第七卯 満開際

[お知らせ]

一週間一本投稿を目指していた私ですが受験関係で一ヶ月一話投稿にしたいと思います。覚えていたらどうぞ見に来て下さい。

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 時が数分流れた。

 説教が終わると部長以外の部員は席に着き、部長はホワイトボードを持って来る。

  

 薫はペンを握り、白い板に部活動会議で話す事について書き始めた。

 ホワイトボードには、以下の事が書かれている。


 1.薫のやらかした事について

 2.薫の退部について


 ウンウン……アレ。

 

 3.薫の良いところについて


 ウンウンフンフン……それはおかしいなオイ。


「くずん……くぇ……えっと、部活動退部会議を始めます……」

「──っておい、退部会議になっちゃってるぞ」

「部長ファイトッスよ」


 涙目になっている薫へ応援の眼差しを俺と天化が送ると、顔を袖で拭っていつもの明るい表情に変える。

 

「部活動会議を始めます! 今回の部活動会議は、皆さんご存知の満開祭について話したいと思います」

「あぁ、そう言えば、もうそんな時期だったな」


 満開祭──別名、新入生歓迎祭と呼ばている憂花高等学校のオリジナルイベントだ。

 新入生へ向けた部活動の勧誘や新入生と在校生のレクリエーションを行って交流を深める目的がある。

 先生側としては、部活動が活発になる着火剤になり得るから学校の実績が増えるいい機会だと思っているのだろう。


「すいません水雪さん、頼んでたスケジュールを配ってください」

「……言われなくても分かっている」


 足を組んでいた水雪は机の下に置いてあった鞄からファイルを取り出すと、それぞれの部員が座っている場所に紙を配る。


 紙には、「満開祭のスケジュールについて」と書かれていた。

 改めて思うが、生徒会長が部員にいるのは有り難いな。

 先のイベントが分かるわけだから、色々と事前に準備をする事ができるからだ。

 分からないことが有れば、すぐに聞ける訳だし。


 スケジュールが書かれた紙を軽く見れば、満開祭は来週の金曜日から開催して、午前中で終了、片付けたその後は自由参加で花見を行う感じらしい。

 他は体育館で部活動勧誘の時間があったり、キッチンカーがグランドに4〜8台ほど並ぶとか何とか、去年とさほど変わらない雰囲気だ。


「軽く見れば、大体察するだろう。満開祭の予定は去年と変わらない方向で決めさせてもらった。正直、生徒会内で新しい意見が色々出た訳だが、学校規模の人数で行うイベント、しかも何も知らない一年生達に向けて新しい事をやるとなると混乱が生じる可能性があるため却下させて貰い、シンプルな内容にした」

「体育館の発表は私と水雪さんがスライド形式で紹介したり、校内放送のラジオで宣伝を行いますので、その間の時間は友継君が主導で部室にやって来た新入生の対応をお願いしますね」

「了解、とりあえず流れは去年の動きを参考にやるよ」


 言葉を発すると薫は、「お願いします」と頭を下げる。

 どうやら部活動会議の終止符が付いたようだ。


 すると薫が右手の人差し指をシワが広がっている天井に指して一言放つ。


「目標はゲームが大好きな人達を沢山呼び込み、そして……先輩方が残してくれた部活動をより良く発展させて行きましょう!!」

「「おー!!」」


 当たり前だと言い出そうな表情をする水雪。

 無表情で紙を見つめる狼夏。

 そして部長の言葉に賛同する天化と俺であった。


 *


「友継、そう言えば前に発売されたゲームってプレイした?」

「あぁそうだった。はいこれ、感想を箇条書きにまとめたヤツね。悪いな、いつも文章に直してもらって」

「……大丈夫」

「薫さんのキャラクターデザインは流石ですねぇ……オイラの考えたイメージ通りっスよ」

「本当ですか!? やったぁ!!」

「真に受けるな、皮肉だ」

「えぇ!?」

「イヤイヤそんなわけ無いじゃないですか、このバナナとペンギンを合わせたコレとかもう最高ッス」


 数々の会話が飛んでいる娯楽に満ちた部屋。

 ゲーム部の活動が本格的に開始された。桜が咲き始めて初っ端の部活だが、皆熱を持って行っているようだ。


 やってる内容としては俺らが一年生の時、最後にやってた事の続きである。

 ゲームの感想ブログを上げるのを俺と狼夏が、天化の個人制作していたゲームを薫と水雪が手伝っている感じだ。

 

 部活動も一年生の頃と変わらず平和に終わるのだろうな。

 そう考えながら、狼夏が華麗な手さばきでノートパソコンの画面に文字を並べているのを見ていると段々と視界が闇に包まれていく感覚を覚えた。


「……寝る?」


 タイピングを止めた彼女は、椅子を引きずりながら下ると豊潤な白い太ももを軽く叩く。

 無表情な顔。まるで俺達が高校生の男女である事を忘れえいるようだった。


「ね、寝ないよ」


 キョドりながらも言葉を返す。

 ったく、俺はなに皆が頑張って部活動をやってるのに何眠くなってるんだ、集中しなくては。

 顔を叩き、自分の身体に気合いを入れて、他のやるべきことを模索するのであった。

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