第2話 イカリングの光

――狭小アパート


 気だるい気持ちになんとか喝を入れ、『G』の撲滅を目指し、掃除を開始しましょう。


 フフフ、心配は無用ですよ……なぜならば、私には『強い味方』となるアイテムがあるからです。


シュルルル……シュルルル……


それは、超高性能花粉症対策マスク『ゴッドデリンジャースペシャル』!


 マスクに小型換気装置が内蔵されたハイテク家電で、その見た目はフルフェイスメット、いや、もはや特撮ヒーローのマスクなのですよ。


 価格は10万円以上するとんでもない商品なのですが、最新の家電やガジェットが大好きな友人がおりまして。彼が衝動買いした物を押しつけられたのです。友人は結婚しており、こんな物に金を使ったとバレたら、大変なことになるらしいのです、具体的にお小遣いの減額!世知辛いものです。これだから結婚はイヤであります(そもそも相手がいないのですが)。


 保管場所を提供する代わりに、自由に使ってもいいとのことなので、まさに今、ありがたく掃除に使わせてもらおうかなぁ、と思った次第です。


 花粉をシャットアウトするですから、家のハウスダストにも効果があるだろうことですし。


 ブイイイィィィーーン


 まずはスティック型掃除器でホコリを吸って……、


 ブイイィィ……………


 あぁ……これはダメですね……。狭いワンルームにムリヤリ物を詰め込んでいるため、ホコリを吸えるスペースがほとんど無いのです。


 しかたがありません……まずは、物を寄せて……寄せて……うん、不可能です。


 なぜならもうこの部屋には寄せるスペースがありませんからね。猫の額程も無い!うん、これ、どうしましょうか、詰んでいます。



 あれ?……腹が減ってきましたよ。


 そこで私は、テーブルに置いてあったスーパーのお惣菜、イカリングを食べることにしました。


 ズズズ……


 なんとか、テーブルの前だけスペースを作り座る。さて、箸が無い、どこでしょう。


「あ……」


 そもそも、箸を探すどころではありません、マスクをしたままでしたよ。


 まぁ、無理もありませんこんなにメカニカルなのに付け心地が良く、軽い。そのおかげでかぶっていたのをうっかり忘れていましたよ。さすがは高級最新家電といったところでしょうか……。


「あれ……」


 外れません。マスクが脱げません。どこかでロックがかかっているのか、そもそも、バンドが着脱できません。


 あれぇ……押しつけられたときに説明書ももらったが、どこでしたか……。


「……詰んだ」


 マスクを脱ごうと、どうにかこうにか試していると……。


「ん!?何だ?まぶしい!?」


 スマホのライトを間違って付けたのかしら?いや、それにしても、まぶし過ぎます!


 そして、次の瞬間、私は唖然としました。


「イカリングがっ!?イカリングが、光っている!?」








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