第14話 投獄の訳
「お父さんは投獄中でお母さんは3年前に殺されました。私の身代わりになって」
そう言って姉さんは思い詰めた表情のまま家の中に入っていった。
「ルート、クィンビーに説明してやってくれ。こういうのはルートの方が上手いだろ。俺はマリーについてるよ、心配だからな」
レオンもマリーを追って家に入った。
それから僕はクィンビーに母さんと姉さんが襲撃された事、教会での父さんと司教のやり取り、若い教徒の力でマリーは助かったが母さんは間に合わなかった事を伝えた。僕の治癒魔法の事は一応伏せておいた。
「なるほど、そんな事があったのか。ついでに聞いてしまうが、父親が投獄中というのは何でじゃ?何か罪を犯したのか?」
「父さんが捕まった理由は殺人だよ。殺したのは母さん達が教会に運ばれた時に居たあの司教。この犯行は父さんも認めてる」
「ほう…母親の復讐か?しかし、子供が居るのにまた思いきったな。妾には少し軽率な行動にに思えるが」
「ちがう!」
父さんが軽率と言われて思わず怒鳴ってしまった。殺人なんて母さんがされたことを他人にやってしまったのだから軽率と言われればそうなのだが。
「大声出してごめん、クィンビー」
「
何だかクィンビーに僕の事を見透かされてる様な気がして誤魔化すように話を続けた。
「父さんも始めから殺すつもりじゃ無かったと思う。あの日、父さんはケルベロスという盗賊団のアジトに行ったんだ。ケルベロスって結構有名な盗賊団で、懸賞金が懸けられた奴等が何人も居る。父さんはそいつらが母さんと姉さんを襲撃したって情報を掴んで、それでアジトも突き止めた。多分、父さんの仲間が協力してくれたんだと思う。父さんを訪ねて家に何人も人が来てたから」
「なるほど。しかし分からんのう。盗賊団を調べていて何で司教を殺すんじゃ?」
「父さんがケルベロスのアジトに行った時、そこに司教が居たんだよ。ケルベロスの連中と一緒に。そして、テーブルに置かれた沢山の金貨を前にしてみんな笑ってたって。父さんは全てを理解して持っていた剣でその場にいた者を皆殺しにした。それから父さんは自首して、憲兵が現場に駆けつけた時には司教とケルベロスの一味3人の死体、それに金貨があったんだって」
「それは教会側にしてみたら不名誉この上ない話じゃな」
「うん。だから神聖パラス教会は母さんの事で逆恨みした父さんがケルベロスと結託して司教を誘拐、殺害し、報酬で渡すはずだった金貨が惜しくなってケルベロスも皆殺しにしたって主張したんだ」
そして、神聖パラス教会は父さんを死刑にしろと裁判で主張してきたが、そこで1つの声が上がる。
「神聖パラス教会の言う通り回復術師が不足なら、一般に回復魔法を解放すれば解決できるんじゃないか?」
この声は瞬く間に王都中に拡がり、王室にも王室側の貴族にも支持された。回復魔法の制約で苦労していたのは軍を指揮する王室や貴族達も同じだった。兵の消耗が財政を圧迫していたから。この裁判が違った面を見せ始めた時、神聖パラス教会の圧力で裁判が中断されて、今も裁判は行われないままだ。
「ルートの父親も裁判がこんな事になるとは思わなかったじゃろうな。いや、まさか計算しての行動だったか?自分の主張していた回復魔法の一般開放に話が進むとはのう」
「そこはどうだろうね。父さんが計画的に人を殺すなんて想像出来ないし。ひょっとしたらこの事件を利用した人が他に居たのかもしれない。まぁ父さんと母さんの話は大体こんな感じかな」
「王都からいきなりこんな辺鄙な村じゃ生活も大変じゃろう?」
「そうでもないよ。この家買うためにミスリルの錬金板を手放したのは惜しかったけど。父さんが捕まった時に目ぼしい財産は全て没収されちゃったから僕達にはお金が無かったし仕方ないね。まぁ、姉さんの治療費で元々司教に結構取られちゃってはいたんだけど」
「ところで、マリーは大丈夫か?だいぶ落ち込んでいたようじゃが」
「うーん、前にも同じような事があって。晩御飯を食べてる時にレオンが一度母さんの話をした事があるんだ。母さんの手料理が食べたいなって。何気ない一言だけど、それでマリーは今日みたいに酷く落ち込んじゃって」
「その時はどうやって立ち直ったんじゃ?」
「村にアンネってお婆ちゃんが居てね、マリーが落ち込んだ時に悩みとかを聞いてくれたんだ。頼れる大人が近くに居るっていうのがマリーの心の支えになったんだと思う。2人は本当の孫とお婆ちゃんみたいだった。ただ、そのアンネさんも去年亡くなっちゃって。そしてレオンとはもうマリーの前で母さんの話をするのは止めようって」
「なるほど、年長者か。ならばここは妾が一肌脱いでみるか。妾も責任を感じるところがあるしのう」
「ちなみにだけど…クィンビーって今何歳なの?」
「レディに歳を聞くでないぞ。やはりルートはまだ童よのう」
蜂でも年齢って気にするのかと思ったけど、300歳とか言われたら魔族確定だし知らない方がお互いのためかもしれない。
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