第34話 華やかで豪華なディナータイム♪

 ――綾ノ瀬あやのせ奈々美ななみの自宅


 無人タクシーを降りた奈々美が、家主として先導する。


「どうぞ!」


 女子ばかりの集団は、制服のままで玄関ドアへ向かう。


 その中でロリないずみ佳乃よしのは、静かな高級住宅街に立ち並ぶ戸建てを眺めた。


(普通だね? 注文住宅ばかりで、中が見えにくい構造ばかり……)


『ゲコゲコ♪』


 そちらを見ると、中庭に白いカエルがいた。


 地面でちんまりしたまま、佳乃を見上げる。


「白い……カエル?」


『ゲコゲコ♪』


 よく見れば、中庭に何匹もいる。


(注文住宅で、カエルの生息地? ここ、水場でもないのに……)


 引っかかるも、自分の名前を呼ばれた。


 息を吐いて、後ろから奈々美たちに続く。



 ◇



 俺たちは、靴を脱ぎ、スリッパで廊下を進む。


 生徒会の副会長である夢咲ゆめさきアリアから受け取った、ディナー用の総菜が入った紙袋を持ったまま、広い空間へ出た。


 リビングダイニングだ。


 アリアが、奈々美に言う。


「デパートで、テキトーに買ってきたわ! お皿やグラスを貸してくれる? あ! 水鏡すいきょうくんへのお詫びも兼ねていて、生徒会で支払いを持つから」


「ありがとうございます! キッチンは、こちらです」


 それを聞いた俺も、お礼を述べる。


「気を遣わせて、すみません……。で、夢咲先輩からは?」


 笑顔で怒ったアリアは、俺を見た。


「も――っ! だったら、私のパンツをあげようか? 脱ぎたてだよー!」


 ニヤニヤしたアリアに、笑顔の奈々美がズイッと迫る。


「先輩も、さいくんを狙っているんですか? ダメですよ? 先輩なら、他にいくらでも男子を見つけられると思います」


 キスをするぐらいの距離で、アリアが怯えた。


「いや、冗談で……。とりあえず、少し離れて?」


「はい、失礼しました」


 俺に対する返答がないまま、女子グループが準備を進めた。


「才がいると動きづらいから、待っていてくださいまし!」


 模擬戦をした俺は、水鏡アレーテに言われて、ソファで待つ。



 一口で食べられる、立食パーティーのようなケーキ、クラッカーの類い。

 大きなボウルに入れた、野菜サラダ。


 さらに、各自の大皿にメインディッシュの肉や魚と、付け合わせ。


 主食はパンだ。


 ダイニングテーブルについたアリアが、説明する。


「人数分のメインと、箸休めのアラカルトで! 好みが分からないから、肉と魚は半々にしたわ」


 俺とアレーテ、奈々美が答える。


「ありがとうございます」

「感謝申し上げます」


「ご馳走ですね! 私の好物ばかり……」


 いただきますで、全員が食べ始める。



 ――同時刻 注文住宅の外


 日が暮れて、ライトが照らす暗闇に、中腰で走る人影。


 手慣れた感じで、暗がりに屈む。


 よく見れば、目だけが出ており、顔は黒いバラクラバで隠れている。


 私服にタクティカルベストをつけており、両手にはコンパクトな小銃らしき物体。


 戸建ての外壁に一列で張りついた5人は、室内へ突入するタイミングを窺う。


「第一目標は、綾ノ瀬奈々美だ。それ以外は、相手にするな」


 残り4人が、それぞれに返事。


『ゲコゲコ♪』


 視線と共に銃口を向ければ、地面に白いカエルがいた。


 すぐに興味をなくし、外壁に張りつく――


 急に、人の気配がした。


 慌てて向けば、そこには八頭身ぐらいの白い男が立っていた。


 全身タイツのようで、つるりとした顔には何もない。


「なっ!」


 驚いた兵士は、それでもトリガーを引き――


 上から振り下ろされた拳が半円を描き、その軌道で兵士は吹っ飛んだ。


 すかさず、地面へ杭打ちをするような打ち下ろし。


 兵士の頭が砕けた。


「はっ?」

「何だ、こいつ!」

「撃て! いいから、撃て!」

「くそったれ!」


 サプレッサー付きのようで、ボボボボと低い音に、カチカチと内部の作動音が響くだけ。


 その弾幕にさらされた白い男は、衝撃でよろめきつつも、倒れない。


「囲まれているぞ!」


 誰かの叫びで、外壁に張りついている4人が手前と奥をカバーする。


 横一列に並んで腕を組んでいる白い男たちが、脱出路となる前後を塞いでいるではないか!


 2つの列は、片足を大きく上げての踏み込みで、行進のように前へ。


 兵士4人は逃げ場がなく、囲まれつつある。


「撃ちまくれ!」


 前後に2人ずつのフルオートを叩きこむも、やはり倒れない。


 じりじりと近づいてくる。


「手榴弾!」


 もはや自分たちへの被害を気にする場面ではなく、自爆覚悟の手榴弾が前後へ放物線を描いた。


 同時に、彼らは地面へ伏せようとする。


 ドオオォンッと破片が飛ぶ――


 白い男の頭が伸びて、空中の手榴弾を呑み込んだ。


 まさに、一瞬の出来事。


 ギャグシーンのように、ドオンッと白い男が膨らんだが、すぐ戻る。


 全ての手榴弾が、白い男たちの夕飯になった。


「ああぁあああああああああっ!」


 正気を失ったような兵士の叫びと共に、4人は撃ちまくる。


 四方から近づいた白い男たちは、ついに奴らと接触した。


 そして、4人の悲鳴もなくなる。


 ご馳走様でした……。

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