第三十五話「停戦交渉に参加する」





―――激闘数時間後―――


俺と奴の連撃と回避が交差する。


 奴は俺の速度に追随してきた。


 それだけでなく攻防力も俺を越えた。


 ただし武装の扱いがほんの少し俺より雑だった。

 

 其処を突いて奴を撃破するまでに地下空間は激しい戦闘に耐えきれず崩落していく。


俺たちは魔王城の地下へ地下へ誘われるように戦い進んだ。


奴の腕には魔王軍所属第二号決戦兵器第三十四系試作型(魔王血族)と略称が書かれている。


意味不明だが、重要人物の殺しはまずい気がしてくる。


俺は奴の首を刎ねず胸を大剣黒雲で貫きそのまま封印魔法を起動。


およそ百年もつ封印を施す。


封印に使った魔道具の指輪をその場に残し俺はこいつとの戦闘の終結にへたり込む。


この時奴は俺の首をでかすぎる槍で穿つ瞬間であり、それを躱しざまに俺の大剣がタッチの差で胸を貫いた格好だった。


「畜生、鎧が駄目になった……」


 まだ残存する防具を最適化して行くついでに少し、封印した強敵を調べた。


最高級鑑定魔道具を起動して年齢を調べたら此奴、たった十八歳だった。


数千年戦い続けて練り上げた俺の戦闘技能を僅か十八年の経験で凌駕しかける。


これだから天才は嫌いである。


いや、俺が経験のわりにへぼなだけか……


俺は荒い息を吐き戦傷を癒していく。


回復魔法薬に、


魔力回復魔法薬に、


毒の残留物を浄化してくれる治療魔法薬をこの一戦で使い果たしてしまった。


俺は汗が止まらない体を引きずり壁に寄りかかり引き抜いた血濡れ大剣を片手に、魔王軍総司令部に居るであろう魔王を目指した。


 地下へ地下へ俺は進む。


 その深さは神聖アスカロン王国王城下に広がる地下宗教都市に勝るとも劣らない広さだった。


 戦闘で焦げ、裂け目が出来た地図を頼りに俺は高速移動を続ける。


 此処まで来ると余程に地下都市が大切なのか……


破壊力が低い兵器でばかりで迎撃を繰り返す。


しかもその多くが歩兵でしかなかった。


敵軍はこの地下都市の守備に兵士をあまり割いた防衛機構ではないらしい。


つまりここまで侵入される前に敵を遠距離から撃退する防衛機構だったようだ。


これはこちらには都合が良い展開だ。


小銃撃をかわしながら俺は先を急ぐ。


地下の大きな大きな儀式祭壇で何か怒鳴りつけている政治家集団がいる。


魔王国高級政治家が着るに相応しい魔軍の軍服を着込んだ集団。


神聖王国の参謀たちから映像と説明で聞かされていた魔王とその側近集団で間違いがなかった。


何かの召喚儀式をしている様だった。


此処まで追い詰められた敵国が行う召喚だ。


何処をどう切り取っても「ヤバい奴」の召喚を目指しているのだろう。


 下手すると制御不能かもしれない。


 いや、実際問題制御不能に成って行く。


 設備が暴走して爆発・制御人員が吹き飛んでいく。


 俺は移動と観測を辞め儀式祭壇に向かい駆け抜けた。


 俺の持つ封印魔道具は残り四つ。


 どれも、神聖アスカロン王国がティアマット封印のために作成した最新鋭装備だ。


 どれも、リング型で俺の全力封印魔法と合わせ魔法を込めると禍々しくも異教を感じさせる儀式祭壇へリングを四つとも投げつけた。


 その瞬間暴走する魔法陣が俺の封印魔法と激突し拮抗した。


 俺は急いで周辺の召喚を促す設備群を破壊して行く。


 一号棟から八号棟までもある塔型召喚装置を魔道砲撃で爆破。


 それでも設備は止まらない、エネルギーの供給を止めねば話に成らなかった。


 エネルギー供給系を爆破するとどうなるか判らないので山勘で巨大な召喚陣の台座につながれているパイプを切刻んでいく。


「くそっ止まんねえぞっ!」


破壊作業途中で幸運にも供給元バルブの制御装置を発見。


急いでシルバーナのくれた神託メモを頼りにバルブを閉める機械操作に入った。


 左から七番目の青いボタンを二度押してから、中央のデカいスイッチを押し込む。


俺の足元で死んで居る主任作業員の胸にかけられているロックキーの紐を引きちぎって奪う。


保護カバーを三個とも砕いて鍵の穴を露出させ一気に鍵を捻じ込んだ。


そのまま右に捻り込んで「ガキン」と鍵穴と鍵がかみ合いエネルギー供給バルブが緊急停止してくれた。


 そして俺はホッとした瞬間撃たれた。


 その弾丸は特殊弾頭だったらしく、鎧の残存装甲を砕き人外化して頑強な俺の体を貫き痺れさせた。


「この、愚か者がっ我々の計画を台無しにするとは、百回死刑にしても飽き足らんぞっ」


 拳銃を構えたそいつは魔王国国家元首、第二百三十四代「クワイエット・ヘル六世」で間違いなかった。


「ふん特殊弾頭が利いた所を見るに勇者か、、、この国はもう駄目だが、他所の国に勇者と言う特別な実験動物を連れ亡命すればまだまだ世界大戦は続けられる」


 そう言いながら奴は拳銃を構え俺の前に歩んで行く。


 側近の護衛兵が変な浮遊ケージに俺を入れた。


「世界大戦が続き人が死ねば死ぬほど暗黒司りし邪神様に魂は捧げられその報酬から私はさらなる加護をもらいえるっ!そうだ貴様如きが邪神を滅ぼすなどありえないっ!私は敬虔なる信徒としていつの日にか永遠を手にするっ!豪奢に、豊かに、悦楽に、歓喜に包まれ生きるのだっ!」


 其処まで宣言すると奴は両腕を広げ高笑いして転送魔法陣へと側近を連れ乗り込んで行く。


 逃がして堪るかよ。


 俺はしびれる体に何度も浄化魔法と抗呪の魔法を使う。


体を蝕む雷撃封印を破って行く。


そのまま雷速で駆け出しタッチの差で魔王のおっさんだけは連れ去り転送陣は起動。


魔王の側近と研究員を多く運んで輝きどこかに人員を転送してしまった。


 おっさん魔王は特に強いわけではないがさすが魔王と言った感じに諦め悪く抵抗して来た。


俺を十二発ほど弾丸を放ちおんぼろで戦闘能力が低下した俺は何度も弾丸に貫かれた。


「糞っ!糞っ!この私が貴様如きに捕らえられているだとっ!ええい放せっ!」


「諦めなおっさん。年貢の納め時だ。アンタはやり過ぎたんだよっ!!これが俺の停戦調印式だっ!!」


 そう言って俺は魔王を掴んだ腕を放さずヘッドバッドを決め一撃で気絶させた。


ごめんシルバーナ、俺が出来るのはここまでだ。


バルキリーが強すぎて消耗しすぎたみたいだ……


次回—――、ナイスガイ病院で目覚める。


もうこれ生存のネタバレだろっ!?


もっと考えて題名付けろよな作者!?


だからお前はあほうって呼ばれるんだ!


チャキッ、ズキューン


え?俺死ぬの?


不老不死チートなのに……


ばたり



(作者に逆らうものは無敵鉄砲で抹殺されます)


星一つで俺様の傷がちょっとだけ癒えるかもしれん……


星三つで魔王のおっさんが少しだけ反省するかもしれん……


星五つで俺様が無敵鉄砲を回避できるかもしれん……いや、無理かもしれん……でも押してくれ。



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