第7話 幼馴染が風邪ひいたので看病した。
「…うぅ…ゲホッ!ゲホッ!」
「悪化してるねー……」
風邪ひいた。視界がグニャグニャしてる。
「雑巾ももうぬるくなってる…。…碧空、水の入れ替えしてくるから、少し待っててね?」
「うぅ…ごめんねぇ…アオナぁ……」
「いいのよ、幼馴染だし。」
看病の仕方が古典的過ぎだろって思うかもしれないけど、ソレにはちゃんと理由がある。
「それに碧空、昔から病院ダメなんでしょ?無理やり連れてって悪化されるぐらいならコッチのほうが断然良いでしょ。」
僕病院が大嫌いなんだ。子供みたいだけど、コレだけはどうにもこうにも絶対無理。たとえアオナに言われてもね。…にしてもシッカリした幼馴染ですこと…。
「…アオナ…愛が……重いねぇ…」
「無理してボケんでよろしいわ。」
アオナは渾身のボケを軽くあしらって、そのままアオナは行ってしまった。ヒドくない?僕頑張ったんだよ??病人の身でそんなことを考えながら、僕は寝落ちした。
少しあとにアオナが戻ってきた。
「あ…アオナ…おかえりぃ……」
「ごめんね、待たせちゃって。」
そんなこと、全然気にしなくていいのに。やっぱ昔から家庭の問題で世話焼きなだけはあるな。
「…一旦熱測ろっか。」
「…ん…アオナ、それでわかるのかい……?」
「完璧じゃないけど、大体はねー…。」
アオナはおでこに手を当ててきた。少しヒンヤリしてて気持ちいい。彼女が手を触れさせてる間、僕はずっと、『アオナの手、こんな小さかったっけなぁ。』とか考えてた。僕と比べても痩せ気味な子だったけど、妙に小さく感じてね。
「38度くらいか……まだまだ熱いねー…。…冷えピタ貼ろっかー。」
「…僕さ、冷えピタ苦手なんだよね〜。なんかブツブツしてるし、鳥肌すごくなる。」
「あるあるだな〜…。」
アオナは苦笑いしながら…僕に同意してくれた。よし今だ!決めてやる!
「じゃ、貼ってね☆」
「いや今の流れで結局貼るんかい…!」
よっしゃキマったぁぁぁぁ!やっとアオナが僕のギャグにツッコミ入れてくれた!イェイ。病人ナメんな!とか思ってたら、心の中読んだんかってタイミングで『病人のくせに元気ねアンタ…』って。てへぺろ☆
「…まぁでも、碧空が文句言えるぐらいまで元気になってて良かったよ〜…。」
「…アオナ…心配かけてごめんね〜、」
その時のアオナの耳は少し赤くて、照れてるのが分かった。アオナのやつ、そんなに僕のこと心配してくれてたんだねぇ…。…なんかちょっと申し訳ないね。今度なんか奢ってあげよう。
「…とにかく、冷えピタ貼るから、上、」
「…上?上ってどういう…」
何事かと思ったら、突然アオナが僕のベッドに乗ってきた。おい待てデジャヴ!なんだか嫌な予感がしたんだけど、それは見事に的中したよ。
「ああああ、アオナ!?」
「いや…アタシだけなのか知らないけど、横から貼ると毎回変になるからさ〜…。ケーくんのときとかよくそうなってたし…。」
前のトラウマが蘇ったね。
「…てか碧空そんな慌ててどうしたの?」
おい嘘だろコイツまさか忘れてやがる!?焦ってる間に、アオナの立派なお胸が僕の上半身に触れた。
「……あ…アオナ……」
「ん?どうしたの碧空?顔真っ赤だよ…?やっぱり具合まだ悪いんだね…熱もさっきより上がってきてるかな……?」
「……お…お…」
「…お…?」
おっぱい!!おっぱいがある!!アオナのデケェおっぱいが!!当たってます!!熱とか冷えピタとか忘れるってこんなの!!おっぱいで頭いっぱいいっぱいなんですけど!!ナニがとは言わないけど元気になったよ!!なんて言えるわけねぇよなぁぁ…!
「おおきに!!」
「なんで急に関西弁???どういたしまして?」
その言葉を最後に、僕は一旦気絶した。
1時間ぐらい経って僕は目を覚ました。具合もすっかり良くなってきたってのに、身体はなんだかダルい気がするね…。…ナンデダローネー?とにかく身体を起こして、部屋中見回したけど、アオナはいなかった。また1人かぁ…いや逆にあんな事あったし1人のほうが良いのか…?そう思った時だった。
「おー碧空、身体起こせるようになったんだ。」
「あぁ海凪。………海凪!!?」
「元気だなお前」
コイツは僕の幼馴染で妹分的な子。名前は〈海凪〉でカナと読む。苗字は〈碧羅〉でヘキラ。水色の髪と、水・紫のオッドアイが特徴。音楽大好きな25歳。僕より上手い時もある。典型的な陰キャで、運動神経もかなり悪い。よくケン君やアオナとは遊んでた人。そして、僕がかつて大好きだった人。…そんで、そんな彼女が何故に目の前に…?
「長々説明お疲れさーんw」
「誰に言ってんの??」
「別にー?w」
「…てかそんなことよりも…海凪…なんで…?」
僕が理由を尋ねると、彼女はスマホを見せてきた。
「ほれ、見ろ、」
「…ん?…『碧空が具合悪いから、海凪ちゃんにも手伝ってほしい!!アイツ1人だと可哀想だから、誰か常に見てあげれる人がいてほしくて…!』…」
「な?そういうこと。まぁずーっと最年長としてコッチの世話見てくれた人のお願いは断れねーよなーって。オレも助けられたことあるし。ケンは当然、お前だってアオナねぇねに頼まれたらそう簡単に断れないだろ?」
「……まぁ…僕も彼女の優しさには何度も助けられてますが…。」
アオナのやつ、僕のことめちゃくちゃ心配してくれてんだなぁ…。それで嬉しくなってたら、
「…なぁ碧空、」
「……ん?どうかしたのかい?」
海凪が改まった態度で口を開いた。
「…お前さぁ、コッチに来た理由、アオナねぇねにちゃーんと言ったのか?」
「…いや…まだ……。」
「だろうなー、言ってたら既にケンにメールしてそうだし、あの人。」
「あ、あはは…」
苦笑いしてる僕を、海凪は真顔で見つめながら言ってきた。目に感情が全く籠もってない。集金で使えるぐらいには超怖ぇ!!
「…早く言わないとマズいんじゃない?」
「…それは…わかってるけど…。」
そんなことは僕だってわかってるさ。大切な事は、早く言わないといけないって。でもまだきっと…その時じゃないから…。そうやって僕は逃げてる。ホント、自分が嫌になるよ。
「…ゴニョゴニョ言ってるところ悪いが、御二方が同棲始めて既に一週間が経過してますが??」
「で、でも…まだ一週間」
「もう一週間、な?」
海凪の鋭い返しに言葉が詰まる。
「幼馴染の一週間ってのは、友達の一年と同じなんだよ。価値がすごい。逆に言えばそれだけしか期限はないってことだぞぉ!」
あまり海凪らしくない言葉に、僕は話題から逃げるためにもツッコむ。
「…海凪、誰かから聞いた?」
「ケンが言ってた。」
「ほんとあの子昔からよう達観してますわ…。」
「…まぁでも、オレもケンの言ってる事わかるし!とにかく早く言えよ?アオナねぇねのためにもな。それまではオレらも黙っててやるからよー。」
僕らの会話でなんだか微妙な空気が流れてたところに、一階から救世主アオナちゃんの声が響いた。
「海凪ちゃ〜ん!!碧空の冷えピタ確認してくれる〜!?」
「あいよ〜!!アオナねぇね任せて〜!!」
「ありがと〜!!」
女同士仲いいなコイツラ。
「……そういや、アオナは何してんのさ?」
「ん?お前のために雑炊作ってる。」
「ありがたいねぇ…かたじけない…。」
説明しながら、海凪はさっきのアオナのように僕のベッドに乗ってきた。…けど別に…なんか…
「……薄いな…相変わらず。」
「おいどういう意味だコラ」
「…いや…アオナが凄すぎたからさ。」
「アオナねぇね〜碧空変態に戻ってるからオレ帰って良い〜!?」
「あぁぁ待ってウソウソごめんてぇぇぇぇ」
「碧空が元気なら大丈夫だよ〜!!!」
「アオナぁぁぁぁぁぁぁ」
夜になると、碧空はすっかり回復してた。
「僕!復活!!」
「碧空〜病み上がりで暴れんのよくないよ〜」
「はーい、」
聞き分けがよくてありがたい。けど…
「…ゲホッ…!」
「…あれ…アオナ…?」
「うぅ…ごめん…なんかちょっと…体調が…良くない…」
アタシに風邪うつりました。
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