第12話 ゴミクズパーティ
胃の痛む、地獄のような旅路が、もうそろそろ終わりを迎えようとしているのを知ったのは、王都を囲む丈夫な外壁が見えてきた頃だった。
(ああ、ようやく……ようやく私のチヤホヤライフが始まるんですね〜! 危ない魔族との戦いは、ぜーんぶこのクソ野郎どもに押し付けて、私は王都でイケメンを探しながらウィンドウショッピングですよ〜!)
なんだかんだで、魔物の襲撃は全て男どもが退けてくれた。腹を満たした男どもは、それなりに役に立ったのだ。
あと一日か半日で、ついに王都に! この苦労も報われるーー!
この食事の用意だって、これが最後になるかも――
「そうなんですぅ、わたしたち、ちょびっとだけ家出しちゃってて〜」
いつものように、こんがりと焼けた動物のお肉を両手に戻ってきたメリーヌが目にしたのは、簡易テントがひしゃげるほどの、美女、美女、美女……。
「パパとママがわからずやって言うかぁ、すんごく厳しくってぇ。男の子とも話しちゃダメだって、しつこくって〜」
なんでか、辺りが美女まみれになっていた。ブランド物のハイヒール、下着のように薄いワンピースが、まるで花びらのよう……だが、冒険者パーティには似つかわしくない格好だった。
「でもぉ、お兄さん達に出会えてよかったですぅ、ちょうど食料が尽きちゃってぇ、どうしようかなって、みんなでエーンって泣いてたんですぅ」
エーン、エーン、と泣き真似しながら、リーダーにしなだれかかる美女。
メリーヌはもう、わけがわからなかった。
「な、なんですか? この人たちは!?」
「お? おせーぞ、メリーヌ。そんな量じゃ全然足りねーだろ。もっと獲って来い!」
「はああ!? この女の人たちも、私たちと食べてくってことですか!? なんでそんなことに」
「いや〜ん、わたしたち帰りたくなぁい」
「お肉、食べたぁい、野宿もしてみたぁい。ねえいいでしょう、お兄さぁん」
メリーヌ以外のパーティメンバーが、美女にしがみつかれて、困りながらもデレデレしている。
「メリーヌちゃん、リーダーもああ言ってることだし、もう少しだけお肉を取ってきてよ。それと、彼女たちは大金持ちのお嬢様で、お屋敷の中で何の刺激もなく退屈してきたんだそうだ。ここは一つ、野宿の先輩の俺たちが、三日ほどかけて色々と教えてやらなくちゃ。リーダーもああ言ってることだしさ」
「野宿がしたいって……目的地はすぐそこなんですよ!? 今日初めて会った女の人たちのために、無駄に野営生活を伸ばす意味って、なんですか!?」
「やぁん! 虫に刺されちゃったぁ、ど〜しよぉ」
「あ、俺、薬あるから塗ってあげるよ! スカートたくって、足を出して!」
は? とメリーヌの全身の筋肉が、怒りに硬直した。黒い三角帽子を、ぐいっと深く被る。
「あの……ちょっといいですか〜、お姉さん方。王都は今、魔族の襲撃で大変なことになっているんじゃないんですか?」
「え〜? なんのことぉ? わたしの住んでるとこ、普通に平和だけどぉ?」
「平和? 特に困ってないんですか!? でも、最果ての村にまで人員を補充するために、兵士が来――」
「あ〜ん、わたし難しいの、わかんなぁい。こわぁい」
エーンエーンと泣き真似され、メリーヌの目尻はこれ以上ないほどに釣り上がった。ドスの効いた唸り声のような詠唱が始まる。
「カース付与!! 煉獄の業火に身を焼かれなあああ!!」
青空高く火柱が燃え上がり、辺り一辺が焦土と化した。
王都の門を目前にして、原因不明の大出火事件が発生した。見張りをしていた門番が駆けつけて、燃えカスパーティを発見して回収、王都の大病院で働く治癒魔法士のもとへ搬送した。
メリーヌはちゃっかり、彼らの付き添いで王都に潜入していた。
「あのー、すみません、王都って今、大変なことになってるんですか? 例えば、魔族がいっぱい入り込んできて、とても困っているとか?」
適当に周囲の人間に聞いて回ると、皆揃って小首を傾げて、不思議そうな顔をした。
「あ、何でもないんです、すみませーん」
メリーヌはニヤリと口角を上げた。
「よくわかんないけど、平和みたい! じゃあ、遊んでもいいわけだ〜。あんなクソド田舎なんか捨てて、都会のイケメン引っ掛けて幸せになろうっと!」
颯爽と街中へ繰り出した。
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