第15話

「見つかっちゃたならしょうがない。偵察から威力偵察に変更するよ!」

「おう、りょーかっ、いひぃっ!?」


 急にスピードを上げるなよ! Gで首がコキッてなったじゃないか! 首ないけど! 今日も【疑似知覚】さんは無駄な仕事をしている!


 ほほぉ〜っ、あれが本物のドラゴンか。結構デカいな。この間捕まえた飛竜ワイバーンよりふた回りくらいデカい。全長十五メートルくらい?

 飛竜は前足が翼だったけど、こいつは翼と前足の両方がある。似てるけどやっぱ別種の生き物なんだな。

 いや、似てるのはぱっと見だけか。よく見ると骨格が全然違う。

 飛竜のフォルムはなんとなくリアルというか、何か理由があればトカゲがこういう進化をすることもあるかもしれないっていう説得力があった。

 けど、このドラゴンにはそれがない。なんか、妙に作り物っぽい感じがする。昭和ゴジ◯な感じ?


「んー、造形は八十点だな! もう少しリアリティが欲しい!」

「いや、リアルに生きている本物なんだけどね」


 ビートが苦笑している間に、ドラゴンとの距離がどんどん短くなっていく。

 どんどん……って、おいおい! お互いスピード落とさねぇのかよ!? チキンレースか!? 避けたほうが負け!?

 ちょっ! 待て、俺を巻き込むな! ぶ、ぶつかる!!


「だっしゃあっ!」

「GYYYAAAOOOONNNGGG!!」


 ゴチィーンッ!


「うおおお、びびびビックリしたぁ! なんでお前ら頭突きかましてんの!? 実は鹿なの!? ここは奈良公園!?」

「いや、ドラゴンにパチキかますのが転生してからの夢だったんで」

「パチキって、頭突きが夢!? どんな育ち方したらそんな夢見るの!? やっぱ鹿!?」


 それなりの常識人かと思ってたけど、実はこいつも大概だった!

 そういや、前世はクリエイターだったって言ってたな。クリエイターになるような奴は、どこか一般人とはズレているものなのかもしれん。


 おっと、頭突きされたドラゴンはどうなった? 落ちた?

 いや、まだ飛んでるな。何事も無かったかのように滞空してる。ダメージ無しって感じ。なんて頑丈な奴だ。


「結構いい音したけど、効いてないっぽいな?」

「うん、当たったとき、なんか変な感じだった。単純に硬いだけってわけじゃなさそう」


 ほう、効いてないのには理由があると? もしかして物理耐性か無効持ち? さすがドラゴン、さすドラ。


 GRRR……


 警戒してるな。『俺の頭突きパチキを受け止めるたぁ、なかなかやるじゃねぇか』って感じ? ヤンキーなの?

 ってか、ビートもよく受け止めたな。

 あのドラゴン、ちょっと大きめのトラックくらいの重さはあるんじゃね? ソレと正面衝突したら、普通ならひき肉になってるよ。

 つか、そんな事故に俺を巻き込むな! 危うくヒキワリ納豆になるとこだったじゃねぇか!

 いや、俺は腐ってないから納豆じゃないな。ちょっと香ばしいだけだ。炒り豆。


 GGGYYYAAAANNNGG!


 おっ、威嚇か? まだやる気満々だな。

 ビートもまだやる気っぽい。舌なめずりしてる。

 ……なんで舌なめずり?


「ボンちゃん、ドラゴンって食べたことある?」

「いや、見るのも初めてだけど? って、お前まさか!?」

「一度食べてみたかったんだよね! あの魔力の濃さ! 絶対美味しいよ!」


 ドラゴン見て美味しそうとか、やっぱこいつ、どっかおかしいな!

 とか言いつつ、俺もドラゴンの味には興味がある。

 しょうがない、俺もご相伴にあずかるために協力しますか。



 うーん、凄い魔力密度だ。【気配察知】では青白く光って見えるくらい。さすがドラゴン、さすドラ。

 アレ、食べたら絶対美味しいよね? 間違いない。やる気が出るなぁ。


 けど、さっきの頭突き、何か変だったんだよな。なにかこう、衝撃が吸収されたみたいな?

 俺は頭だけじゃなくて全身に【平面魔法】を展開してたんだけど、その【平面魔法】には何も異常はなかった。つまり、魔法を無効化されたわけじゃない。

 もしかして物理無効? そういう魔法か技能スキル

 さっきの威嚇にも魔力が乗ってたしな。多分、まともに食らったら気絶したり恐慌状態になったりしたんじゃないかな? 定番だし。

 俺は全身を【平面魔法】で覆っていたから平気だったけど。


 あっ、ボンちゃん! ……って、なんともないみたいだな?

 アレ? あの威嚇には、実はなんの効果もなかった? それともボンちゃんが抵抗した?


「? どうした? 俺に何か付いてる? 尻尾生やす?」

「いや、なんでもない」


 なんで尻尾? 卵からオタマジャクシに孵化するの?

 本人には、何かをした自覚は無さそうだな。

 まぁ、ボンちゃんも桁外れの魔力を持ってるからな。素でレジストしたのかも。


 それはそれとして、さっきの頭突きだ。絶対に何かカラクリがある。それが一体何なのか……。

 うーん、考えてても仕方がない! 迷ったときは、とにかく手を動かす! デザイナー時代からの俺の信条だ。それに従う!


「よし、まずは接近して一発当てる!」

「おう、いけいけ! ファイトー! イッパーツ!」

「……ボンちゃん、気が抜ける」

「おっと、失礼」


 そのフレーズがすぐに出てくるって、やっぱ昭和生まれなんじゃないの? 歳、ごまかしてない?


 まぁいい、今はあのドラゴンに集中!

 威嚇が効かなかったからか、さらに警戒して距離をとったな。三十メートルくらい離れている。

 でも残念ながら、そこはまだ俺の間合いの中だ。。全力機動すれば一瞬で詰められる。


「いくよ!」

「くる……お、おう!」


 今『くるよ』って言おうとしたな? やっぱ昭和生まれなんじゃ?


 【平面魔法】を駆使して、静止状態から一瞬で音速近くまで加速! 一直線に距離を詰める!

 そのままドラゴンの懐に飛び込んで、勢いのまま左の肘打ち!


 ゴオォーン!


 まただ! これだけの速さで打撃が入ったのに、なんのダメージも与えられた感じがしない!

 物理的にも変だ。これだけの速さでぶつかったのに、俺もドラゴンも、少ししか弾かれてない。

 どうやら衝撃が拡散しているっぽい? やっぱり物理無効か?


 あ、ドラゴンがちょっとびっくりした顔してる。俺の速さに驚いたっぽい。

 慌ててまた距離を取ろうと羽ばたくけど、そうは問屋が卸さない。お前が飛ぶより、俺が空を駆けるほうが速い!

 再度懐に潜り込んで、今度は左右の連打を叩き込む!


 ゴンゴンゴンゴンッ! ゴゴゴゴゴゴゴンッ!!


 むぅっ! 表皮よりも薄皮一枚上に、何か見えない壁があるっぽい! ダメージが入ってない! 効いてる感じがしない!

 けど!


「効かないなら、効くまでとにかく殴り続ける!」

「君がッ泣くまで殴るのをやめないッ!」


 やっぱ昭和生まれじゃね?

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