第9話
春が訪れると、拓未と美美は近所の公園に足を運ぶことが増えた。冬の寒さが徐々に和らぎ、花々が咲き始めるこの季節。公園の小道を歩くたびに、どこか新しい発見があるような気がした。
ある日、二人は普段通りに公園の散歩を楽しんでいた。暖かい日差しが降り注ぎ、空は澄み渡っている。美美は嬉しそうに歩きながら、辺りの花々を見つけてはその美しさに見入っていた。
「ねえ、拓未、見て! あの花、こんなところに咲いてる。」美美が指を差した先には、淡いピンク色の花が一輪、ひっそりと咲いていた。
拓未はその花を見て、驚いたように顔を近づけた。「本当に…こんな場所にこんなに美しい花が咲いているんだな。」
美美はその花をじっと見つめながら、ふと考え込んだ。「去年の今頃は、こんな花、咲いてなかった気がする。」
拓未は美美の顔を見つめ、静かに言った。「そうだね。でも、何だかその花が咲くタイミングが、ちょうど今だって感じる。春って、やっぱり変化の季節なんだな。」
美美はその言葉を聞いて、少し目を細めた。「私たちも、こうして毎年少しずつ変わっていくんだね。去年と比べて、今の私たち、何か違う気がする。」
拓未は少し考え込みながら、しばらく黙って歩いた。そして、ふと顔を上げて美美に言った。「美美、僕もそう思うよ。二人で過ごす時間が増えて、少しずつお互いのことをもっと深く知ることができた。」
美美はその言葉に驚き、拓未を見つめた。「拓未、どうしてそんなことを?」
拓未は少し照れくさそうに笑った。「いや、特別なことを言いたかったわけじゃないけど、君と一緒にいると、自分が成長している感じがするんだ。」
美美はその言葉に胸が温かくなり、思わず拓未の手を握った。「私も、拓未といると毎日が新しい発見の連続だよ。あなたがいるからこそ、前に進んでいける気がする。」
拓未はその手をしっかりと握り返し、美美の目を見つめた。「僕もだよ、美美。君と一緒にいることが、僕にとって一番大切なことだ。」
その時、二人はしばらく歩きながら、歩幅を合わせてゆっくりと歩いていった。周りの景色が美しく、春の香りが二人を包み込んでいる。何も言わなくても、ただ一緒にいるだけで心が通じ合っていることを、二人は深く感じていた。
「ねえ、拓未。」美美がふと立ち止まり、拓未を見上げた。
拓未はその顔を見つめながら、「どうした?」と優しく尋ねた。
美美は少し顔を赤らめながら言った。「私たち、この先、もっと一緒に色んな場所に行ったり、色んなことを経験していきたいね。」
拓未はその言葉を聞いて、しっかりと頷いた。「もちろんだよ、美美。僕たちの未来は、二人で作り上げていくものだから。」
その言葉に美美は心から安心し、そして嬉しそうに笑顔を見せた。「ありがとう、拓未。これからもずっと、一緒に歩んでいこうね。」
拓未はその笑顔を見て、胸がいっぱいになった。「もちろん、ずっと一緒だよ。」
二人は再び歩き出し、春の風と共に新たな一歩を踏み出す準備を整えていた。過去の思い出と未来の夢を胸に、二人は確かな絆を感じながら歩みを進めていった。
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