第6話 戦いの火蓋は切られる(模擬戦)

 「いらっしゃい!今回は何をお求めで?」


 武器屋に入った途端カウンター越しで接客を始めたのは瞳と髪が茶色くがたいのいいおっさんだった。


 「こんにちは、今日はこの子に合った武器、そうですね…拳系の武器をお願いします」


 「坊主に合う武器か…言っちゃ悪いがもうちっとでかくなってからでも遅くはないんじゃないか?」


 まあ普通の子供はこんな十一の頃から戦うなんてことはしないからな。するとしても訓練や模擬戦くらいだ。


 「こんな見た目でもかなり強いらしいですよ?この子」


 「おいこんなとはなんだ、こんなとは」


 いや確かにちんちくりんな見た目してるけども。


 「なるほど、ちなみにその姿はもしかして貴族の子供か何かか?」


 貴族の子供かと思いながらよくそんな言葉遣いできるな。まあ俺が言うことではないけども。


 「そう思うなら言葉遣いをもうちょっと気をつけたほうがいいのでは?まあこの子は貴族のご子息ではなくお客人ですが」


 「そうか…まあ戦えるならそう文句は言わねえが…まずは俺の弟子と模擬戦をしてもらう。戦い方を見ないと勧めることもできんからな」


 「模擬戦か、面白い。お前の弟子は強いのか?」


 昨日の盗賊は量だけいても弱かったからな。正直満足できなかったんだ。


 「ふっ、威勢がいい坊主だな。安心しろ俺が教えた鍛治術により叩き方と力はバッチリある」


 「叩き方って…それは武器の打ち方なんじゃないのですか?」


 「まあ人と武器はそんな変わらんから大丈夫だろたぶん」

 

 「いや違いますよ!?貴方からも何か…て聞いてないし」


 いやあ、相手はどんな戦い方をしてくるのかな?やっぱり武器屋の弟子だから力で攻めてくるのか?それとも技で攻めてくるのか…どっちでも楽しいからこれから楽しみだな。


 「おいカイ!」


 「はいはい!!聞いていましたよ。模擬戦っすよね?」


 カウンターの奥の方からオレンジの髪と瞳をした元気な俺より少し歳が上に見える少年が出てきた。


 「ああ、俺たちは裏の訓練場に行ってるからお前は武器を持って来い」


 「了解っす!ちょっと待っててください!」


 そう言いカイはまた戻っていった。

 

 「さて、俺らもいくか。ついて来い。案内してやる」


 そして俺たち二人は案内され裏口から訓練場に出た。


 そして五分後にカイが空色の魔石がはまったでかい、それはもう本当にでかいハンマーを持ってきた。


 「お待たせしましたっす!」


 「あの、あれで叩かれたら流石にこの子が死んでしまうのでは…」


 まあ確かにそう思ってしまいそうになるくらいにはまじで馬鹿でかいハンマーだ。


 「そこら辺はこの魔石の力で相手を傷つけることはできなくなっているから安心しろ」

 

 「…そういうことでしたらまあ大丈夫です。」


 「ああ、だが殴られた際の衝撃と痛みまでは無くせないからそこは気をつけな」


 つまりその武器の特性を活かした捨て身の攻撃は無理になっているのか。


 「なあ、俺の分のそういう武器はないのか?」


 「ああ、残念ながらそれは無い。その代わりにあるものを貸そう」


 「これっすね!このペンダントは僕が最近作った自信作なんすよ!」


 少し興奮気味なカイが懐から取り出したそのペンダントにはハンマーについていたものと同じに見える魔石がついていた。


 「このペンダントをつけた者は生きとし生けるもの全てに対する攻撃のダメージがゼロになる効果がある。まあつまりあのハンマーの効果を人に付与すると言うことだな」


 「それってもはや呪具じゃね?て言うかカイって武器職人の弟子なのに魔石の加工もできるんだな」


 俺の中での武器職人というのは汗水垂らしながら武器や防具を打つことなんだよな。


 「そういう話はまた後でしてやろう」


 「それもそうだな」


 「じゃあまずはルールを説明する、が、特にルールはない!どちらかが降参するまで続けてもらう」


 「「了解!」っす!」


 「では、始め!!」


 そして戦いの火蓋は切られた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る