第19話 渡りに船
『これぞ正に、渡りに船ってな』
脈絡なくそんなメッセージが届いたのは、葵さんを送って帰った後、シャワーを済ませて休んでいる時のことだった。
送り主は、遥さんだ。
『何を渡る為の船です?』
『勿論、妹の依頼っつうどでかい海よ』
『何か良い話でもあるんですか?』
『おうとも。前に言ってた文芸部の先輩なんだけどな、そこの家、キャンプとか旅行とかでブラブラ遠出するのが趣味なんだよ。で、前々からうちの事情も知ってるから、ようやく場所が分かったんだよって報告がてら話したところ、九州の方にも行きたいねって話がちょっと前から家族で上がってて、丁度いいしその話を詰めて、遠征ついでにお前たちのことを送ってやろうかってことになってるらしいんだ。通潤橋の写真見て、ぜひ見に行きたいってな』
それは――本当に、正に渡りに船な話ではあるけれど。
『ちょっと迷惑じゃないですかね……?』
『いや、素直に甘えちまっていいと思うぞ。昔から、先輩らの友達とかをしょっちゅう連れてってるらしいからな。お前らだから特別って訳じゃないはずだ。まぁ気遣いゼロってこともないだろうがな。優しいご家庭だし』
『なるほど。その話、葵さんには?』
『さっきした。で、お前にも話さないとってな』
『分かりました。葵とも絡めて、その先輩さんにも挨拶しないといけませんね』
『明日の夜、先輩ん家で作戦会議と夕飯だとさ。葵も行く気だ。神前は予定大丈夫か?』
『バイトはありませんし、多分暇ですね。江川さんは?』
『悪いがバイトだ。当日も行けないし、当人のお前たちに任せるよ。まあご両親とは顔馴染みだし、お礼も兼ねてそのうち顔は出す』
『そうですか。分かりました。後で場所だけ教えておいてください』
『おう、今すぐ送ってやる』
と、、位置情報付きで住所が送られて来た。
例の先輩さんから許可は取ったとのこと。ついでに『六時から六時半くらいに行けばいいらしい』とも添えられていた。
場所は――少し遠い。電車で二駅先から、数分ほど歩いたところだ。
お礼の言葉を送ってから遥さんとのトークルームを抜け、今度は葵さんとのトークルームを開いた。
『こんばんは。夜分にごめんね。明日、直接行く? それともどこかで待ち合わせる?』
そう送って、何分も経たない内にピコンと通知の音。
遥さんと話していてまだ起きているのだろう。返信は早かった。
『一緒に行こ。一回帰って着替えて行くから、駅前で待ち合わせ』
『了解。気を付けて来てね』
『ん。結人も』
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