第77話小野田さん家の家庭事情①

「本日はありがとうございます、氷室様。」


「いえ、こちらこそお世話になります。」


俺は今マリアさんが運転するやたら高そうな車に乗せてもらい移動している。


「正輝様も氷室様が泊まりに来てくれることを大変喜んでいらっしゃいました。」


「あ、ホントですか?迷惑になっていなくて良かったです。」


何故マリアさんと二人で移動しているかというと、前日いきなり決まったのだ。

前日。


「さくや!明日は小野田君の家に泊まりに行きなさい!」


姉さんのいきなりな発言から始まった。


「どうしたの?急に。泊まるもなにも正輝に一言も聞いても言ってもいないんだが。」


「さくやちゃん、小野田君の御家族には連絡してあるから大丈夫よ?だから安心して泊まりに行って頂戴ね♪」


もう根回しされていた。


「連絡済みなのはわかったけど、いきなりどうしたの?」


「そ、それは・・・明後日ってお祭りでしょ?それで浴衣を新調したんだけど、どうせなら当日に見せたくて皆と決めたの///」


なるほど、つまり当日にお祭りで合流して初めて浴衣姿を見せたいということか!なるほど。

...いじらしく可愛いじゃないか!

ダメだ、俺こういうのに弱いわ!


「わかった。皆の浴衣姿を楽しみにしているからね♪」ニコッ


ということが昨日の朝に決まったのだった。


20分程車で移動すると、道が豪邸に囲まれている所まで来た。

正輝達が住んでいる場所は高級住宅街の自治区って聞いていたけどこれは凄い。


「氷室様着きました。すみませんが、そこからは一通なので車が入れませんので先に屋敷までお向かいください。真っ直ぐ歩けば門に着きますので。」


俺が降ろされた場所は、とても大きい古風な和式のお屋敷だった。

マリアさんに言われた通り、壁沿いに真っ直ぐ歩くとお屋敷の前で掃き掃除をしている人がいたので声をかけてみた。


「すみません、少しよろしいですか?」


「あぁ?」


ヒェッ振り向いた人は小太り体型のパンチパーマをした厳つい女性?だった。


「なんだぁ?テメェ!...まさか!?どこかの組の鉄砲玉か?こんなイケメン寄越しやがって!おい!カチコミだ!!!斧田組にカチコミだ!」


「ちょっ!?」


いきなり敵認定された。


「 カチコミだと!?アネキ達が来るまでアタイと二人でこのイケメンヒットマン抑えるぞ!」


屋敷から眉毛が無いこれまた厳ついお姉さん?が現れた。


「ち、違います。ヒットマンじゃないです...。」


やべ泣きそ。


木刀を持ったパンチさんと眉無しさんが俺に向かってきたときに「待て!」と声が響いた。

パンチさんと眉無しさんが声のする方に振り向くと長い髪の毛を後ろに纏めたオールバック風の髪型をし、サングラスにピシッとした黒のスーツ姿の女性が立っていた。


ヤバい!あの人はパンチさんと眉無しさんとは比べることのできない程のオーラがある。

たぶん強さ的には村正さん達レベルの強さだと思う。

終わったな俺。


「...失礼ですが、名前を聞いても?」


オールバックさんが俺の前に立ち、名前を聞いてきた。


「ひ、氷室咲夜と申します!ごめんなさい!」


勢い余って謝っちゃったよ。


「・・・二人共、こっちこい。」


「へい!」


パンチさんと眉無しさんがオールバックさんの側に近付く。


「・・・このっ!バカ共が!!!!」パァァン


「ぐべぇ!!」 「ひでぶ!?」


パンチさんと眉無しさんは見えない速度でオールバックさんに殴られて10mくらい吹っ飛ばされていた。


「若の御友人が泊まりに来るから丁重にもてなせとマリアから言われていただろうがっ!しかも若の恩人でもある氷室様だぞ!」


「氷室咲夜様ですね。マリアから話は伺っております。不細工な出迎えをしてしまい申し訳ありませんでした。」


オールバックさんが丁寧に謝罪をしてくれた。


「え?・・・若の御友人?・・・氷室?・・・・も、申し訳ありやせんでした!!!!」


殴られた2人も勢いよく謝ってきた。


「い、いえ、お気にせず?」


「氷室様何をしているのですか?」


マリアさんが俺の後ろに立っていた。


「すまねぇマリア。このバカ共が氷室さんに迷惑をかけていやがった。」


「・・・・はぁ。申し訳ありません氷室様、家の者共がご迷惑をおかけしました。・・・あなた達のことはカシラに報告致します。」


「申し訳ありませんでした!マリアの姐さん!!」


「氷室さん、ご案内致します。中へどうぞ」


オールバックさんに誘導されながら屋敷の中に入った。


「うわ、すごっ!」


中に入ると白い砂利石が敷き詰められた庭があり、松の木や鯉の池があり、昔修学旅行で見た日本庭園の様だった。


「咲夜君!」


靴を脱ぎ屋敷の中の廊下を歩いていると、前から正輝が出迎えてくれた。


「よ、よお!正輝。今日はよろしくな。」


「うん!あ、聖子さんと一緒だったんだね。」


聖子さん?誰だと思ったが、今俺の前を歩いているのはオールバックさんだけだ。


「あの、お名前を聞いても・・・?」


「これは失礼しました。私は金子聖子かねこせいこと申します。カシラ補佐をしており、正輝様の婚約者でございます。よろしくお願いいたします」


まさかの婚約者だった。


「お姉ちゃんの所に行くなら僕も行くよ!咲夜君を紹介したいし」


「えぇ、カシラに一度会っていただこうと思っていましたので、ご一緒いたしましょう♡」


あ、金子さんデレてる。


俺は金子さんと正輝を先頭に正輝のお姉さんであるカシラさん?に今日はお世話になることの挨拶をする為にカシラさんが待っている部屋に誘導してもらっていた。


「ここだよ!」スーッ


正輝が虎の絵が書かれている襖の前に止まり、襖を開けた。

・・・・そこは大きな和室で、目の前には50人はいるであろう黒服の厳ついお姉様方がこちらに振り向くこともなく前を向きながら正座をしていた。


そして、お姉様方の目線の先には甚平姿の女性が姿勢を崩しながら座った状態でこちらを睨み付けていた。


先程の玄関前の出来事なんか温く感じる程の緊張感が俺を襲ったのだった。




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