第2話 救援した筈なのに……この状況は何なんですかねぇ!?※R7.2.24修正

「ほらよ。 これを持って何処へなり消えるがよい、との皇帝陛下からのお達しだ。

 それじゃあな、無能君」


 謁見の間から連れ出された後に王都入口の門外に出された俺は、兵士からのその言葉と同時に金属の音がする小袋を手渡された。

 俺の事を嘲笑いながら立ち去る兵士を見送った後、手渡された小袋の中を覗くと数枚の硬貨が入っていた。


「これ、手切れ金のつもりか?

 こっちは硬貨の価値も碌に分からないってのに…」


 そう1人で言いつつも門から離れようと歩き始める俺。

 しかし地理も分からない状態なのに気付き、立ち止まってからステータスを確認した際に見たEXスキル欄の【万能マップ】を使った。

 すると目の前にこの世界のであろう地図ウィンドウが出現した。

 その地図には各地の国名と地名・現在判明しているダンジョンの詳細位置(攻略難易度・出現魔物レベル)・現在位置周辺にいる人と魔物と自分に敵意を向けている相手が色分け表示(人なら白・魔物や敵意を向けている相手なら赤、といった感じ)されていた。

 因みに俺自身の表示色は青になっている。

 更に左側には俺自身と仲間の簡易ステータスが表示されてもいた(現時点で仲間は居ないから仲間欄は空白)。

 とにかく便利過ぎてありがたい!以外の言葉は見つからなかった。


 それから暫くしてマップを見た後、大陸端にある【クラウゼル王国】を目指そうと決め、マップを視界の右下に表示させたまま再び歩き始めた。

 因みにマップを見てこの世界の名が【フィーリエ】であることが分かった、とだけ言っておこうと思う。



◆◆◆◆



 アルゼイド帝国を追放されてからひたすら歩き続けること1日後。

 ようやく俺はアルゼイド帝国の国境を何事もなく(正確には砦の脇を隠れるようにしながら通過したから)突破し、今現在は数キロ離れた地点の街道上を歩いているところだ。


「しかしこの万能マップは本当に便利過ぎるなぁ~」


 ……なんて呟いていたら数メートル先に広がる薄暗そうな森の中から人の悲鳴らしき声が聞こえてきた。

 すかさずマップを拡大表示して見ると、森の入口から1キロ地点程中に入った場所に人が2人とその周囲をぐるりと囲うように数十の魔物が表示されていた。

 これはマズイだろっ!と思った俺は救援すべく走って向かった。



 森に入ってから暫く走った後に辿り着いた俺の目に飛び込んできたのは……なんの守り手もいない豪華な装飾と紋章が施された馬車に群がる無数の魔物の姿だった。

 なので俺は先ず無詠唱で「アイスランス!」と唱えながら前に突き出した手の先に現れた何本もの氷の槍を、馬車入口に群がっていた魔物目掛けて放った。

 その放った氷の槍は寸分違わずに魔物に突き刺さり、刺さった場所を中心に凍り付いていき氷像となっていく。

 だが奇襲に気付いた魔物達が馬車は二の次とばかりに一斉に俺目掛けて襲いかかってくる。

 でもそれを見越して次のアイスランスを発動待機状態にしていた俺。

 だから慌てず冷静に1体1体に確実に命中させ、殲滅していった。

 なので戦闘開始してから僅か2分後、周囲は無数の氷像があるのみとなっていた。

 そしてマップを見て周囲に魔物がいないことを確認し、俺はホッと安堵の息を吐いた。

 ……のもつかの間で頭の中に響き渡るレベルアップ音と目の前に表示されていく複数のウィンドウ。

 でもそれらを確認するのは後回しだろ!とウィンドウの全てを閉じた後、氷像の合間を縫うようにしながら馬車入口にちかづ……かないでスルーして離れようとする俺。


「……他に魔物はいないから俺が居なくても大丈夫だろう。

 だからさっさと離れ………ぐぼぁっ!」


 この呟きを遮るかのように開いた馬車入口の中から出て飛び着いてきた人物からの鳩尾攻撃により……俺は口から苦痛の声を出しながらその場に崩れ落ち、クリーンヒットした鳩尾からくるあまりにもな痛みにより悶絶してしまう。


「ごわがっだでずわぁぁぁぁん!」


 悶絶している俺を他所に、そう泣きじゃくりながら抱き着く人物。

 でも悶絶してる今の俺に状況把握など出来るはずもないのであった。



◆◆◆◆



「そろそろ落ち着いたか?」


「ひっぐ……えっぐ……ズズっ……ズビーっ!」


「……って、人の服で鼻水かんでんじゃねーーっ!!」


 泣きじゃくりながらの抱き着かれと悶絶から暫くの時間が経ち、大分落ち着いたと思われる俺と同い歳位の女性……に声を掛けるも返答が人の服で鼻水をかむってどういうことだよ!?

 思わず叫んじゃったじゃん!


「……ええ、だいぶ落ち着きました」


「……人の服をデロデロにしておいてよく言うよ、全く」


 彼女の返答に対して呆れながら言う俺。

(……もうこの制服はダメかもな)


 なんて思いつつ俺は彼女に問い掛ける。


「まあ、落ち着いたのなら良かったんだが……なぜ未だに俺に抱き着いているんだ?」


「……私が貴方と離れたくないからですが何か?」


 何故にそうムッとしながら答えるんだ、彼女は……。

 しかも離れたくない!とばかりにより一層強く抱き着いてくるし……。

 そのせいで彼女の……程よい膨らみの感触がハッキリ感じられるせいで、こっちは落ち着かないんですがねぇ!?

 だから離れて欲しい、という意味を込めたつもりだったんだけどねぇ!?

 ……って、胸に頬ずりすんじゃねぇ!?


「……ハァ……ハァ……くんかくんか……ほわぁ~♡」


「もう好きにしてくれ……」


 惚けながら人の匂いを嗅ぎ始めた彼女に何を言っても無駄だと悟った俺は……そう投げやりに言う他なかった。


「あ、あの~……」


 そんな時に俺は背景とかしていたもう1人の女性に声を掛けられる。


「ん?……ああ、どうした?」


 決して貴女の存在も俺は忘れていませんよ? という意味を込めた返答と問をする。


「いえ、私とお嬢様を助けてくれたお礼を言いたかったのですが……その~……」


「……そのお嬢様と俺がこんな感じだから声は掛けづらいよなぁ~」


「……はい。 ですが何時までもお声掛けしないのも命の恩人に対して失礼に当たると思った次第でして。

 なので思い切って声を掛けさせていただきました」


 そう申し訳なさそうな表情をしながら言うメイド服を着た女性。


 ……因みに俺に抱き着いているこの彼女は何処かの学園の制服を着てる、とだけ言っておく。

 それはともかくとして。


「いや、助けるのは人として当たり前だからお礼はいいよ。

 ……それで今更だが名乗っておくよ。

 俺は神宮寺じんぐうじ 藍大らんたと言う」


「さも当然、とばかりにそう貴方……藍大さんは言ってのけてしまうのですね。

 ……っと、申し遅れました。

 私は藍大さんにカレン様の専属メイドをしているアリア、と申します」


 カレンさんにアリアさん、ね。

 しかも専属メイドってことは……何処かの国の商会長の娘さんか貴族か王族のどれかは確定だなこりゃ。

 だがそんな人達が何故にこんな森の中で護衛も付けずに居るんだろうか? という疑問を感じ、俺はアリアさんに問うことにした。


「よろしくな、アリアさん。

 所で質問だが……何故にこんな森の中に護衛の1人も付けずに居たんだ?」


「その疑問は当然だと思いますのでお答え致します。

 ですがそれには私、というよりもカレン様の身分を明かす必要があるのですが……その……」


 そう問に対して言いづらそうに返答してくるアリアさんに俺は言う。


「……俺が予想してた通りにやんごとなき身分だったか。

 それと窮地を救ってくれた恩人であっても信用しきれない相手に対し、簡単には明かせない……って所かな?」


「……仰る通りにございます。

 命の恩人に対して失礼だとは思いますが……こればかりはご容赦下さいませ!」


 そう言ってからガバッと勢いよく頭を下げるアリアさん。

 すると頬ずりをしていた筈のカレンさんが言う。


「藍大になら全てを明かしても構いませんよ、アリア」


 雇い主からの許可が下りた以上は……といった感じの表情をしつつもアリアさんはカレンさんに問う。


「……本当に宜しいのですか?」


「ええ、構いません。

 寧ろ明かさない方が命の恩人である藍大様には失礼というものですよ、アリア」


 アリアさんの問に間髪入れずにそう答えるカレンさん。


「……畏まりましたカレン様。


 では先ずカレン様の身分はクラウゼル王国ファリア公爵家の長女であり、フルネームはカレン・フォン・ファリアにございます。

 それと私のフルネームはアリア・フォン・マレッタでして、正式な身分はマレッタ伯爵家の次女になります」


 それを聞いた俺は驚かずにはいられなかった。

 なんせアリアさんの言葉にあったクラウゼル王国とは……まさに俺がこれから向かおうとしていた国だったからだ。


「やっぱりお貴族様だったか……と言うよりもこんな偶然もあるんだな」


「……? 偶然とは一体、どういうことですか?」


 その問に俺は口を開く。


「いや実は俺はこれから向かう予定だった国の名が、まさにアリアさんの口から出てたクラウゼル王国だったから……んぷっ!?」


 俺の言葉は物理的にぶった切られた……カレンさんの口によって。


「んちゅ♡」


「か、か、カレン様あぁぁぁぁぁ!?」


 突然のキスで頭真っ白状態な俺と雇い主の娘であるカレンさんの奇行キスに叫び声を上げるアリアさん。


「……っぷはぁ♡ まさか藍大様がクラウゼル王国に向かわれているとは思ってもいませんでしたが……一目惚れした殿方と離れたくない私としては嬉しいことこの上ないですね♡

 では早速……いっただきま~す♡」



 拝啓、お父様とお母様。

 俺は今、異世界転移して追放されてから何やかんやがあって偶然にも窮地を助けた筈の貴族令嬢に食べられようとしているのですが、どうすれば良いでしょうか?

 ……え?どうにも出来ない?

 ……流れに身を任せるしかない?

 ……全てを諦めて食べられる運命を受け入れろ?

 ……ちゃんと責任をもって幸せにしてあげなさい?


 ………………ちくしょうがあぁぁぁぁぁぁぁっ!!

 ………どうしてこうなるんだあぁぁぁぁっ!!


 俺の魂の底からの虚しい声が心の中で木霊するのであった───。



【おめでとうございます!

 藍大の加護欄〖???〗が解放されました

 藍大は〖創世神の加護〗を授かりました

 藍大は特殊称号〖創世神の使徒〗を取得しました】



───────────────────────


【第2話迄での登場人物簡易プロフィール(後書きにて今後は必要に応じて記載していきます)】



-本作主人公-


【名前】神宮寺 藍大

【年齢】18歳

【種族】人族?

【性別】男性

【身長】181cm

【体重】71kg

【容姿】近況ノートに載せてます

【服装】近況ノートに載せてます


-メインヒロイン-


【名前】カレン・フォン・ファリア

【身分】クラウゼル王国ファリア公爵家長女

【年齢】現時点では不明

【種族】人族

【性別】女性

【身長】現時点では不明

【体重】藍大様以外には秘密です♪

【容姿】近況ノートに載せてます

【服装】近況ノートに載せてます



【名前】アリア・フォン・マレッタ

【身分】クラウゼル王国マレッタ伯爵家次女

 カレン専属メイド

【年齢】現時点では不明

【種族】人族

【身長】現時点では不明

【体重】絶対に教えません

【容姿】近況ノートに載せてます

【服装】近況ノートに載せてます


-アルゼイド帝国-


【名前】ヨーゼフ・フォン・アルゼイド

【身分】アルゼイド帝国皇帝

【年齢】現時点では不明

【種族】人族

【性別】男性

【身長】現時点では不明

【体重】重すぎる

【容姿】とにかく太っている

【服装】藍大が興味無かった為に描写無し

【備考】藍大を含めたクラスメイト達を勇者として魔王を討伐させる為だけに召喚した張本人

 ステータスが圧倒的に低い藍大を無能扱いし、追放した人物でもある




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