第16話
「オラオラオラオラッ!」
ゴンゴンゴンゴンッ!
「無駄無駄無駄無駄ぁっ!」
ガンガンガンガンッ!
「……自分が殴ってるわけでもないのに、よくそこまでノリノリになれるね?」
「いやぁ、自分、雰囲気には積極的に流されるタイプなんで」
ほら、同じアホなら踊らにゃ損損って言うじゃない? 世の中、楽しんだ者勝ちだよ。
それにしても硬いね。これだけビートが殴ってるのに、全然ダメージが通ってない。ドラゴン硬い。
やっぱ【物理無効】かね? ドラゴンならそのくらいの
それなら魔法はどうかな? 俺も飛び入り参加させてもらうよ! ていっ、【光魔法】の熱線ビーム!
パアァンッ!
「ひゃぁっ!?」
「GGRRRRYYY!?」
「うわっ、びっくりした!? 何今の?」
俺もびっくりした! 熱線当てたらめっちゃデカい音がして弾かれた!
ってか、ビートもドラゴンもびっくりして距離取ってる。
……もしかして、邪魔しちゃった?
「いや、サポートしようとして熱線を射ってみたんだけど、まさかあんなでっかい音がするとは思わなくて。ごめんごめん」
「熱線? 超音波とかじゃなくて?」
「うん。まぁ、超音波は出せないこともないと思うけど、まだ出したことないかな?」
【風魔法】でなんとかできそうではある。けど、俺はコウモリじゃなくて豆だからなぁ。使い道が無いんだよな。
「熱? ……エネルギー……衝突……」
お? ビートが何か考え始めた。ちょっと不用心じゃね? まだ戦闘中ですよ?
まぁ、ドラゴンのほうもさっきの音を警戒してるっぽいからな。ちょっとしたインターバルだ。俺が警戒してりゃ大丈夫か。
「……なるほど、そういうことか」
「おっ、何か分かった?」
「うん、多分ね。いいヒントになったよ、ありがとうボンちゃん」
「おう、そうか! 役に立ったならなによりだ!」
ビートが何か掴んだっぽい。やっぱデキる奴は違うね。
そして、そのヒントを与えたのは俺! やっぱ俺って違うね! やればデキる子だからね!
◇
最初は、魔法防御のために強い魔力を纏ってるんだと思ってた。魔力で全身を覆うのは有効な対抗手段だから。飛ぶためだけにしては少々多すぎる魔力量だったし。
だから深くは疑問に思わなかったんだけど、さっきのボンちゃんの攻撃で逆に疑問が生じた。
何故熱線を弾くだけで大きな音が出る?
魔法を弾くのは簡単だ。その魔法攻撃より強い魔力をぶつけて無効化してやればいい。あるいは強い魔力で魔法に与えられた命令を上書きし、支配権を奪い取ればいい。
それができることを俺は知っているし、実際にやったこともある。
その経験からいうと、魔法による熱線攻撃を防いだ際に、あんなに大きな音が出ることはない。せいぜいジュウジュウとかシュウシュウという蒸発音が出るくらいだろう。
そう、音だ。
思えば、最初にパチキを喰らわしたときも、その後ボディに連打を叩き込んだときも、妙に大きな音が鳴っていた。
そして、衝撃が吸収されているようなあの感覚。手応えはあるのに、それが有効打になっていない現状。
これらの意味するところは、すなわち!
また飛び込んで、ボディに一発、右フックを叩き込む!
ゴオォーンッ!
やっぱりだ!
「コイツ、攻撃を音に変えて受け流してる!」
「音! ああ、なるほど! 音か!」
ボンちゃんも理解したっぽい!
妙に大きなこの打撃音は、与えられた衝突エネルギーが振動に変換されているからだ! 音に変えてダメージを逃がしているのだ!
一撃喰らったドラゴンが、嫌がってまた距離をとる。さっきから殴られる一方だもんな。近接戦闘には打つ手がないっぽい。これはいい情報だ。
「けどよ、それが分かったとしても、コレ、どうやって攻略すんの? 物理も魔法も全部音に変換されるなら、結局ダメージ通らなくね?」
「やり様はいくらでもあるよ! 例えばこんなのとかね! パーティクル!」
距離を取っていたドラゴンの周囲にパーティクルを展開する。今回は目で見て分かるように、直径一センチの銀色の球体にしてみた。ほぼパチンコ玉だな。
それがドラゴンの周囲に一定間隔で、約十万個。重さなし、衝突判定ありで生成されている。
「GRRRUUAAA!」
「んー? 蹴散らされちゃってるじゃん? アレって何のために出したの?」
「まぁまぁ、ここからだよ、ここから。では、引力斥力フィールド展開!」
引力斥力フィールドは【平面魔法】の機能のひとつで、物理設定を施した一定空間内のオブジェクトを引き合わせたり弾き飛ばしたりという物理シミュレーションを行うためのものだ。
今回は対象をパーティクルとドラゴン、効果を強めの引力にしてみた。
結果どうなるかというと、一度は蹴散らされたパチンコ玉がドラゴンに向かって集まっていく。そして密着する。
「GRRUU? GRRAAA!?」
ギュィイィ……ィイィンッ……
「え、なにあれ? 何が起きてるの? 超音波出てるけど?」
「簡単に言うと、パチンコ玉で全身を押さえつけてるって感じかな? 僕が解除しないかぎり、あのパチンコ玉はドラゴンに向かって落ち続けるんだよ」
「ほー、全裸に砂糖水を塗られてアリに集られてる感じか。それは痛痒そうだな」
なかなか嫌な例えをするなぁ。
で、全身をパチンコ玉で押されてるから、音の防御が絶え間なく発動して超音波みたいな高音が出続けているわけだ。
音の防御には魔力が使われているから、これを続ければ如何にドラゴンといえども魔力切れは必至だろう。
つまり俺の【平面魔法】の弱点である飽和攻撃を、今回は俺が仕掛けているというわけだ。自分がされて嫌なことは他人も嫌。世の中の真理だな。
さて、ドラゴンくんはこの嫌がらせにどこまで耐えられるかな? 耐えられなくなったときがお前の最後だ!
キィイィ……ィイィ……パリィインッ!
よし、通った! 今だ!
「これで決める!」
「遊びは終わりだ! 泣け! 叫べ! そして氏ねぇ!」
……緊迫感が削がれるなぁ。
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