みんな誰かを愛してる
@kazutsuya
第1話
友情、夢、そして初恋の物語
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第1章 – 僕たちの約束
太陽がのんびりと空に浮かび、校庭を柔らかな金色に染めていた。
そよ風が桜の花を揺らし、花びらが小さな秘密のように舞い散る。
完璧な午後だった。
……少なくとも、この声が現実に引き戻すまでは。
「おい! いつまでボーッとしてんだよ! もう昼休みだぞ。ホント、お前って周りのこと見えてないよな?」
夢の中でキングスFCの決勝ゴールを決めるところだったのに――一瞬で砕け散った。
こいつは俺の親友……いや、一生のライバル、桐原一翔(きりはら かずと)。
通称カズ。
4歳のとき、彼の家族が東京に引っ越してきてから、ずっと一緒にいる。
親同士は同じ会社の同僚、母親同士は一瞬で親友になり、弟と妹たちは――まあ、仲が悪いってことで。
でも、カズと俺は?
同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学校、そして今は同じ高校。
さらに、同じ情熱――サッカー。
なのに、どういうわけか、俺たち二人とも普通の見た目なのに、こいつだけやたらモテるんだよな。
女の子たちは何を見てるんだか。
俺はため息をつきながら、弁当に箸を突き刺した。
「なあ、カズ……覚えてるか? 俺たちの幼馴染のあの子」
カズはニヤリと笑う。
「ああ、あの、お前が好きだった――」
「す、好きとかじゃねえし!」
俺は思わずご飯を喉に詰まらせそうになった。
「はいはい、ツンデレだな、周防(すおう)。」
「うるせえ、バカ!」
カズはただ笑いながら首を振った。
「でも、確かに覚えてるよ。でも突然いなくなったよな。何でだろうな。」
俺は弁当をつつきながら、ぼんやりと考え込んだ。
「……今でも俺たちのこと覚えてるかな?」
「そんなの悩んだって仕方ねぇだろ。お前、約束したんじゃなかったか?」
俺は拳を握りしめ、力強くうなずいた。
「もちろんだ! 俺は世界一のサッカー選手になる!」
「だったら、まずは飯を食え、バカ。」
カズは俺の弁当から卵焼きを奪い、そのまま俺の口に突っ込んできた。
「むぐっ……んなこと言わなくても食ってるっての!」
カズはニヤニヤしながらスマホを取り出す。
「おー、いい顔してるな。写真撮っとこ。」
「消せ! さもないと――!!」
俺が飛びかかる前に、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
カズはニヤリと笑う。
「時間切れ。ほら、キャプテン、授業が終わったら部活だぞ。」
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放課後 – サッカー部
汗が額を伝う。
チームメイトたちはラストスパートに必死だ。
「あと5周だ! そしたら終わり!」
「キャプテン、それはキツすぎる!」
俺は腕を組み、厳しく言い放った。
「強くなりたいんだろ? だったらやるしかねぇ!」
「はい、キャプテン!!」
俺は思わず微笑んだ。
「マジで疲れた……」カズがベンチに倒れ込む。
「だな――」
ふと、俺の視線がグラウンドの端に立つ女の子に引き寄せられた。
誰だ? 誰かの彼女か?
「新入生だろ?」と誰かが小声で言う。
ちょうどその時、俺たちの"三銃士"、天上泉(あまがみ いずみ)がやってきた。
「おっす! どこ行ってたんだよ、いずちゃん?」
泉はニヤリと笑う。
「生徒会の仕事。お前ら死にそうな顔してんな。」
俺は皮肉っぽく笑う。
「さすがいずちゃん。成績トップ、運動神経抜群、そして未だに彼女なし。」
泉は肩をすくめる。
「興味ないし。」
カズと俺は目を合わせた。
「嘘だな。」
「だな。」
からかおうとしたその時、さっきの女の子が俺たちの方へ歩いてきた。
「えっと……先輩?」
カズが眉をひそめる。
「ん? 彼氏でも探してるのか?」
俺はカズを小突いた。
「カズ! ちゃんと話聞けよ。」
彼女は少し緊張しながら、足元を見つめる。
「私……橘美空(たちばな みく)です……。久しぶりですね、周防先輩、カズ先輩。」
時間が止まった。
心臓が落ちるような感覚。
美空……?
鼓動が早まる。
美空ちゃん? ミーちゃん?
カズと俺は目を見開き、顔を見合わせた。
「……マジかよ……」カズが呟く。
泉が不思議そうに眉をひそめる。
「誰?」
カズの目が大きく開かれた。
「……お前……ミーちゃん?」
美空は少し恥ずかしそうにうなずく。
「嘘だろ! こんなのありえねぇ!」
カズは笑いながら頭をかく。 だが、その声は少し震えていた――緊張してる?
俺は……完全に言葉を失っていた。
ミーちゃん。
俺の初恋。
俺に夢を追えと言った女の子。
突然姿を消した幼馴染。
なぜ今、ここに?
問いかける間もなく、泉が叫ぶ。
「やばい! 電車逃すぞ!」
「うわっ! マジか!」
カズは俺の腕を引っ張る。
「ミーちゃん、また明日話そう!」
「う、うん! じゃあ、また明日!」
俺たちは走り去り、グラウンドに彼女を残したままだった。
だが、俺の頭の中は彼女のことでいっぱいだった。
なぜ今、ここに?
なぜいなくなった?
そして――
なぜ俺の心臓は、こんなにもうるさく鳴っているんだ?
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その夜 – 周防の部屋
天井を見つめながら、眠れずにいた。
「カズ。」
「……ん?」
「美空……何があったんだろうな。」
カズはしばらく黙った後、静かに言った。
「さあな……でもさ、大事なのは今じゃね?」
アイスを奪った泉が口を挟む。
「で、周防……美空って、お前の初恋?」
「お前、それ俺のアイス!!」
「いらないって言ったじゃん。」
カズが爆笑する。俺は軽く拳で頭をはたいた。
「この野郎!」
カズと泉は即座に土下座ポーズ。
「申し訳ございません、ボス!」
俺はため息をついた。
「明日、高級アイスおごれ。それでチャラな。」
「了解!」
笑い声が部屋に響く。
そして俺は、そっと息を吐いた。
明日。
明日、また美空に会える。
なぜか――
楽しみで仕方なかった。
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つづく…
みんな誰かを愛してる @kazutsuya
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