第2話 幼馴染とお弁当

 翌日の朝、朝食を眠い目を擦って食べていたら、一件の通知が届いた、朝の忙しい時間にウザいと思いながらスマホを確認すると美波からのメッセージだった。 


「兄さん、食事中にスマホを見るのはマナー違反だよ」と沙織が注意してくる。


「わかったよ。食事中は見ないだよな」


オカンか。僕手早く返信するとスマホをポケットにしまった。


 メッセージはこうだ。

『おはよう、実影!今日、お弁当を楽しみにしててね。別にわたしは楽しみになんかしてないんだからね!』とあった。 デレツンか!いったいどっちの感情を主張したいのか分からないヤツだ。

いや、楽しみにしているのはお前の方では?と思ったが、『了解』とだけ返しておいた。 

『じゃあ、7時30分にいつもの場所でね』 そんな簡単な文言で終わっていた。


 美波のヤツどうして僕なんかと仲良くしたがるんだろう?


「兄さん、友達から?でも兄さんボッチだよね?彼女からはありえないからあり得ないからさー」


「なにおう!?」僕は軽くムッとなるが言い合いにはなりたくないから口をつぐんだ。


沙織は灰色のミディアムヘアーに漆黒の瞳の美少女中学生だ。兄の贔屓目ひいきめかもしれないが、それくらい家の妹は可愛い。ツンデレなのがまたオタク心をくすぐるが欲を言えばデレデレがいい。


子供の頃は純真無垢な性格可愛かったのに、どうしてこんな生意気な妹になってしまったのか。

もうあの頃のような天使のような笑顔で『お兄ちゃん大好き』とは言ってくれないのか。寂しい。


「もう、さっさとご飯食べてしまってよね!」


「へいへい」


「返事は『はい』でしょー」


「ウゼー」つい愚痴を漏らしてしまうのは仕方ないだろう。


「なにか言った?!」


「なんでもございませんよー」


そして、僕は朝食を終え、身支度をしに洗面所へと向かうのだった。


♡♡♡

中学の頃の兄さんは夢に向かってひたむきに努力していて格好良かった。

 でも、今の兄さんは高校からWEBマンガの連載が決まっているからと気が緩んでいてだらしない


 加えて陰キャときたものだ。気持ち悪いとまでは思わないけど、以前のような陽キャな兄さんに戻って欲しいと願ってしまう。だから、ダメな所は嫌われたっていいから遠慮なく指摘する。


 あの頃の様な憧れの兄さんに戻って欲しいから。



 

***

美波にはVTuberというもう一つの顔がある。表向きは優等生。裏の顔はYOOTUBEでライブ配信をするVライバーだ。チャンネル登録者数十万人という大人気ライバーだ。


 彼女は中学時代から、Vライバーアプリ『Vライブ』で新人VTuberとしてリスナー七人という底辺配信者から成りあがり、VTuber事務所からのスカウトを受けた。

 高校生から企業VTuberとしてのデビューが決まっているインフルエンサーだ。

 そんな誰もが羨むVライバーと僕が幼馴染であることは高校の連中は誰も知らない僕と美波だけの二人だけの秘密だ。


 学校までの通学は、美波と待ち合わせして一緒に登校した。 

「学校の廊下とかで気軽に話かけないでよね!同じ中学ってバレたくないから!」 

「わかったよ。無暗に話かけないから安心しろ」 

そこまで拒むことはないじゃないかと思うも、僕が寂しいみたいと思われると釈だから言わないでおいた。

「じゃあ、昼休みに屋上で」 

了解ー」 

それでも一緒にお昼食は食べてくれるのか。避けたいのか一緒に居たいのか分からないヤツだな。 

 

昼休み。僕は、美波と一緒に屋上で彼女が作ってきたお弁当を食べていた。 

 

「味はどうかな?美味しい?!」美波は期待のこもった瞳できいてきた。 

 

「うん、まあまあだな。美波、料理もできたんだなーなんか意外だ」 

口では小言を言うが控え目にいって手作り弁当の味は美味しかった。

この唐揚げなんか特に! 

 

「生意気を言う口はこれか!せっかく作ってきたのに『美味しい』の一言も言えない男にはもう作ってきてあげないんだから!」 

 

「ウソだよ、美味しいって!」 

初めて母親意外の手作り弁当を食べたんだ。嬉しくないわけないだろ!美味しくないわけがない! 内心、感激していた。

 

「それなら、よろしい。それならそうと素直に言えばいいのにー」 

 

「悪いわるい、弁当に夢中で忘れてた。別にいいだろ感想くらい」 

照れくさかったのだ、素直になれない男心を察して欲しい。

「許さない!手間暇かけて作ったのにー」

 

「めんご、めんごってー!」

「ちゃんと、『ごめんなさい』と言いなさいよ!」バシッと小槌いてくる美波。

 笑って受け流す僕。あれ?僕って美波からフラれたんだよな?!なにこの告白してOKもらえた後の様な関係は? 

 

 僕が美波にフラれてから変わったことがある。それは彼女が僕に対する距離感が以前より近くなったことだ。 

 

 以前はなかった朝の『おはよう』のメッセージから昨日の夜だって寝る前の『おやすみ』のメッセもあった。 

 

 これは、僕が告白したことで彼女との関係が壊れるのではないかと心配したが、それは杞憂だった。 

 

 これからも友達としてならアリということの表れなのか、それとも......いや、それはないな。 

 

 僕はというと美波にフラれたからといって彼女のことが嫌いになったわけではなく、美波に対する感情が、恋愛感情の『ラヴ』から友情の『ライク』へと気持ちが変化するかと思われたが、メッセのやり取りから手作り弁当まで作ってこられたられたら意識しないという方が難しいだろう。

 

 こんなことをされたら、余計好きになってしまう。 期待してしまうだろ、バカ!

 

               ***

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