第5話 ブラック企業!株式会社マンヒルテックを倒せ!

【登場人物】


【社獣ハンター メンバー】

チャップ:

姓名は不明だが、退治すべき対象を持ち込む。政府の裏の組織の一員らしい。彼はいつも黒いロングコートを羽織り、冷静な表情で情報を提供する。


堀部映理(ほりべ えり):

社獣ハンターのメンバーで、格闘技の天才。黒髪ショートカットが特徴で、引き締まった筋肉質な体型を持つ。鋭い目つきと端正な顔立ちがクールな印象を与えるが、仲間には意外と面倒見が良い。彼女の『必殺飛燕真空回し蹴り』は数多の悪人を沈めてきた伝説の技。オフィス内でも筋トレを欠かさず、ストイックに身体を鍛えている。スーツを着ていてもアスリートのような動きができ、任務中は冷静かつ迅速に敵を制圧する。


藤堂葵奈(とうどう あいな)

社獣ハンターのアシスタント。冷静沈着に見えるが、極度の緊張や予想外の事態に直面すると嘔吐してしまう体質を持つ。情報収集や潜入工作に長け、敵の会社に忍び込み証拠を探し出すスキルを持つプロフェッショナル。慎重かつ計画的に行動するが、不測の事態には動揺しがち。任務の成功率は高いものの、常に胃薬とミントキャンディを手放せない。


AI先生:

人ではない、社獣ハンターに確実な情報を伝える。オフィス中央に設置されたモニターに映し出される、クリーンなインターフェースが彼の顔ともいえる。


チャプンド:

情報工学専門で、盗聴や盗撮を一手に扱い堀部映理たちを援護する。彼のデスクはモニターと機材で埋め尽くされており、常に最新の情報を解析している。


【マンヒルテック関係者】


蛭田満一(ひるた まんいち):マンヒルテック社社長、IT業務の派遣社員を斡旋する会社


竹内一豊(たけうち かずとよ):マンヒルテック社の社員で自殺を考えるが堀部映理に助けられる。


伊藤司(いとう つかさ):あだ名は「頭てっぺん禿鷹」労働基準監督署署長でブラック企業と癒着している。


【橋の上の若者】


橋の上には、冷たい夜風が吹き抜けていた。JR線が走る鉄橋の上、古びたコンクリートの欄干はひんやりとしており、ところどころに錆びついた金属の手すりが取り付けられている。遠くの街灯がぼんやりとオレンジ色の光を投げかけていたが、それでも橋の上は薄暗く、静寂が支配していた。


下を見下ろせば、線路が闇の中へとまっすぐに伸びている。電車が通る気配はなく、夜の空気は張り詰めるような静けさを帯びている。時折、遠くで車のエンジン音が響くが、それもここまで届くことはなく、まるで世界から切り離されたような感覚が漂っていた。


若者は、欄干に足をかけ、手すりを強く握りしめていた。その指先は白くこわばり、体重を預ける一歩手前だった。スニーカーのつま先はわずかに宙へとはみ出し、力の加減ひとつで、今にも向こう側へ傾いてしまいそうだった。


静寂を破るように、背後から駆け寄る足音が響いた。固いコンクリートを叩く力強い足音が、迷いなく若者へと迫る。


「何やってるの! やめなさい!」


鋭い声が夜の闇を切り裂いた。


銭湯帰りの夜、社獣ハンターの堀部映理が、風を切って走り込んできた。


驚いた若者は、一瞬体をこわばらせたが、次の瞬間、堰を切ったように涙を流し、震える声で訴えた。


「もう……もう疲れたんです……生きるのがつらいんです……」


映理は迷わず一歩を踏み出し、強く彼を抱きしめた。


「話して。何があったの?」


【社獣ハンター オフィス】


社獣ハンター事務所のソファに座り、若者は深く息を吐いた。震えていた手が次第に落ち着きを取り戻し、静かに語り始める。


「僕は竹内一豊(たけうち かずとよ)といいます。コンピュータシステムの受託開発とIT業務の派遣を行う会社『株式会社マンヒルテック』の社員でした。」


竹内は、マンヒルテック社が請け負っていた運行制御システムの開発業務に従事していた。しかし、その労働環境は過酷を極めていた。


「一ヶ月の労働時間は350時間から500時間……毎日終電で帰れるかどうかの生活でした。」


彼の心身は次第に限界を迎え、ついに心療内科を受診。結果は「不眠症、うつ状態」「遷延性うつ反応」という診断だった。


しかし、マンヒルテック社は彼を休職扱いとし、休職期間が三ヶ月を超えたことを理由に、一方的に退職処分を下した。


「その後、生活保護を申請しましたが……日本人という理由だけで門前払いされました。」


竹内は、所持金も尽き、コンテナルームを借りて生活することに。昼は就職活動、夜は冷たい空間で眠る日々。しかし、希望は見えず、絶望の果てに自殺を考えたのだった。


映理は腕を組み、鋭い目つきで竹内の言葉を噛み締めるように聞いていた。そして、静かに頷いた。


「よく話してくれたわ……このブラック企業、叩き潰すわよ。」


【株式会社マンヒルテック】


マンヒルテック社の社長、蛭田満一は、身長1.8メートル、体重100キロの巨漢だった。髪は薄くなっていたが、黒々と染め上げ、発毛に異様な執着を見せている。ワイシャツの袖には高級カフス、貴族院大学OBのネクタイピンを着け、見た目だけは一流のビジネスマンのように装っていた。


午前10時、彼が出社すると、エレベーター前で総務部長が出迎え、最上階の社長室へと案内する。


社長室の扉が閉まると、蛭田はデスクにどっしりと腰を下ろし、書類の束を無造作に放り投げた。そこには、業務過多に耐えきれず退職した社員たちの退職願いと診断書が綴じられていた。


「また何人か辞めたか。お前、次の人材は用意してるんだろうな?」


総務部長が低頭しながら答える。


「は、はい……新卒と派遣を補充する予定で——」


「バカか、お前は?」


蛭田は舌打ちを打ち、手元の鋭利なペーパーナイフを握りしめた。


「今どきの若い奴らは、すぐ『辞めます』だの『体調が悪い』だのと泣き言を抜かしやがる。お前、社員が潰れる前に使い尽くせって、いつも言ってるだろ?」


ペーパーナイフの先端が、無造作にデスクの木目を抉る。


「新しい人材を手配するより、残ってる連中に辞められないようにするほうがコストがかからん。わかるか?」


総務部長の額に冷や汗が滲む。


「も、もちろんです……ですが、あまりに辞める人が増えると——」


「どうせ潰れるなら、最後の一滴まで絞り尽くしてやれって話だよ。」


蛭田は冷笑し、手元の診断書を指で弾いた。


「この竹内って奴、まだ生きてるんだろ?」


「は、はい。ですが、社内ではすでに——」


「じゃあ、死ぬまで追い詰めろ。どこに逃げても無駄だって思わせるんだよ。」


彼はデスクの引き出しを開け、一枚の名刺を取り出す。それは悪徳な探偵事務所のものだった。


「念のため、こっちにも動いてもらうか。使えるもんは何でも使え。」


部屋の空気が凍りつく。


しかし、この男の手は社内だけでなく、労働基準監督署にまで及んでいた。


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午後六時過ぎ、社長室の扉が開き、一人の男が入ってきた。


労働基準監督署の伊藤司(いとう つかさ)。

五十代半ば、労基署の監督官でありながら、実態は蛭田の犬だった。


「どうだ、最近の動きは?」


蛭田は、余裕の笑みを浮かべながらソファへと身を預ける。


「いやあ、最近はまた面倒な訴えが増えてきてねぇ。例の竹内って奴、社労士経由で労基に相談してたみたいだぞ。」


伊藤は苦笑しながら、テーブルに置かれた高級ウイスキーのグラスを手に取る。


「まぁ、心配するな。俺が適当に処理しといた。」


「ふん、頼りになるねぇ。」


蛭田はニヤリと笑うと、机の引き出しから分厚い封筒を取り出し、テーブルの上に滑らせた。


伊藤は無言でそれを取り、スーツの内ポケットへ収める。


「いつも通り、頼むぜ。もし何かあったら、そっちで握り潰してくれや。」


「安心しろよ。どうせ労基なんて、動かなきゃ意味がない組織なんだからな。」


伊藤は薄く笑い、ウイスキーを一口飲むと、ゆっくりと立ち上がった。


「じゃ、俺はそろそろ帰るわ。竹内みたいな馬鹿が何いってきても、こっちは知らんぷりしとくからよ。」


「助かるねぇ。まぁ、これからもいい付き合いをしようや。」


蛭田は大きな体を揺らしながら立ち上がり、伊藤の肩を軽く叩いた。


労働基準監督署——働く者の最後の砦であるはずの組織が、こうして金と権力の前に跪いていた。


【夜の豪遊】


東京の繁華街、煌びやかなネオンが輝く高級クラブ「ルミナス」。ガラス張りの外観からは、金と欲にまみれた男たちがシャンパンを傾け、美女たちが甘い笑顔を浮かべる光景が見える。


クラブの奥、最もVIPなプライベートルームのソファにどっしりと腰を下ろす巨漢の男——蛭田満一(ひるた・しんいち)。


「お前ら、どんどん飲めよ! いい女に囲まれてんのに、ケチケチすんな!」


蛭田がグラスを掲げ、豪快に笑うと、取り巻きの男たちも迎合するように「社長、流石っすね!」とおべっかを使いながら酒を煽った。


テーブルの上には、何本もの高級シャンパンのボトルが並び、半裸に近いドレスをまとったラウンジ嬢たちが蛭田にすり寄る。


「社長、飲みすぎじゃない?」


甘ったるい声で囁くのは、凛奈(りんな)。クラブ「ルミナス」の人気ホステスのひとりで、整った顔立ちと艷やかな黒髪が特徴の美女だった。


蛭田はニヤリと笑い、凛奈の顎を乱暴に掴む。


「バカ言え、オレは仕事も遊びも本気だ。酒がねえと、女も楽しめねぇからな!」


凛奈は作り笑いを浮かべながら、「社長、ほんとに強いのね」とグラスを差し出す。


蛭田はそれを一気に飲み干し、ベタつく手で凛奈の太ももを撫でた。


「お前……なかなか気に入ったぞ。オレと今夜、一緒に遊ばねぇか?」


凛奈の表情が一瞬固まる。彼女は夜の世界のプロだったが、蛭田のような力と金を振りかざす男には、本能的な警戒心を抱く。


しかし、ここで「嫌です」と言えば、彼の機嫌を損ねることは明白だった。


「もぉ、社長ったら大胆なんだから……どうしよっかなぁ?」


凛奈は上手くかわそうと、曖昧な笑みを浮かべる。


だが、蛭田は逃がさなかった。


「なぁ、凛奈ちゃんよ。オレは気に入った女には、たっぷりご褒美をやる主義だぜ?」


ポケットから無造作に取り出された札束が、テーブルの上にドサリと落とされる。分厚い帯付きの一束、百万円。


「な? 今夜はオレに甘えろよ。」


金がすべて——蛭田の世界では、女の意思など関係ない。


凛奈は静かにグラスを持ち上げ、一口飲んだ後、ゆっくりと立ち上がった。


「社長がそう言うなら……。」


彼女の目は笑っていない。


しかし、蛭田にとってそれはどうでもよかった。


彼は勝者だった。金を持ち、権力を持ち、欲望を満たすためのあらゆる手段を手にしている。


「よし、いい子だ。」


満足げに頷くと、蛭田は立ち上がり、凛奈の腰を乱暴に引き寄せた。


「じゃあ、行くぞ。たっぷり可愛がってやる。」


クラブのオーナーとホステスたちは、見て見ぬふりをする。


この街の夜は、欲望に支配されていた。


【社獣ハンター、動く!】


堀部映理は竹内の話を聞き終え、静かに立ち上がった。


「こんな企業、許せない……社獣ハンターとして、このブラック企業を狩るわ!」


その目には、確固たる決意が宿っていた——。


【社長室】


重厚な木製の扉をノックする音が響いた。


「失礼します。おコーヒーをお持ちしました。」


スーツ姿の藤堂葵奈が、トレーにコーヒーカップを載せて静かに社長室へ入る。


デスクの向こうでふんぞり返るのは、巨体を椅子に預けたまま胡乱な目つきで葵奈を見下ろす蛭田満一。


「見かけない顔だね。新人かい?」


蛭田の声には、不快なほどのねっとりとした響きがあった。


「はい。」


葵奈は無駄な感情を表に出さず、平静を装って答えた。


だが、蛭田の目は獲物を品定めするように、彼女をじろじろと舐め回す。


「つまらんな……地味な顔だ。まあいい、楽しませてもらおうか。」


心の中で呟くと、彼は椅子をギシギシと軋ませながら立ち上がった。


「君、俺の肩を軽く揉んでくれないか? どうも最近、疲れててね。」


葵奈は表情を変えず、静かに歩み寄る。


その瞬間——


バシンッ!


強烈な衝撃が頬を襲った。


何が起きたのか、一瞬理解できなかった。だが、次の瞬間、焼けるような痛みが頬に広がる。


蛭田の巨大な掌が、容赦なく葵奈の頬を叩いていたのだ。


「どうした? 新人教育ってのは、まず礼儀からだろう?」


満足げに笑う蛭田。


「……っ!」


葵奈の視界が揺れる。唇の端から、じわりと血の味が滲んだ。


「おいおい、大げさな反応するなよ。まだ軽めにやったんだぜ?」


蛭田はにやにやと笑いながら、今度は葵奈の肩をがっしりと掴み、ぐいっと引き寄せる。


「いいか、これからは俺の言うことは絶対だ。理解できたら、もう一杯コーヒーを持ってこい。」


葵奈の手が震える。だが、彼女は反撃の機をうかがうように、静かに視線を上げた。


「……承知しました。」


小さく呟くと、葵奈は社長室を出た。


その背中を見送りながら、蛭田は鼻を鳴らし、中国製の安物の革靴を乱暴に床に打ちつけた。


「使えねぇ女だな。まあいい、夜の楽しみの前に少し暴れたくなってきたぜ……。」


蛭田は社長室を後にし、お気に入りの習志野交尾会へと向かった。


【社獣ハンターの潜入作戦】


堀部映理は、マンヒルテック社の悪行を白日の下にさらすべく、藤堂葵奈とともに社内潜入作戦を決行した。


藤堂葵奈は、蛭田のパワハラにも耐え、屈服したふりをすることで、社長室に出入りできる「信頼」を勝ち取った。一方、堀部映理は竹内の協力を得て、社内システムにアクセスできる手はずを整えた。


次第に、ブラック企業の暗部が明らかになりつつあった——。


【蛭田のパワハラ現場】


堀部映理は、マンヒルテック社で派遣されている社員たちが強制されている異常な労働環境の実態を突き止めた。中でも、蛭田が派遣先の社員に対して行う執拗ないじめは、常軌を逸していた。


深夜3時、LINEの通知音が鳴る。


派遣社員A:「……まただ……」


震える指でスマホを手に取る。そこには蛭田からの脅迫めいたメッセージが並んでいた。


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蛭田:「起きてるか?3分以内に返信しろ。寝ていたらただじゃ済まさん。」


社員Aは目をこすりながら「起きています」と返信する。


3分後、再び通知音が響く。


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蛭田:「俺のメッセージを無視するな。次は30秒以内に返信しろ。」


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このやりとりは、夜通し続けられた。派遣社員たちは1日18時間労働を強いられた上、睡眠時間まで奪われ、精神的に追い詰められていた。


しかし、LINEでのハラスメントはまだ序章にすぎなかった。


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【蛭田の異常ないじめ】


■ 「残業は愛社精神の証」


蛭田は社員が定時で帰ろうとすると、わざと大声で呼び止めた。


「お前、会社に対する忠誠心が足りねぇんじゃねぇのか?」


そして、わざと終業5分前に大量の業務を振り、深夜まで残業させるのが常だった。


「定時で帰る奴はクズだよなぁ? お前はクズか?」


問答無用で机に書類の山を叩きつける。


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■ 「精神を壊す指導」


ある社員が疲労のあまりミスをすると、蛭田はわざと全社員が集まる朝礼の場で吊し上げた。


「こいつはダメな奴です! 今日からあだ名は『ポンコツ』な!」


「こいつは太っているから! 今日からあだ名は『ブタバラ』な!」


全員の前で名前を呼ばれ、恥をかかされた社員は、屈辱に震えながら俯くしかなかった。


「なぁ、ポンコツ、お前の親はどんな顔してんだ? こんなポンコツを生んだんだから、さぞかし残念な家系なんだろうなぁ?」


周囲の社員は皆、目を伏せた。反論すれば、次は自分がターゲットになる。


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■ 「地獄のランチタイム」


社員が弁当を食べようとすると、突然、蛭田がその弁当を奪い取ってゴミ箱に叩き込んだ。


「お前みたいな無能が飯食ってる暇なんてあるのか? 俺が許可した奴だけが飯を食えるんだよ。」


飢えた社員たちは、昼休みすら取れず、目を血走らせながら仕事を続けるしかなかった。


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■ 「服従の儀式」


蛭田は新入社員に対して、異常な儀式を強要した。


「お前ら、俺の靴を舐めろよ。社会に出たらな、上司の靴を舐めるぐらいの覚悟が必要なんだよ。」


新卒社員がためらうと、蛭田は机の上に置かれた熱湯の入った紙コップを、突然その手に押し付けた。


「この程度の熱さにも耐えられないで、社会人が務まるか?」


皮膚が赤く腫れ、社員は歯を食いしばりながら耐えた。


「よしよし、いい根性だ。じゃあ、次は靴を舐めろ。」


誰も逆らえなかった。


---


堀部映理は、メンバーのチャプンドを通じてこのLINEのやり取りを傍受。派遣社員たちの証言を集め、SNSで拡散する計画を立てた。


「この蛭田、絶対に許さない——。」


堀部映理の拳が、怒りに震えていた。


【社長室でのUSB捜索】


一方、蛭田が習志野交尾会で欲望を貪っている間、藤堂葵奈は社長室へと静かに侵入した。


彼女は慎重に室内を見回し、机の上に指紋が残らないよう手袋をはめる。今回の目的は、マンヒルテック社の違法行為を裏付ける決定的な証拠を見つけること。


まず、机の引き出しを一つずつ開けて調べる。帳簿や契約書の束が並んでいたが、どれも偽装されたものだとわかる。本当に重要なものは別の場所に隠されているはずだった。


次に、金庫に目を向ける。


蛭田が普段、コードを入力する様子を監視していた藤堂は、試しに候補となる数字を入力する。


「……開いた。」


金庫の扉がわずかに軋みを立てながら開いた。そこには、大量の札束、裏帳簿、そして一つのUSBメモリが収められていた。


藤堂は素早くUSBを取り出し、ノートパソコンに接続する。


画面に映し出されたフォルダを開き、その中に保存されていたメールのログを確認すると——


送信者:労働基準監督署 署長・伊藤司

受信者:蛭田満一


伊藤司:「次の監査も形だけで終わらせてくれ。報酬は先月と同額でいいな?」


蛭田:「了解だ。例の社員たちは全員黙らせている。心配するな。」


「……これだ。」


藤堂葵奈は思わず息をのんだ。


USBメモリには、マンヒルテック社と労働基準監督署の癒着を証明する決定的な証拠が収められていた。


これが公になれば、違法労働の隠蔽、監督署の腐敗、そして蛭田の権力の終焉を引き起こすことになる。


藤堂は、手早くUSBを抜き取り、密かに持ち込んでいたバックアップ用のメディアにコピーを取る。


「これさえ持ち帰れば、奴の全てを暴ける。」


彼女は冷静に金庫を閉じ、すべて元の状態に戻した後、静かに社長室を後にした。


戦いの舞台は、次のステージへと移る——。


【偽善者の顔】


マンヒルテック社の社長、蛭田満一。


ブラック企業の権化のようなこの男には、もうひとつの顔があった。


それは、左翼系YouTuber「政府の闇を暴く」の運営者としての姿である。


YouTube上では、彼はスーツ姿に黒縁のメガネをかけ、知的な雰囲気を醸し出しながら、まるで社会正義の代弁者のように振る舞っていた。


「皆さん、こんにちは。今日もこの腐敗した政府の闇を暴いていきます!」


彼のチャンネルは、「労働者の権利を守れ!」「ブラック企業を許すな!」「消費税は庶民を苦しめるだけ!」といったスローガンを掲げ、数万人の登録者を抱える人気チャンネルへと成長していた。


動画のサムネイルには、「奴隷労働の実態!」「これは現代の封建制度だ!」「税金の搾取を許すな!」といった刺激的な言葉が並ぶ。


彼は動画内で、まるで自らが正義の戦士であるかのように、拳を振り上げ、熱く語る。


「政府は財界と結託し、労働者を搾取している! なぜ、労働者が毎日必死に働いても生活が楽にならないのか!? それは、この国の構造が支配階級によって作られているからだ!」


視聴者のコメント欄には、「蛭田さん、いつもありがとうございます!」「本当にその通りです!」「日本は一度、革命が必要だ!」と賛同の声が並ぶ。


蛭田は、そんなコメントを見ながら満足げに笑う。


—— 彼にとって、この活動はただの「商売」だった。


YouTubeの広告収益、スポンサー企業からの支援、さらには「政府の腐敗を暴く講演会」などのイベントでの出演料。


チャンネルの成功によって、彼の懐には年間数千万円が転がり込んでいた。


「バカな奴らだ。お前らを搾取してるのは俺みたいな人間だってことに、いつ気づくんだ?」


しかし、彼の本性を知る者はいなかった。


彼は、YouTubeでは「庶民の味方」を装いながら、裏では社員を1日18時間働かせ、給料をピンハネし、退職者を恫喝し、労働基準監督署と癒着して告発を揉み消す。


「労働者の権利? 笑わせるなよ。搾取される奴が悪いんだ。」


それが、蛭田の本音だった。


彼の声が、カメラ越しに視聴者へと響く。


「私たちは、資本家の奴隷ではない! 立ち上がろう! 私は、皆さんの味方です!」


数万の視聴者が拍手を送り、彼の言葉に熱狂する。


—— だが、その裏で、彼の会社では今日も誰かが地獄を見ていた。


【SNSでの暴露】


堀部映理は、USBメモリの中のデータ、社員たちの証言、そして蛭田のLINEによるパワハラの記録を精査し、決定的な証拠を整理した。


そして、その全てを暴くために、SNS上での告発を決行した。


📢 投稿タイトル:


「#マンヒルテック社の闇を暴く #ブラック企業 #労基もグル」


📢 投稿内容:


「これがマンヒルテック社の実態です。


✅ 社員に1日18時間労働を強制

✅ 深夜3時のLINEで起床確認、3分以内に返信しなければ制裁

✅ 労働基準監督署の署長と癒着し、違法監査を回避

✅ 証拠隠滅を図るため、退職者には脅迫・監視を実行

✅ 社長・蛭田満一によるパワハラ・暴力・セクハラの数々


👁 これが証拠です 👁


📌 蛭田によるLINEスクリーンショット

📌 労働基準監督署・伊藤司との癒着メール(贈賄のやり取りを含む)

📌 社員たちの音声証言:「昼飯すら食わせてもらえない」「寝る時間がない」「上司から暴力を受けた」

📌 藤堂葵奈が録画した蛭田の暴言・セクハラ行為映像(※閲覧注意)


💥 こんな企業が許されるのか!? 拡散希望! 💥


#ブラック企業 #マンヒルテックを許すな #労基も腐敗 #社長は犯罪者 #労働者の権利を守れ


この投稿は瞬く間に拡散された。


ニュースサイト、大手YouTuber、労働問題に関心のあるアカウントが次々とこの情報を取り上げ、SNS上は炎上状態に突入。


🚀 ハッシュタグ「#マンヒルテック社の闇」はわずか1時間でトレンド1位に。

🚀 「#労基もグル」も続けて急上昇トレンド入り。


「うちの会社よりヤバい……」

「労基と結託してるのがやばすぎる。もう終わりだろこの社長」

「マジで許せない! 蛭田は逮捕されるべき!」

「この人があのYouTuber蛭田!? 言ってることとやってることが真逆じゃねぇか!」


怒りのコメントが殺到し、企業の公式サイトにはアクセスが集中しすぎてサーバーダウン。


さらに、テレビのニュース番組がこの問題を報じ始め、実名報道へと発展。


その夜、Twitterのトレンドは、


「#マンヒルテック社の闇」

「#蛭田満一の嘘」

「#労基は機能しているのか?」


で埋め尽くされた。


—— ついに、蛭田の偽善の仮面が剥がされる時が来た。


【蛭田、完全崩壊】


マンヒルテック社の違法労働、労基との癒着、そして社長・蛭田満一の数々の悪行がSNS上で拡散され、社会を揺るがす大問題へと発展していた。


しかし——


蛭田は最後の悪あがきを試みた。


---


📢「政府の闇を暴く」緊急生配信


「皆さん、聞いてください!!」


蛭田は、焦燥感を隠しながらも必死にカメラの前に立った。


「今、ネット上で私についてデマが拡散されています!」


いつもは落ち着いた口調で政府批判を繰り広げる彼だが、今日の配信ではその余裕は微塵もない。


「これは陰謀です! 私を陥れようとする連中の仕業です! 私は労働者の味方として活動してきた! それを妨害するために、こんな捏造が行われているんです!」


画面の向こうで、彼は叫ぶ。


「私を信じてください!! これはすべて、でっちあげなんです!!!」


しかし——


次の瞬間、異変が起きた。


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📢 画面ジャック、社獣ハンターの反撃


配信画面が突然ノイズに包まれた。


「……え?」


蛭田の顔が引きつる。


画面に、突如として不気味なエラーコードが流れ出す。


【SYSTEM HIJACKED】(システム乗っ取り完了)


そして、暗闇の中から一つの影が現れる。


「よう、蛭田さん。ご無沙汰してるぜ。」


—— チャプンド。


社獣ハンターの天才ハッカーである彼が、蛭田のYouTubeチャンネルを完全に掌握したのだ。


「お前の言い訳なんか、もう通用しねぇよ。せっかく『でっちあげ』とか言ってるんだ。だったら、本物の証拠をお見せしてやるぜ。」


ピッ——


画面が切り替わる。


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📢 証拠映像①:社員虐待の瞬間


社内の防犯カメラの映像が流れ始めた。


「お前、会社に対する忠誠心が足りねぇんじゃねぇのか?」


派遣社員を怒鳴りつけ、書類を叩きつける蛭田の姿。


「おい、ポンコツ! てめぇの親はどんなクズなんだ?」


社員の顔は絶望に歪み、周囲の社員は震えながら目を伏せる。


映像は次々と切り替わり、食事を奪われる社員、深夜にLINEで監視される社員、熱湯を手に押し付けられる社員の姿が克明に映し出されていた。


「これは……違う……!」


蛭田の顔が青ざめる。


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📢 証拠映像②:労基との癒着、伊藤司の会話


次の瞬間、画面には蛭田と労働基準監督署 署長・伊藤司が密談している映像が流れた。


「次の監査も形だけで終わらせてくれ。報酬は先月と同額でいいな?」


画面の中の伊藤は、ソファに深く座り、ウイスキーを傾けながら言った。


それに対し、蛭田は薄笑いを浮かべながら頷く。


「了解だ。例の社員たちは全員黙らせている。心配するな。」


「さすがだ。お前とは長い付き合いだからな。まぁ、俺も仕事を続けるためには、こういう"対応"が必要なんだよ。」


伊藤が満足げに封筒を受け取る映像が流れる。


「こ、これは……」


蛭田の顔が真っ青になる。


「違う!! こんなの、プライベートな話だ!!」


しかし、コメント欄は怒りの声で埋め尽くされていた。


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📢 証拠映像③:夜の豪遊 & 習志野交尾会での蛭田


次に流れたのは、高級クラブ「ルミナス」で酒に溺れる蛭田の姿だった。


「お前、今夜は俺と遊ぼうぜ? 100万ぐらい、すぐ出せるぞ?」


札束を乱暴に投げつけ、ホステスを無理やり引き寄せる姿。


「女ってのは、カネで動くんだよ。なぁ?」


笑い声とともに、彼がどれだけの金を無駄に使ってきたのかが全世界に向けて暴露される。


さらに、次の映像では習志野交尾会のVIPルームの中——


「おい、お前、もう逃げられねぇぞ?」


無理やり女性を押し倒し、暴力的に扱う蛭田。


「社長、ダメです……」


「うるせぇ。お前は俺のモンだろうが!」


もはや言い逃れできるはずもない。


蛭田は震え、額から滝のような汗を流しながら、画面を見つめていた。


「これは……これは……違う……!」


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【信用の失墜】


蛭田は、呆然と座り込んだ。


「……違う……俺は……悪くない……!」


しかし、もう誰も彼の言葉を聞いてはいなかった。


🚨 通報が殺到し、YouTubeのアカウントはBAN。

🚨 マンヒルテック社のスポンサー企業も次々と契約を打ち切り。

🚨 警察が動き始め、労働基準監督署の伊藤司も捜査対象に。


チャプンドの声が、画面の向こうから静かに響いた。


「お前の偽善の仮面、剥がしてやったぜ。」


蛭田の世界が、音を立てて崩れていった——。



【マンヒルテック社の崩壊】


SNSでの暴露が瞬く間に拡散し、メディアも次々と取り上げる中、マンヒルテック社はかつてない危機に直面していた。


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📢 労働基準監督署の動き


「これは見過ごせない問題だ」


最初に動いたのは、労働基準監督署の本庁だった。


ネット上での大炎上、そして全国ニュースでの報道により、労基本庁はマンヒルテック社の違法労働の実態を無視できなくなった。


「……すぐに監査を行え。」


本庁の指示を受け、緊急査察がマンヒルテック社に入った。


監査の過程で、違法な長時間労働の証拠、賃金未払い、そして違法労働契約の書類が次々と発見される。


さらに、伊藤司の賄賂受領の証拠メールが決定打となり、彼は職務怠慢と贈収賄の疑いで取り調べを受けることとなった。


結果、伊藤司は解任。


そして、刑事告訴へと発展した。


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📢 取引先の契約解除


一方、マンヒルテック社の取引先は、次々と契約解除を発表した。


「弊社はブラック企業とは一切関係を持たない。」

「社会的責任を果たすため、マンヒルテック社との契約を解消いたします。」


次々と発表されるプレスリリース。


特に、大手クライアントが撤退したことで、マンヒルテック社の収益は一気に激減。


社内では、営業部の社員たちが電話応対に追われ、阿鼻叫喚の状態となっていた。


「おい! A社も契約解除だぞ!」

「こっちもだ! もうどうにもならねぇ!」


取引停止の連絡が止まらない。


ついに、主要なスポンサー企業や銀行からも融資の凍結を言い渡され、マンヒルテック社の財務状況は破綻寸前に追い込まれた。


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📢 社内のパニック


当然、社内も大混乱に陥った。


一斉退職の連鎖が始まり、社員たちは我先にと会社を去っていく。


「こんな会社、もうダメだ!」

「俺も辞める! こんなところにいたら人生終わる!」


辞表の山が総務部に積み上がる。


一方で、残された社員たちは絶望していた。


「おい、給料はどうなるんだよ!? 俺たち、もう金もらえないんじゃないか!?」

「社長はどこだ!? どう責任取るつもりだよ!」


誰も答えられなかった。


---


📢 そして、蛭田満一の逮捕


ついに、警察は蛭田満一の身柄を確保するため、早朝の自宅へと突入した。


🚨 「蛭田満一、業務上横領・暴行・強要・贈収賄の疑いで逮捕する!」


「ふざけるな!! 俺は労働者の味方だ!! 陰謀だ!!!」


警察に連行されながらも、蛭田は最後まで醜くわめき散らしていた。


しかし、もう誰も彼の言葉に耳を貸す者はいなかった。


彼のYouTubeチャンネルは永久BANされ、広告収益も全凍結。


SNS上では、「#蛭田逮捕」「#ブラック社長の末路」といったタグがトレンド入りし、彼の社会的信用は完全に崩壊した。


---


📢 会社の最期


こうして、


主要取引先の契約解除

融資凍結

社員の大量退職

社長の逮捕


これらの影響が重なり、ついに——


📢 マンヒルテック社は、倒産を発表。


破産申請が受理され、会社の資産はすべて債権者によって差し押さえられた。


一世を風靡した大企業は、こうして一夜にして崩れ去ったのだった——。


【竹内の新たな未来】


マンヒルテック社の崩壊とともに、地獄のような日々は終わった。


竹内一豊は、堀部映理のサポートを受け、新しい職場に就職することができた。


そこは適切な労働時間と健全な職場環境が整っており、竹内は少しずつ心を癒しながら、再び前を向いて歩き始めていた。


ある日の仕事終わり、竹内は堀部映理と藤堂葵奈に深々と頭を下げた。


竹内:「飯山さん、本当にありがとうございました」


堀部映理は腕を組みながら、少し微笑む。


堀部映理:「気にしないで。それが私たち、社獣ハンターの役目だから」


藤堂葵奈も優しく頷く。


藤堂葵奈:「これからは、自分の人生を大切にしてくださいね。」


竹内の目に光るものが浮かんだ。


彼は新しい人生を踏み出す決意を胸に、彼女たちに最後の感謝を伝えた。


「ありがとうございました!」


静かな夜風が、彼の背中を押していた——。


【エピローグ】


マンヒルテック社の崩壊とともに、一つの戦いは幕を下ろした。


しかし——


ブラック企業は、一つ潰してもまた次が現れる。


堀部映理と藤堂葵奈は、新たな依頼を受け、次なる標的へと動き出していた。


「次は、どこを狩る?」


堀部映理は、スマホを取り出し、画面に映るAIアシスタントに話しかける。


そこには、「AI先生」と呼ばれるプログラムが起動していた。


📱 AI先生:「新たなターゲットを分析中……。」


画面には、次のブラック企業の情報、内部告発、従業員の証言、そして怪しい金の流れが瞬時にまとめられていく。


「これは……なかなか大物ね。」


堀部映理は、興味深そうに画面を眺める。


「まだまだ、狩るべき獣はたくさんいるわね。」


飯山の言葉に、藤堂葵奈は微笑む。


「次の標的も楽しみ!」


📱 AI先生:「ターゲットの詳細を送信しました。作戦を開始しますか?」


「もちろん。準備は整ったわ。」


二人は、夜の街へと歩き出す。


その背中は、闇の中でも確かな光を放っていた。


社獣ハンターの戦いに、終わりはない——。

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