この物語に登場する魔女は、俗にいう「魔法」は使いません。彼女の魔法は、あらゆる世界を「旅する魔法」。行く先々で人々と関わり、見つめてきた光景が、彼女の住まう洋館の窓に映し出されているのです。主人公はひょんなことから魔女と関わることになるのですが、あるとき「旅の魔法」が持つ秘密を知ることになり……。幻想的でありながら、本当に多世界を旅しているかのような生き生きとした描写。そして登場人物達が紡ぐ、胸の内に響くあたたかさを、ぜひ体感ください。
情景描写がとても丁寧で上手で、窓から繋がる景色が本当に見えるようでワクワクしました。"優しい魔女"という実は稀有なキャラクター。喋り方も見た目もテンプレの魔女なのに、主人公のことを心から思う優しさに、自分のおばあちゃんのように大好きになりました。"魔法"という超常を日々の美しさに全振りしたとても心に残る作品でした。