第7話 ペンは剣よりも……
「第一分隊前へ!」
「警告射実施!撃て!」
何人かの兵士らが小銃を空に向けて構え、マガジン一個分を斉射して盛大に威嚇する。
巨大な音響兵器に負けず劣らずの火薬の炸裂音が
「全く。せっかくのハネムーンを台無しにしてくれたな……二号車と三号車、指揮車以外で引き付けてくれ。我々は先に駐屯地に帰投する」
「了解。お気を付けて」
女将校は無言で頷いて見せてから振り返り、臨時指揮車に指定されたハンヴィーの扉を開けて飛び乗る。
「緊急事態発生を宣言する。この車両は現時刻を以て緊急車両になった。
「了解。緊急走行開始します」
兵士が運転席上部のスイッチを指差ししつつ何個か入れると、パトカーのような警光灯が辺りを照らし、甲高いサイレンが鳴り始めた。
『緊急車両通ります道を開けてください』
ハンヴィー三両は少し荒い運転でUターンし、国道への合流を目指す。
確実に、法定速度を著しく違反しているであろう。
「第一中隊長寺倉大尉だ。駐屯地司令に繋いでくれ。緊急事態なんだ」
逃亡のチャンス。
松雪はまた脳を回転させ、車内を何とか見回す。
が、その必要は直ぐに無くなった。
まるでフラッシュを焚かれたように、指向性を持った巨大な閃光が、ハンヴィーの横っ腹から瞬間的に包む。
「伏せろッ!」
総重量ギリギリに荷物を積んだ10トン箱トラック。
それがアクセルベタ踏み速度全開にて飛び出し、そのまま衝突。
爆発のような衝撃と、高重量の鉄塊と鉄塊がぶつかった爆音が辺りにこだました。
松雪らが座乗するハンヴィーは激しく小道から吹き飛ばされ横転、放棄された田畑に痛々しい軌跡を描きながら慣性に引き摺られていき、そして遂に沈黙した。
もちろん、6tの軍事的装甲に正面衝突したトラック側も無事と言えず、運転席はメチャメチャに崩れており、血痕が所々に付着しているのが見える。
「めちゃくちゃやりやがって!」
「おいもう構わん。怪しいの見つけたら射殺しろ」
後列ハンヴィーが急ブレーキにて玉突き寸前で停車し、兵士らが小銃を引っ提げて飛び出す。
「もうこれテロでいいですよねっ」
「当たり前だろ!」
が、直ぐに抵抗は無駄に終わる事になると、兵士達は悟る事になる。
莫大なエンジン音が急速でこちらに近付いてくるのを各々が知覚すると、兵士らの背中が、見覚えのある
二台目の10トントラック─────。
「危害射撃ーッ撃てッ!」
兵士らは訓練通りに、脳が反応するよりも前に小銃を構え引き金を引いた。
撃鉄により弾かれ飛ばされた小銃弾は運転席に集中し命中の音と火花を散らすが、止まらない。
「畜生ッ」
ハンヴィー2両と兵士らに突っ込んだ10トンの重鉄塊は玉突きしつつ吹き飛ばしつつ、しかしそれで満足せず慣性に導かれるままに、同胞であろう死した一台目のトラックの“箱”を喰い破り、そしてまた、車両としての生命を終了させた。
箱からは物が散乱し、そして随分に軽い軽量物が羽毛のように辺りに舞う。
数百枚、田畑に舞ったポスターには、カラフルな髪の色にベレー帽を被った、ある若い女のアニメイラストと漢字四文字が刻まれていた。
『宣戦布告!』
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