第6話 幼馴染と一歩進んだのに少し追い越した。



『アタシも、碧空の事なら誰にも負けないよ、』




「アオナ!おはよ!」

「わ!?…もー、碧空ビックリさせないでよ…」

「アハハ、ごめんごめん、」


朝ご飯の準備中、碧空の元気な声が背後から聞こえた。昨日のほんのちょっとした勘違いから、アタシ達は少し距離が縮まってた。とは言っても、言われてみれば程度だとは思うけど…。


「…アオナ、何か手伝ったほうがいい?」

「うーんそうねー…じゃ、お皿取ってくれる?」

「あいよ、」

「……ふふ、」

「……何だい?」


多分、碧空はアタシの笑顔を見て、嫉妬してたんだろうね〜。昨日は誤魔化されたけど、あの時の碧空の顔はそういう顔だった。


「いやさ、碧空がアタシの事であんな本気になってくれたのがね、嬉しかったな〜って。」

「あー…まぁ…そんじょそこらの奴より?僕は君のこと知ってるし?別に、君の事が知らない間に恋愛対象としてめちゃくちゃ好きになってたとかじゃないよ?コレだけは肝に銘じて置くからね?君も理解してくれよ??」

「わーかってるって…(可愛い奴…)」


あと、コイツやっぱなんか可愛いな。碧空ってこんなツンデレみたいなところあったっけ?




朝ご飯を食べ終えたあと。


「……ゲホッ…!うーん…なーんか今日咳出るんだよねぇ…」


碧空が突然、咳をした。珍しいこともあるなって思いながら、質問してみる。


「……碧空…具合悪いの?」

「大丈夫大丈夫!咳だけだから!」


ホントかなぁ…。碧空って結構すぐ無理するし、いつも誰にも相談しない奴だから少し不安。念の為、釘は刺しておいた。


「……今日アタシケーくんに会ってくるけど、なんかあったらすぐ連絡しなさいよ?アタシお姉ちゃんみたいなもんなんだし。」

「うん!任せな!!」




「てな感じでね〜。全部たった一日足らずの出来事とは思えないよ。」

「姉ちゃんも碧空さんも、相変わらず仲良さそうで何より。」


アタシは、改めて挨拶をしにケーくんに会いに来てた。そもそもケーくんがコッチに来てたのも、職場こと学校から近いからだったようだ。なので案外すぐ会えた。


「…俺さ、こういうのって時間経ったら希薄化するもんだと思ってたんだよね。だから未だに二人の仲良しが続いてて、俺正直嬉しいよ。」

「…なんか…色々複雑だなぁ…。」


ケーくんのストレート過ぎる言い方には、なんだか複雑な感情にさせられる。碧空にも聞かせてやりたかったなぁ。この子、ホントよくできた子。我ながら、アタシの育て方は正しかったんだなって自負してる。アタシが、ケーくんの立派具合に感心してると、いきなりこんなことを言ってきた。


「…二人はキスとかしたの?」

「!?い、いやそういうのはまださぁ…!!」

「…ふーん。…ま、冗談だけどね、」

「ケーくん真顔だからわかりずらいのよ!!」


何その反応!?ケーくん楽しんでない!?教育間違えたかなぁ!?そのまま少し、返答に困って沈黙してたら、ケーくんが話題を変えてきた。


「…碧空さん、体調大丈夫そう?」

「あ、え。う、うん…今は、連絡も特に無いから、大丈夫だと思う。」


少ししどろもどろしてから返答する。やっぱりアレは、別に風邪でもなんでもなかったのかな…?と思ったけど、でも、碧空の咳を聞いてから、ずっと胸騒ぎがしてた。


「…姉ちゃん、もう帰ったら?」

「え!?な、なんで…」

「…顔に、全部出てるよ。小さい頃から二人で生き抜いてきたようなもんなんだから、気づかないないわけないでしょ。」


アタシの弟は一体いつからこんな立派になった?感心超えて感動。


「俺は碧空さんの体調崩れんの嫌。そんで、姉ちゃんは俺以上にそうなるのが嫌でしょ?」

「…うん。そりゃあ当然…」


そのままアタシはケーくんにお礼を言って、手を振ってから急いで帰った。碧空…大丈夫…じゃない気がしてきた。




家に着いて、ドアを開ける。


「……ただいまー…碧空ー……?」


声を掛けてみても、何の返事も無かった。寝てるだけならいいんだけど…。そんな不安を抱きながら、碧空を探す。とはいえ、見つかったのは意外とすぐだった。


「……はぁ…はぁ…」

「!…碧空!?」


荒い息を吐きながら、倒れてる碧空がいた。顔が真っ赤で、汗もスゴイ量。


「ちょっとおでこと首触るよー…。…うっ…すごい熱…!」

「あ…アオ…ナ…。」

「!碧空…!…一旦…マスク着けさせてね…。そしたら、碧空の部屋まで行くよ…?立てる…?」

「…………ん…」


マスクを着けさせたあと、碧空が力無く頷いた。頑張ってる碧空を立たせて、肩を貸しながら部屋まで歩いていく。


「……碧空…ごめんね…帰るの遅くなって…。」

「……いや……いい…それ…より…アオ…ナ…」

「…?」


碧空の顔を見ようとしたら、いきなり力が抜けて、碧空がコッチに倒れてきた。慌てて抑えようとしたその時だった。


「どうしたの、碧空…って危なッ」

〈フワッ〉


アタシと碧空の口が、マスク越しに触れ合った。


『…二人はキスとかしたの?』


ケーくんの言葉が、頭の中を巡りだす。


「(アタシ…今…碧空と……!?///)」


キス。碧空にはそんな意識ないことはわかってる。それでも、碧空の温もりはしっかり伝わってきた。思わず自分の口を抑える。しばらく一人で恥ずかしくなってたけど、碧空の苦しそうな声で我に返った。


「あお…なぁ……」

「!!ごめんねぇ碧空!今連れてってあげるからねー…!」


とにかく今は、碧空を早く部屋に連れていこう。

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