にたものどうし
オハナ
1.はじまり
春風が街路樹の若葉を揺らす日曜日の昼過ぎ。この春、高校2年生になった
「楠見ちゃん、今日はどんな髪型にしたい?」
千歌の担当歴3年になる美容師の涼子さんが、優しく微笑みかけた。千歌は準備していたスマートフォンを取り出す。今回はいつもと違う自分に挑戦してみたかった。
「あの、こんな感じにしたいんです」
画面には、個性的でありながら爽やかな印象のウルフヘアのモデルが映っていた。
「レイヤーを入れて軽くしたいんですけど...でも結べた方が良いので、長さは写真と同じくらいで」
陸上部の練習のことを考えながら、千歌は少し不安そうに付け加えた。
「ウルフヘアーね!」
涼子さんの目が輝いた。
「最近また流行ってきてるのよ。楠見ちゃんは自然なウェーブがあるから、絶対似合うと思う!」
「本当ですか?楽しみです!お願いします!」
施術が始まり、千歌は目を閉じる。再来週は陸上部の記録会。この髪型で少しでも気持ちを新たにできたら、と願いながらまどろんでいた。
1時間ほどで全ての施術が終わり、千歌は完成した姿に目を見張った。レイヤーが入ることで、今までの真面目な印象から、どこか大人びた雰囲気に変わっていた。首を動かすと、軽やかな髪の動きに思わず微笑む。
「涼子さん、ありがとうございました!」
「よく似合ってるよ。スタイリングとか分からないことがあったら聞いてね」
***
翌朝、千歌は普段より10分早く家を出た。新しい髪型で登校することへの期待と少しの不安が入り混じる中、いつもの待ち合わせ場所に向かう。
「千歌ー!おはよー!」
声の方を振り向くと、1番仲の良い友達である
「優、おはよ」
「うわっ!髪切ったよね!めっちゃ似合ってる!」
優は千歌の周りをぐるっと回りながら、新しい髪型を眺めた。
「えへへ、ありがと。これウルフヘアって言うんだって」
千歌は少し照れくさそうに髪に触れる。
「へぇー、クールな感じでいいわー」
優は感心したように頷いたが、眉間に皺を寄せ突然何かを考えたような表情になった。
「でも既視感がある...あ!」
思い出した!と肩を叩かれる。
「え?」
「似た髪型の男子、2組にいるよね!」
「えぇ?!うっそ。まさか男子と被るなんて、気づいてなかった...」
千歌は思わず頬に手を当てた。折角の新しい髪型なのに、同じ学年の男子と同じというのは少し複雑な心境だった。
(よりによって同じ学年の男子…、どんな人なんだろう)
「確か、いつも楽器持ってる...あ、あそこに丁度いる!」
優は下駄箱の方を指差した。
「ほら、私去年同じクラスだったんだ。椋(むく)くん」
「...ほ、ホントだ」
千歌は優の指差す方を見た。ギターケースを背負い、イヤフォンで音楽を聴きながら歩く男子生徒。すらりとした背格好に、マスクを付けている。確かに自分と同じようなウルフヘアが印象的だった。
---
その朝も、
別に強く信じているわけではない。けれど、このゆるいキャラクターが発する言葉には、どこか背中を押されるような不思議な魅力があった。軽音部の練習が行き詰まった時も、たけのこの「諦めないアナタに、きっと道は開かれる!」という言葉で救われたことがある。
画面をスワイプすると、金色のオーラを纏ったたけのこがブレイクダンスをしているGIFが現れた。ゴールドは最高の運勢を示す色だ。
【獅子座のあなた、今週の運勢は「運命的な出会いがあるかも」
最高の星の位置にいる獅子座のあなた、この1週間は直感的な出会いが待っていそう。どんな瞬間も見逃さないで、大切に過ごそう。】
「運命的な出会い、ねぇ」
週末には好きなバンドのライブチケットの当落発表もある。これは何か良い予感かもしれない。恭介はスマートフォンをポケットに入れ、意気揚々と自転車のペダルを踏み込んだ。
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