第5話 ばれる?

 二日目、七時くらいに起きて朝食など諸々の準備を終えてまず初めに向かったのは服屋だった。まあ俺の今と格好はコロニーから借りた服だからな今後俺が生きていくために着る服を買うのだ。


 てかそれよりもまず初めに聞きたいことがある。それは———


 「なあ、昨日の晩飯もそうだったが貴族ってのはいつもあんな飯を食っているのか?」


 「…他の貴族様たちはわかりませんが少なくともコロニー様は普段は節制なさっておりますよ。今回のお食事はあくまで来賓用です」


 そう答えたのはコロニーの屋敷で働くメイドの一人である銀髪に青い瞳をまた少女、エルだ。


 どうやらアニス達は仕事があるらしくその代わりの付き添いとしてエルが選ばれたらしい。


 「ふ〜んなるほど。で、俺はこれから何を買ってもらうんだ?」


 「何って服に決まっているでしょう」


 「いやそれはそうなんだが、いかんせん服を買ったことがないからな。どう言うものを買えばいいかよくわからん」


 案の定この見た目のせいでまともに外に出たことがないからな。


 「まあそれは中に入って気に入ったものを買えばいいでしょう。さて入りますよ」


 そうして中に入ること三十分、三着の服を買って退店した。


 買った服は全部特に派手な装飾はなく動きやすい服だ。いざとなって服のせいで戦いにくいなんてことがあったらまぬけだからな。


 そして今移動しているのは…


 「さて、次は武器屋ですね。貴方の戦い方は魔闘士に近いと聞いていますのでそれに合った武器を買いましょう。まあまだ体が小さいので余り選べる種類はないでしょうが」


 「魔闘士?なんだそれは」


 魔導士と魔剣士は聞いたことがある前者は魔法だけを極めて戦う者で後者は魔法と剣技、その二つを扱い戦う者だ。


 「…ふむ、まあ簡単に言ってしまえば魔法と拳を主体として戦う方達を指します。その中でも数々の型があるのですがそれは今はいいでしょう」


 なるほど、確かに俺は風魔法とこの身体で戦う。ていうかそれしか戦い方がなかったとも言えるのだが…


 「さてつきましたね。早速入りましょう——」


 「ワン!!」


 「ヒッ!?」


 「え?」


 武器屋の隣に繋がれていた犬が俺達に向かって吠えてきた。てかリードがなかったら今にも飛びかかってきそうな勢いだ。


 「なあ…お前犬が怖いのか?」


 さっきの短い悲鳴は間違いなく俺の左隣にいるエルから聞こえてきたものだよな?


 「い、いえそんなわ———」


 「グルルル…ワン!」


 「っ!?!?!?」


 ガクッ!


 そんな擬音が聞こえてきそうな感じでエルの体は固まった。ちなみに顔は少し青い。


 「意外だな、お前はさっきからすました顔をしていたから怖いものがあるとは思わなかった」


 「なっ、ななな何を言っているのですか!?」


 「顔色がコロコロ変わるやつだな。耳まで真っ赤だぜ?お前の顔」


 思わず俺はにやけてしまった。こんな感情は初めてだ。


 それにしても未だに飛びかかってきそうな犬を見ていてわかったが、よく見ると俺たちではなく俺だけに怒っているな。

 

 「もしかしてわかっているのか?」


 確かに今の俺は見た目だけは完璧な人間だ。ただ犬にはわかる魔族特有の匂いとかがあるんだろうな。


 「ど、どうしたのですか?ロベリア様?」


 いつのまにかすました顔に戻ったエルが話しかけてきた。


 「いやなんでもない。早く入ろうぜ」


 そして俺たち二人は武器屋の中に入って行った。


 ちなみに犬の前を通る時にエルはめちゃくちゃ怯えていた。


 


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