋から追い出される。待合室には、人が少しだけいた。

 ここは安楽死専門病院だ。dieメーターも扱っているから、数値を計ることができる。安楽死が合法化された当初は、ここに人が殺到していた。

「おい、坊主。てめえ、数値は?」

 訪ねるたびに、ここにいるおじさんともすっかり話し相手にまで昇格してしまった。

 ぼくは、安楽死が認められたずっと最初からメーターの数値、49を叩き出している。

 もう、101回連続になる。

「今回も49でした。あなたは?」

 このおじさんとは、ここでしか喋らない。ここ以外で会うことはないから、名前もなにも知らない。

 坊主、と呼ばれるのは正直嫌だ。けれど、少し気性が荒そうな人なので、何も言わない。

「おれは、37だ。あの機械、ぶっこわれてんじゃねえか?おふくろも女房も娘も。安楽死しちまってよお。おれもさっさと死にてえ。」

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