貢ぎオセロ(完敗) 諸金あかね SFW

「ざっこぉ〜w はい、おじさん6000円ねw」


あかりは井田との勝負に圧勝した。オセロの石数差だけお金が手に入る簡単な遊びだ。


(はぁ〜、ラクラクw こんなんでお金稼げるなんて私サイキョーじゃんw)


昔から自分で言うのもなんだが、ゲームが得意だった。テレビゲームだけでなく、もちろんボードゲームも。学校では浮いてる自分も、ここでは輝ける。匿名の誰かと対戦して、勝って、お金を稼いで。


「あー……そうだ……ちょっと面白いこと、思いついちゃったぁ…」


あかりはニヤリと笑って、サブアカウントにログインし直す。そして井田のアカウントを探して、メッセージを送る。


『初めまして!今日からオセロ始めました☆ 対戦相手募集されてましたよね?♡よろしくお願いしますっ!』


(ふふーん、勝ったあとで正体明かして、おちょくってやるんだからw)


しかし、その思惑は最初の一手目から崩れ始めた。


「ん?」


なにか違和感があった。相手の手が、いつもと違った。そしてそれはすぐに、結果となってあかりに対峙した。


「うそ…」


盤面は白で埋め尽くされていた。あかりの、完敗であった。


(……いやいや、油断してただけだし‥‥!……そう、たまたま…たまたまよ!)


即座にリマッチを申し込む。今度は本気で。でも。


「くっ…」


さっきよりは善戦をしたものの、やはり敗北であった。ある程度やっているからこそ、分かる。その読みの深さ。洞察の鋭さ。迷いの無さに。胸の中で、さっきまでの優越感が音を立てて崩れていく。今度はリマッチを申し込めなかった。


気づくともう12時のようだ。ベッド横のポテトチップスを開ける。パリパリという音が静かな部屋に響く。でも、いつもの美味しさがない。


(あいつ、私に付き合ってただけ?舐められてた?バカにされてた?)


口の中の塩味が、いつもよりも苦く感じる。


(いや……別にその時は勝ってるし……勝敗とか気にしてないし。むしろ、いっぱい稼げてうれしいし、美味しいお菓子食べれて楽しいからいいんだけど……)


ポテトチップスを咥えたまま、スマホを見つめる。暗い部屋で青白く光る画面が、彼女の顔を照らしている。両親と喧嘩して以来、夜食を部屋で取る習慣がついていた。誰かと顔を合わせたくないから。でも今は、画面の向こうの相手とも顔を合わせたくなかった。


(……私、ずっと…勝たせてもらってただけなんだ)


今まで積み重ねてきた勝利が、急に軽く感じられる。


あかりは、ほとんど無意識に、メッセージを打ち始めた。


「ねぇ、井田。もう1回。」 送信ボタンに指がかかる。でも、これじゃいつもと一緒だ。まだ、まだ何か足りない。


「あと、今回ルール追加。」


「本気で来て。私のこと、バカにしないで。」

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