第4話 不運な人
二回目のじゃんけんで亮平に負けたことで、良樹の元には三通目の封筒が届いたが、三回目も良樹は負けた。
三回目は約三千万人に絞られた中でじゃんけん大会が行われたわけだが、そのときは電車を使い会場となる市民文化ホールまで足を運ぶ必要があった。
三回目の相手はどこかの知らない女性だった。乳飲み子を抱いてきていて、夫とともに負けてほしいと良樹は懇願された。
「「「「「じゃんけーん――」」」」」
良樹は思った。いうてまだ三回目である。一億二千万人総じゃんけんで最後の一人になるには、二十七連敗する必要があるというニュースを良樹は聴いていた。
「二十七連敗だなんて、よっぽど不運な人ですねえ」
「不運というより、もうそこまでいったら総理がいったように悪運といえるのではないでしょうか」
などとコメンテーターが語っていた。
「「「「「ぽんっ!」」」」」
良樹が自分の手を出すと、相手の女性はぱっと明るい表情に変わった。
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます……!」
夫とともに涙を流して感謝されたものの、良樹は苦笑いを返すしかなかった。
四回目は約一千五百万人に絞られ、電車を乗り継いで良樹は会場に向かった。
相手は小学生の男の子だった。母親と一緒にきていたが、この母親が初めから良樹に対して威圧的だった。
「ちょっとあんた! うちの子に勝ったらただじゃおかないからね!?」
ややヒステリック気味にそう叫び、良樹は興ざめだった。誰が負けてやるかと思ったが、男の子が怯えていて可哀想だった。
自分が勝てば次に母親はこの男の子を責めるに違いない……そう考えると負けてあげてもいいような気になった。だいたいまだ四回目である。
「「「「「ぽんっ!」」」」」
五回目は約七百五十万人にまで絞られ、四回目と同じ会場で良樹はお年寄りの男性とじゃんけんをした。
「すまんがもう少し大きな声でいうてくれんか? 最近耳が遠うなって」
立会人に向かって何度も首を傾げて訊き返している。
「いまからね!! じゃんけんをします!!」
「ああじゃんけん! じゃんけんな!」
「そうです!! 準備はいいですか!?」
「勝ったら何かもらえるんか?」
良樹はげんなりして自分の手を出した。明らかに男性の後出しじゃんけんだったものの、結果は変わらなかった。
「「「「「ぽんっ!」」」」」
六回目の相手は怖い人だった。半ば脅されるような形で良樹は負けた。
「俺……もしかして不運なのかな……」
良樹はだんだんそう思い始めた。すると負けが込むもので、次々と負けていった。
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