第24話
その後のことは思い出すだけでも恥ずかしい。
ふにっとした触れるだけのキスをされて、それからなし崩し的に私は今度、逆に押し倒されていた。
あかりが私の上に馬乗りになる。
未だに頬に添えられた両手は離されていなくて、ずっとずっと、ぴちゃぴちゃと恥ずかしい音が鳴り響くぐらいにキスをされる。
何度も何度も。
どちらの唾液かも分からない濡れた唇を、あかりの舌で舐められる。
そしてまた食むようなキスをされる。
あかりの唇はやわらかくて、啄むだけじゃ次第に物足りなくなってくる。
それでもあかりはとんとんとんとんと、ずっと触れるだけのキスを重ねるだけ。
頭がぼーっとする。
焦れったい。
そう思ってくる。
「ねぇ、伝わってる?さきちゃん」
ぼやけた視界にあかりが映る。
その目はとっても加虐的で卑猥な熱がこもっていて、思わず腰が跳ねた。
下腹部が疼いて仕方がない。
「ん、もしかしてさきちゃん、感じてる?」
感じ、てる?
何をだろうか。
私にも分かるように言って欲しい。
不満の意を込めて、私は手をあかりの背中に回してぎゅっと抱きしめた。
唇だけじゃない。
身体の距離もぐっと縮まる。
「んぁっ」
あかりが太ももをぐいぐいと下腹部に押し付けてきた。
ちょっと、待って、んっ。
なに、これ。
ぐりぐりしないでっ。あぅ、だめっ。
いつもみたいに、脊髄に快感が集まってくる。
奇遇にも私が妄想であかりにしてもらっていたことが、現実でも起こっている。
嬉しいはず。待ち焦がれていたはずなのに。
なんでだろう。
やめてほしくないのに、「やめて」と懇願してしまう。涙を溜めて、上目遣いで、何度も「いや」「やめて」「だめ」って。
言葉だけを繰り返す。
けれど言葉と行動は真逆で、あかりにもっともっとと腰をくねらせて、下腹部を自分から押し付けている。
「さきちゃん、えっちだ…」
「えっちじゃ、ない、もん」
「もんって、かわいいねぇさきちゃんは」
「からかわない、で」
ビクビクと身体を震わせながらキッと精一杯の痩せ我慢と共にあかりを睨む。
けれどそんな私に対してもあかりは余裕の笑みを浮かべて、終始ニマニマしていた。
「ね、さきちゃん、好きだよ」
それ、さっきも聞いた。
あかりの手が私の制服の中へと潜り込んでくる。
「このままもみくちゃになってたら、制服に皺がついちゃうね。っていう口実で、さきちゃん、脱がしてもいい?」
侵入したあかりの手が下着の上から私の胸を揉む。
むにむにと揉まれながらそんなこと言われても、ときめいたりなんか、してあげない。
「口実とか良いから。ちゃんと言葉にして」
服の上からあかりの手を掴む。
まだ私の身体を自由には触らせてあげない。
彼女の口から、彼女の思っているありのままの本心を聞かない限りは。
「そうだね。そうだった。わたしはそれを決意したばかりだった。……ねぇ、さきちゃん」
「………なに?」
「抱いてもいーい?」
「? もう抱いてる」
「あー、ちがうちがう。さきちゃん、今の抱くっていうのは――」
私は仕返しとばかりに馬乗りしているあかりの頭を胸に抱いて、その耳元に囁いた。
「――知ってる。セックスでしょ?いいよ」
「え、」
あかりの耳を舐める。
あかりが「ひゃ!?」と可愛らしい声をあげた。かわいい。
そして舐めたあとは甘噛みする。はむはむと、あかりの反応を少しの間だけ楽しむ。
そして仕上げに「ふーっ」と息を吹きかけて。
「私のこと、抱いて」
今日まで私は我慢していた。
特に発情してからと言うもの、気持ちよくなりたくて仕方がない。
セックスという行為が裸で交わり子を成すことだという認識であってるかどうかは分からないけれど。
でも私は妄想で、あかりと確かにそういうことがしたかった。
もう、我慢しなくてもいいから。
私はあかりにそう囁いた。
目を覚ましたのは十九時あたりで、二時間くらい私は疲れ果てて眠ってしまっていたらしい。
あかりのベッドの上で、自分が裸のまま横になっているという現状が、未だ事実なのに脳の理解が追いついていない。
実感が、湧かない。
隣を見ればあかりも裸で、けれど眠ってはいなくて、ずーっと私のことを見つめていた。
気恥ずかしくなる。
「な、なに?」
「さきちゃん、かわいいなぁって」
「ぶ、無愛想だよ」
「照れてるの?さきちゃん」
そういえば、『恥ずかしい』という感情は失ったはずなのに。
いつの間にか戻っている。
あれ?よくよく考えれば、他にもチラホラ、自分の中に湧き上がる感情がある。
これは、とても重大なことなのでは?
「照れ、てる」
とりあえずあかりの質問に肯定してみる。
「え?」
「あかり、私の感情、幾つか戻ったかも」
「え、えぇ!?ど、どうして!?どうやって戻したの!??」
「わかんない。いつの間にか、気づいたら」
「そ、そっかぁ。……そっか。それは、すっっっごく、嬉しいね!」
あかりが喜んでくれている。
まだ『喜び』の感情は戻ってきてないから、あかりと一緒に喜ぶことができない。
今はそれが悲しい。
けれどあかりは気にしてなかった。
ただただ泣きながら自分のことのように喜び、そして何故か私を褒めてくれた。
「でもほんとにどうしてだろうねぇ」
「わかんないけど、あかりとエッチなことしたから、だったら?」
「え、さきちゃん、それ誘ってるの?」
「………その前に、親に今日あかりの家に泊まるって連絡しないと」
「んふふ。そうだね。ねぇさきちゃん」
「なに?」
「高校卒業したら、一緒に暮らさない?」
「え?」
「わたしたち、付き合おう」
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