第16話 邪神の上位にいる眷属で囲めば、ようやく倒せるかどうか(後編)

 銃弾を食らいまくり、体の中身も見えたままで倒れた女子。


 顔の上半分を隠す仮面も銃弾に吹き飛ばされた水鏡すいきょうアレーテは、血だまりと自分の一部が散乱する場所で立ち上がる。


 逆再生をするかのように、元の姿へ戻っていく。


 服だけは戻らず、銃弾が通り抜けた穴を通して肌が見える……。


 銃やナイフを持っている男たちが、思わず後ずさった。


「ば、化け物……」

「聞いてねえぞ、こんなの!」


 SAN値チェックに失敗した奴らがパニックに陥る中で、まだ生きているリーダーが叫ぶ。


「落ち着け! ダメージは与えてんだ! 撃ちまくれば、そのうち死ぬ! こうやってな!」


 パァンッ!


 景気づけに撃てば、クリティカルなのか、素顔をさらしているアレーテの眉間に小さな穴を開ける。


 後ろにのけぞるも、途中で止まり、天井を向いていた顔が水平に戻った……。


 小さな穴は見る見るうちに閉じていき、可愛くも怒りを感じる表情だけに。


「ムダですわ……。そんな弾じゃ、どれだけ当ててもツボ押しぐらい! ハハハ!」


 口を開けて笑う姿は、銃撃で死んだ人の服だけ剥ぎ取り、小悪魔のような美少女に着せたようなミスマッチ。


 それでも、リーダーの勇姿に後押しされ、一部の奴らが銃口を向け――


 何も持っていないアレーテは、片手で1人を指差す。


 その瞬間に、伸びた人差し指に貫かれ、男は両手を下げたあとに倒れる。


 伸びた部分は黒い物体で、戻った時には普通の人さし指だ。


 たまたま目撃した男は、口が半開きに。


「なっ!?」


 ルビーのような目を輝かせたアレーテが、説明する。


「わたくしは、人間ではありません……。単純な物理攻撃で倒したければ、いずれかの神格に仕える上位の眷属で囲み、ひたすらに叩き続けなさい! それでも、殺せるかは怪しいところですが」


 アレーテが言ったことが真なら、水鏡すいきょうさいは彼女の一族を滅ぼしている。


 もはや戦意を失った若い男どもは、アレーテが振り抜いた片手による黒いブレードにより分割される。


「ひぃいいいいっ!」


 運よく生き残ったリーダーは、ドアから逃げようとするも、一瞬で追いついたアレーテに頭をつかまれた。


「質問です! あの禁書と同じものは、どこに?」


「し、知るか――」

 パンッ!


 アレーテが握っている拳銃で太ももを撃たれ、絶叫するリーダー。


「どこにありますの? 答えなさい」


 熱を持った銃口を押しつけられた肌が、ジュッと火傷した。


 ガタガタと震える、リーダー。


「お、お前が読んでいたのを別にすれば、ここを仕切っている兄貴の金庫だ! ……俺と組め! そうすりゃ、俺はクラブの支配人だし、テメエも禁書とやらを――」

 ボフッ!


 開いている口に拳銃を突っ込んだアレーテは、あっさりトリガーを引いた。


 リーダーは脳を撃たれ、どさりと崩れ落ちる。


 アレーテは、片手で持つ拳銃を床に投げ捨てた。


「才と合流しないと……。大喜びで突いていたら、邪魔しないほうがいいかも?」


 ぼやきながら、ドアを開けて内廊下へ。


 吐き気がするような血と臓物の臭いは、閉められたドアで密封される。


(さっきの奴らは、自分たちで楽しむつもりだった……)


 薄暗い廊下に見張りはおらず、繋がっているラウンジから女子の艶やかな声や笑い声。


 角で立っている黒服に、片手で自分の顔を隠しつつ、小さな声で話しかける。


「仮面をなくしました……。どこにありますか?」


 ジッと見た黒服は、ラウンジからの通路の1つを指差しつつ、同じように小声で命じる。


「あっちを進んだ先に、女用のレストルームがある。客に見られる前に、早く行け! っていうか、すげー臭いぞ?」


「ええ……。シャワーを浴びておきますわ」


 廊下より明るいラウンジの壁に沿うように小走りで、やがて入口と同じようなレストルームを見つけた。


 要望に応えるためのコスプレか、有名私立の制服もズラリとある。


 さすがに、コピーだと思われる。


 持ち主の名前はなく、貸出の手続きもなさそう。


(備品……ですわね?)


 下着やハンガーにかかっている制服を持ち、空いているシャワールームを使って血の臭いを洗い流しつつ、ボディソープなどで誤魔化す。


 改めて女子高生の姿となったアレーテは、顔の上半分を隠す仮面をつけた。


 薄暗い廊下に出て、まだ騒ぎになっていないことをチェック。


(ラウンジで女の品定めと、指名……。マスターの才も、来ているようですが)


 ともあれ、ここで棒立ちは目立ちすぎる。


 才の気配がするほうへ歩き出した。


(プレイルームは、別にあるはず)


 エレベーターの前にも、2人の黒服が立っていた。


 そのうちの1人が、アレーテを見る。


「何だ?」


「今日に初めて来た男子のお相手ですの! ここから行けます?」


 堂々と言い返したことで、その黒服は内線を使う。


「ちょっと待て! ……お疲れ様です! 今日のニューフェイスで男子はいますか? ホールのエレベーター前に、そいつの相手をするという女子が……。はい! 今から行かせますので! 失礼します!」


 手の空いている黒服が、エレベーターを呼び出す。


 内線の受話器を置いた黒服も、アレーテを見た。


「このエレベーターに乗れ! その男子がいるフロアーで開くから、そのまま降りればいい」


「助かりますわ!」


 エレベーターは、どこにでもある内装だ。


 女が移動するための専用か、広告はなく、代わりに注意事項の張り紙など。


 やがて、チーンッとお馴染みの音と共に止まり、左右の扉が引っ込む。

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