第46話 繁華街の懲りない面々
同じく繁華街に放り出された3人は、才が警官に絡まれていた時間を利用して、現場からの離脱を図る。
ここでマズいのは、才と同じくベルトにホルスターがある、マリナとケンイチ。
発砲の有無にかかわらず、実弾を装填した拳銃がある。
しかし、もう1人のメティスも、外国人の小学生に見えることからパスポートか在留カードの提示を求められるだろう。
少なくとも、警察は身柄を確保したうえで、保護者を探す。
拳銃がないメティスは、逃げの一手。
「Take care!(上手くやって!)」
小さく叫んだメティスが、すれ違った女子グループについていく。
その言葉で、マリナは自分たちを見ている警官2人に近づいた。
ケンイチは、彼女を見捨てる形で、ビルとビルの間の路地裏に滑り込む。
すぐに走り出すのではなく、マリナが警官たちに呼び止められる場面まで見た。
(悪く思うなよ?)
心の中で呟いたケンイチは、路地裏の奥へ走る。
歩道から覗き込んでも見えない位置へ退避したら、大慌てでベルトごとホルスターと替えのマガジンを入れたホルダーを外した。
映画の見よう見まねで、指紋をぬぐう。
(本当は、持って帰りたいけどな?)
どこかの店の勝手口らしきドアの外で不法投棄されているゴミ袋に隠れるように突っ込み、心拍数が高いままで再び走り出す。
――マリナside
水鏡才を見失い、緊張した顔で周りを見ている、警官2人。
警察無線で、報告と、応援を要請しているようだ。
リピートするように、腰にホルスターがある若い女。
警官の1人が、右手を自分のホルスターから出ているグリップに添えたままで、制止する。
「そこで止まれ! ゆっくりと、両手を見せて!」
けれど、マリナは事前に出していた手帳のようなものを掲げた。
「公務です! 通してください」
警戒しながら近づいた警官の1人が、それと本人を交互に見た。
困惑したまま、訊ねる。
「高校生らしき男子が1人、我々の前からいなくなりました。あなたと同じようなホルスターを持っていたことで、事情をお伺いしたいのですが?」
「拒否します! 私は身元を明らかにしており、拳銃を携帯する権限もあります。必要でしたら、私の名前で問い合わせてください。……急いでいるので、失礼します」
筋が通っているため、警官2人はこれ以上の引き留めをできない。
「わ、分かりました……」
見るからに怪しいバッグを検査したいが、他所と揉めれば、自分の出世や進退にも関わるだろう。
ところが、警察無線で、繁華街の監視カメラによって彼女も怪しいと分かり、大慌てで追いかける。
当の本人は、職務質問をした警官2人の視界を切ってから全力で走っており、彼らが泡を食って追跡する頃には遠ざかるタクシーの中。
何とか、自分が所属している組織の拠点へ逃げ込めた。
――メティスside
パトカーのサイレンが鳴り響き、警官の姿も目立つように。
不安そうに周りを見る女子グループから、さり気なく離れた。
(私が、貧乏くじを引いた!)
監視カメラで追跡しやすかった彼女は、遠巻きの警官、あるいは私服刑事に囲まれていく。
けれど、いざ警官の1人が話しかけようとしたら、女子小学生は走り出した。
「まっ! 誰か、捕まえろ!」
叫ぶ警官に構わず、メティスは急に開かれた後部座席へ、頭から飛び込むように乗り込む。
バンッと、後部のドアが閉じられた。
血相を変えて、警官隊が取り囲むも――
「USの外ナンバーです!」
外交問題になると聞いて、取り囲んだ警官がひるむ。
「くそっ! 行かせろ! 俺たちの負けだ」
悔しそうに叫んだ、警察の指揮官。
外交官が乗る車は、勝ち誇るように、ゆっくりと動き出す。
その後部座席では、高そうなスーツを着た男が微笑む。
英語で、話しかける。
「どうでしたか?」
息を荒げているメティスは、にやりとした。
「そこそこ! 高く買ってね、オフィサー?」
「もちろん! レディに優しいのが、私の取り得ですから」
――ケンイチside
彼は、女子2人を囮にした形。
何事もなく、自分の家に帰れた。
何の変哲もないビルから出てきて、ため息をつく。
手にしているのは、薄っぺらい封筒だ。
中から紙幣を半分だけ出す。
数えてみるも――
「8万円……。俺が持ち帰ったネタは、100万ぐらいするだろ!?」
命懸けの探索を金一封で済まされたケンイチは、肩を落とす。
「でも、まあ……。命あっての物種か!」
漁ってきた現金と合わせれば、10万円を超える。
暗くなった住宅地から、繁華街の歩道へ。
(俺は今日、生まれ変わるんだ!)
歩くほどに、キリリとした表情へ。
(真面目に、コツコツと! そうさ! この10万円が、新たなスタートライン)
とある自動ドアの前で、立ち止まった。
(いざ、俺のビクトリーロードへ!)
ガーッと左右に引っ込んでいく、大きな自動ドア。
ジャララララ!
何かが大量に流れていく音。
それに負けないよう、大音量で演出成功を告げる声。
『ピロロロロ! カチ決め、ボオオォナァアアス!』
光と音の洪水の中へ、ケンイチは吸い込まれていった。
彼を逃がさないように、自動ドアが左右から閉じる。
ちょうどいい台が見つかると、いいね?
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