第6話 各々が抱える問題

 やや昼を過ぎた、昼食を取るには遅い時間、食堂はかなり空いていた。

 

「ふ~ん、なるほどねぇ。此処とは違うセカイで其処の神様の力でこの世界に転移したと」

「まあ、そんな所かな」


 セツナは差し障りのない部分のみクロエたちに伝えた。全部伝えるときりがないし、何より目的が目的なだけに、全てを伝えるには問題がある、とセツナは熟慮した。


 それは兎も角として、


「自分が言うのもなんだけど、拍子抜けするほど素直に信じてくれたね……」

「まぁね、私達も色々とあったからね。今更異世界だのなんだので驚くほどの価値もないわよ。それにある程度は予想もついていたことだしね」


(まあ、疑われるよりまし、か)


そう思い、セツナは考え方をプラスの方向に思考に切り替える。


「それじゃあ、こちらの世界のことも教えてくれないか?」

「まあ、基本的に昔話になるけどね」


 そこで聞いた話、根元に至る場所で生まれたこの世界に対立する二つの存在。


『蒼き巨人の魔王 セルシウス』

『六つの頭を持つくれないの龍神 レヴォエルト』


 激しき闘いの末、レヴォエルトは滅びるが最後の力で六つの柱を残す。

 片や、セルシウスは四肢と頭と胴体の六つに分断され、各地域に封印された。それぞれ配下を残して。


 そしてつい最近、永き眠りよりセルシウスの一欠片が現世に復活した。

 色々な幸運と偶然が重なり合い、クロエ=ミネルヴァが魔王を倒すことに成功した。だが、それは限りなく危ういものだった、と。

 それだけならまだしも、一欠片とはいえ魔王を倒した事によって、魔王が封印される前に残した上級魔族の腹心等に目をつけられ、危うくセカイを滅ぼしかねない事態にまで発展してしまったという、まさに綱渡りの連続だったというのを懇切丁寧にクロエが説明してくれた。


 セツナは長い物語を聞いていた、夕食を食べながら。

 外はもうとばりが落ちて夜になっていた。夜天には二つの月が存在している。


「だいたい分かった。とすると昼に襲っていた魔族は、クロエちゃん達が撃退した魔王の一欠片の部下とゆうことか」

「ま、そ~ゆ~こと。巻き込んでしまってごめんなさいね。で? セツナはこれからどうするつもり?」

「どうしようか迷っている所なんだ。訳あって、自分はこのセカイで自分はやるべき事がある。まずは拠点を探そうと思っている」

「そうなんだ……」

「じゃあ俺達と一緒に旅でもするか?」


 いきなりそんなことを言うシグルド。


「いいのか? 自分で言うのも何だが、身元が怪しい俺を連れて」

「いいのいいの! セツナは信用できるようだし! これでも人を見る目はあるつもりよ!!」

「ああ! 大丈夫だ。クロエが仲間に入れてきた奴は、性格に難はあっても悪い奴は基本的にいなかったからな!!」

「あんたね、言ってて空しくなんない?」

「……一寸ちょっとだけ思った」

「本当にいいのか? 二人きりの旅なんだろ?」

「気にしない気にしない。この前まで4人だったし。なんだかゴタゴタしているから、腕の立つ人が欲しかったし」

「俺はこいつの保護者なんでな、気にすることはないよ」


 『保護者』とは?

 お互い夫婦みたいに息がぴったしに見えるけどな、とセツナは思う。


「そうか、クロエちゃんにシグルド、よろしくお願いするよ」

「ああ! よろしく、セツナ」

「よろしく、セツナ。……って、そのクロエちゃんってやめてくれない?

こう何だか、聞くたびに背中が痒くなるんだけど」


 そう言って、クロエはソワソワと身震いする。


「じゃあ、なんて呼べばいい?」

「クロエだけでいいわ、その方が慣れているし」

「いいじゃないか、『クロエ』ちゃんで……俺も呼んでやろうか?」

「あんたは黙ってなさい!!」

「痛ッ!!」


 スリッパで頭を叩かれるシグルド。

 どうでもいいけど、いつの間にスリッパなんて持ったのか。

 セツナの目を以てしても見抜けなかった。


「まあ、とりあえず旅の行き先は『アストライア国』で良いわね?」

「ああ、異論はない」

「右に同じく」

「実家に戻ってのんびり。という訳にもいかなくなったけど、早めにあの女魔族、クリスティーナに対する手を考えないとね」


 そして、セツナは宿屋で、眠ることとなった。

 もちろん金は持ってないので、クロエに立て替えてもらった。

 ……何となく後が怖いような気がしたが。


 翌日、早めに町を出てアストライア国へと向かう三人。


「な~クロエ、何でこんなに早く出発するんだ?」

「早めに実家に帰って、対策考えたいのよ。今度襲われて手も足も出ないなんて悔しいし、それに次の町まで結構かかるからのんびりしてたら野宿になっちゃうわよ」

「よく知ってるな~、実家はもう近いのか?」

「まだよ。でもここは私が旅に出たときに通った道だから、覚えているだけ」


 クロエとシグルドの息のあった会話にセツナは中々割り込めなかったが、必要最低限の情報は欲しかったので、なんとか二人の会話に入り込む。


「そうなのか、どれくらいで実家につくんだい? クロエちゃん」

「あと遅くても、1週間ぐらいかな? 本当は転移魔法を使えばすぐ着くんだけど、今下手に魔力を使うと魔族に察知されるのは危険だから魔法は使えない。跳躍石という魔道具はあるんだけど、馬鹿高くて持ってないのよ。それと徒歩を選んだのは情報整理の時間が欲しかったから」


 徒歩の移動は久しぶりだったセツナは、郷に入りては郷に従えの言葉通り、この世界での移動手段を楽しむ事とした。


「にしても、セツナって強いわね。貴方の世界ってそんなに強い奴が多いの?」

「まあ、俺はちょっと特殊な方かな? でも中身は一般的な何処にでも居るような凡人だよ」

「ふ~ん……異世界ってのは恐ろしい所なんだな」

「まあ自分のことを凡人だって言う奴に限って、とんでもないことやらかす奴だからね。その点は余り信用できそうにないわね」

「何か嫌なことでもあったの? クロエちゃん」

「ほっといて……」


 かくして、多少? の騒ぎを起こしつつも、一週間後、問題なくクロエちゃんの実家に着くのだった。

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