②飛行第六二戦隊通信士 松島清 伍長 証言 

 出撃三日前の五月二二日夕刻、福岡県二日市町の温泉旅館で、小野戦隊長の就任祝賀会を兼ねた特攻隊壮行会が開かれた。いつもの宴会のように盛り上がらず、空の徳利とっくりだけが増えていった。山本伍長が声を張り上げて軍歌を歌いだした。

 次の日の朝、戦隊幹部が一人もいない。女将が北飛行場で事故があったようで、幹部のみなさんは六時過ぎに旅館を出たと言った。それから二日酔いらしい様子の山本伍長を見て、

「山本伍長、ゆうべの元気はどうした?」

と、からかった。

「ご機嫌で飲みすぎたよ」

山本伍長は笑って答えた。


 みなでトラックに乗り込み、猛スピードで北飛行場へ向かった。駐機場に着くと、さくら弾機が全焼していた。

 トラックを降りた私たちが声もなく立ちつくしていると、山本伍長が急に拳を振り上げて叫びだした。

「一機一艦撃沈のさくら弾機が焼けてしまって、こんな悔しいことはない。実に残念だ!」

 燃えたさくら弾機は彼が乗るはずの四番機だった。

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