第六卯 ゲーム部部長
作者コメント:これまでの話にて、登場人物の読み方を記載していなかったので、修正致しました。一部の登場人物の名字を変更させて頂きました。
────────────────────────────────
時計の双子が4時26分を指している時間。
ノートパソコンを立ち上げカタカタと音を鳴らす天化、足を組んで目を閉じ、紅茶を口にする水雪、そして暇なので部屋を掃除する狼夏と俺であった。
しかし、経った数週間居なかっただけで、凄い汚れてるなぁ。
部屋の隅──長机に置かれたデスクトップPCとモニターを雑巾で拭き、裏側を見てみれば、灰色に染められていて汚さがよく分かる。
「遅い……遅い」
足をガタガタと音を鳴らし、苛立ち始める水雪。
彼の怒る気持ちも理解は出来る。
なぜなら、今日行う予定である部活動会議の開始時間が4時10分だからだ。
実に16分オーバー、部長が遅れる連絡は貰ってなく無断欠席である。
生徒会長と言う礼儀と秩序を誰よりも重んじている水雪が怒るのは無理は無い。
「ごめんな水雪、副部長の俺が事前に部長と話しておくべきだった。責任を持って探してくるよ」
立ち上がり、扉の方へ歩こうと一歩踏み出すと水雪の口が開く。
「いや……あの天然おてんばの
水雪は俺に向けられた目線から、ベランダの方に唖然とした表情で見つめる。
「──遅れましたぁぁ!!」
大きな女性の高い声と共に部室の扉では無く、ベランダの窓から少女が飛び入って来た。
少し髪が跳ねた肉桂色のショートボブにビーチブロッサム色の目、制服の第二ボタンが外れたその姿は彼女の天然の性格を表に出しているようだ。
この人は、二年生でこのゲーム部の部長を務めている
「うわぁ!?」
飛行機のように足を巧みに使い、地面に着地をする。
カーリングのように滑って足に摩擦を受けながら、攻略本が置かれている本棚にそのまま突っ込んでしまう。
薫ミサイルによって本棚に衝撃が走り、次々と本棚の土砂崩れが起きる。
頭をぶつけてクルクルと目を回している薫に本の雨が降る。
「ちょ、薫大丈夫か!」
足に思いっきり力を入れて、彼女の元へ向かう。
薫の元へ行き、覆い被さる形で落ちる本を受けた。
背中に何回も痛覚を感じる。
「……っは! 友継君、ごめんなさい!!」
気を取り戻したのか、「はわわ」と言って声を上げ始める。
「大丈夫、思ってたより痛くないから」
薫の呼吸音がよく聞こえるこの距離感……アレ何かデジャブかな。
体を起こして、背中に乗った本を地面に落とした瞬間の事だった。
「──危ない!」
狼夏の危険を発する声が耳に入る。
ふと、上を見てみれば、六法全書ぐらいの厚さがある本が落ちている事に気付いた。
このままいけば薫の頭に打つかる……だったら俺が犠牲となるしか無いだろう。
再び彼女に覆い被さって庇おうとした時、視界の端から黒い物体が飛んで来ると分厚い本に打つかって落下軌道がズレて落ちる。
「サインとコサインとタンジェントって意外と役に立つんッスよねぇ」
軌道をズラした主は、天化のようだった。
小学生が使っているようなパカパカと開くタイプの四角い筆箱を咄嗟に投げて助けてくれたのだろう。
「ありがとうな天化」
「いえいえ大丈夫ですよ、この筆箱に描かれているドラゴンも喜んでます」
「懐かしいなぁソレ。高校生で使ってるの天化だけじゃないか」
「…………………………そうですね、オイラだけッスねぇ……」
「俺も持って来ようかな」
「──おっ良いッスねぇ」
小言を話していると、歯ぎしりをした水雪と狼夏が薫に怒りの表情を向ける。
「薫ぅ、お前ってヤツは冷静に行動しろとアレほど言っただろうが」
「友継とあんな近い距離に…………許さない」
「…………て、テヘペロォ」
舌を伸ばしながらウィンクをして失態を誤魔化そうした薫の表情は、後に絶望の表情に変わる事を静かに察する俺であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます