天穹のディオニソス
大島ぼす
序章
第1話 接触
西暦2053年、人類はベガ星系を拠点とする星間国家との接触に成功した。
地球人より遥かに高度な文明を持つ彼らは、ボランを名乗り、地球人に星間渡航技術ワープ航法をもたらした。
ボランの援助により、地球人の科学技術は飛躍的に進歩した。
しかし各国は、高度な科学技術を持つボランを恐れ、異星人に対抗するための団結を迫られた。
ボランの援助は善意からの行動だったが、将来的に地球を植民地とするための布石ではないかと地球人は警戒したのだ。
そして、国際連合に代わり、新たに地球連合(Terra Union)が発足する。
地球連合加盟の各国は、主権国家として独立を維持したまま、異星国家への通商、外交、そして防衛を統一的に行った。特に防衛については各国の軍隊が、本国より切り離され、地球統合軍 (Terra Unified Forces)として再編された。
地球とボランの交流は平和裏に続いたが、異星人による侵略論は根強かった。
ボランへの恐怖は皮肉なことに地球人の結束を促し、かつて憎み合った各国が、憎悪の矛先を異星人へと向け、手を取り合っていった。
ボランが地球人からの憎悪を集めたのは、その見た目にもあった。
彼らは子供のように小柄で、乳白色の肌を持っていた。また髪も生えておらず、耳と鼻が長くとがり、口からは牙が覗いていた。
ボランはその醜悪な見た目により、遂に地球人からの信頼や親しみを勝ち得ることは無かったのである。
軍備増強は日に日に進み、諸国家による宇宙戦艦の建造競争と地球統合艦隊の編成へと発展していった。
そして2104年、地球連合政府はボラン政府に対し、地球への前進拠点となるシリウス星系からの撤退を求めた。
地球人たちの一方的な言い分にボランは怒り、両者は互いに宣戦を布告。
地球人類にとって初の星間戦争となった。
統合艦隊は機先を制し、木星のワープゲートからシリウス星系に進撃、ボランが統治するアポリア星を占領した。
占領後まもなく、統合艦隊はアポリア星近辺で来襲したボラン艦隊を迎撃。この戦いは後にアポリア会戦と名付けられた。
両軍の戦力比は3対1で統合艦隊の圧倒的不利だったが、統合艦隊は包囲戦を展開するボラン艦隊に対して、敵中央への突撃を敢行した。
ボラン中央艦隊は統合艦隊の猛攻撃を受け呆気なく壊滅した。統合艦隊はそのまま右翼艦隊へ雪崩れ込み乱戦へと持ち込んでいった。
ボラン艦隊は数的有利を生かすことが出来ず、統合艦隊の前に各個撃破され、中央に続き右翼艦隊も壊滅すると、残された左翼艦隊は戦意を喪失し退却していった。
地球人の勝利は、戦闘に消極的だったボランの性質によるところが大きかった。
戦いを好まない彼らは、圧倒的な戦力差をもって敵に迫れば、地球人は撤退すると考えたのだ。
だがその歴史の大半を戦争で埋め尽くされた地球人たちは、数の優劣が勝敗に必ずしも直結しないことを理解していた。
勝敗を分けるのは、何よりも勝利への執念。
地球人の闘争心はボランのそれを遥かに凌駕していたのだ。
無論、ボランの戦いを避けようとする性格を見抜き、それを利用した戦術的な巧みさも、勝利の一因であった。
ボラン政府は、早々に連合政府に屈し、地球人はアポリア星の統治権を得た。
ここに地球人類始まって以来、初の星間植民地が誕生し、諸国家は熱狂に沸いた。
この勝利に自信を深めた地球人類はさらに軍備増強を押しすすめ、統合軍の影響力は多大なものとなった。才ある者は統合軍人を目指し、社会は軍国主義の様相を強めていった。
だが、軍の栄光は十年で終わりを告げることになる。
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