第13話

不思議な人




そう思った。






青年は灰色の雲が広がる空を見つめ、そしてふと呟いた






「サツキ……」




──────その言葉に、私の心の臓が鈍い音を立てた






「……え?」





掠れた声が、唇から零れ。



私の声に、彼はまた薄く笑った。





「いや、なんか雪を見てると、この言葉を呟きたくなるんだ」


「……サツキ、ですか?」


「うん。どういう意味なのか分からないけど。よく夢で見てね」


「……夢?」


「そう、夢。その夢の中で、僕はなぜか

『サツキ……サツキ……』って呼んでるんだ」


「呼ぶって……誰かの名前ですか?」


「多分、そうだと思う」

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