最期の涙

ゐろは

第1話

高橋真央は、いつも通りの朝を迎えていた。いつものように、朝食を済ませて制服を整え、玄関を出る。学校までの道のりを歩きながら、真央は今日も何気ない一日が過ぎるのだろうと思っていた。しかし、転校生がやって来ることがその思いを根底から覆すことになるとは、まだ知らなかった。


彼の名前は加藤翔。名前だけでなく、その外見もどこか異質だった。長い黒髪は無造作に伸び、眼鏡をかけているものの、どこか冷たさを感じさせる鋭い目つき。彼が最初に教室に入った時、クラス全員の視線が一斉に集まった。だが、その視線は好奇心や歓迎のものではなく、どこか遠くに置かれた存在としての興味だった。


翔は、すぐにクラスの輪から外れた。誰も彼に話しかけることはなく、授業中も黙々とノートを取っているだけ。休み時間も、他の生徒たちが楽しそうに談笑している中、翔は一人で過ごすことが多かった。それが、真央の目にも何度も映った。


「彼、すごく浮いてるな…」


真央は心の中でそう呟いたが、他の生徒たちと同じように翔を無視してしまっていた。自分には友達も多く、クラスの中心で過ごしていたから、翔の孤立に深く関わる理由を見つけることができなかった。


だが、その無関心が彼をどんどん追い詰めていることに、真央は気づくことがなかった。


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