ゴミ装備と追放された俺が、武器進化スキルを開花させたら無双できました
真冬のスイカ
第1話 追放されるなんて聞いてない!
――俺、レイ・アーディンは底辺冒険者だ。
荷物持ち、雑用、使い走り……やらされることは何でもやる。でも、それでパーティが上手く回るならそれでいいと思っていた。多少辛くとも、みんなの役に立てるならと我慢してきたんだ。
この街でもそこそこ有名な冒険者パーティ「ブラッディ・サーベル」に所属していたのは、ほんの数時間前までの話。
リーダーのガルドンに呼び出されたときは、てっきり次のクエストの打ち合わせだと思っていた。だが、そこで告げられたのは――
「レイ、おまえは今日限りでクビだ。おまえがいると足手まといなんだよ」
今でも頭の中をぐるぐる回っている、その言葉。
クビを宣告され、ギルドの集会所から追い出されたあと、気がつけば俺は宿のベッドに倒れ込んでいた。どうやってここに戻ってきたのか、自分でもよく覚えていない。
「……はぁ。頑張ってたのにな」
薄暗い部屋の天井を見上げ、ため息が漏れる。
食事はおろか、明日の宿賃もままならない。パーティからの報酬はほとんどなかったし、手元に残ったのはボロボロの革鎧と、俺がいつも使っている“ゴミ装備”扱いの長剣。それにポーチに入った数枚の銅貨だけだ。
あのパーティは、それなりに稼ぎの良いクエストを受注していたのに、俺には必要経費名目でほぼ金を渡してくれなかった。けれど、仲間のためなら……と耐えていた自分が馬鹿みたいだ。
「でも、クヨクヨしても仕方ないな。腹が減っては戦はできないって言うし……何か仕事を探さないと」
俺は立ち上がり、剣を腰に差す。今はもうパーティなんかない。ソロでも引き受けられるクエストを探すしかないわけだ。
ギルドの依頼板には“小型魔物の討伐依頼”やら“街道の巡回警護”やら、低ランク冒険者向けの仕事があるはず。中には少し危険なクエストでも、出発間際になって人数が足りず困っている場合もある。そこに滑り込むのも手だろう。どのみち大手パーティに戻る道はもうない。自分の力でどうにかするしかない……。
意を決して宿を出ると、夕方の街は忙しなく人が行き交っていた。行商人や他の冒険者。みんな自分の仕事に向かい、あるいは成果を手に戻ってくる。
俺は人気の少ない路地をショートカットして、冒険者ギルドの建物へと急いだ。そこはいつも通り活気に満ちている――が、さっそく嫌な顔を見つけてしまう。
「……あれ、ガルドンたち」
入口のホールで、大声を上げて笑っているのは、さっき俺を追い出した本人・ガルドンと、その取り巻きたちだ。
奴らは高級そうな鎧や宝石のはまった武器を手に、受付嬢に何やら成果報告をしている。どうやら高難度クエストを成功させたらしく、ギルド内の冒険者が賞賛の目を向けていた。
「“ブラッディ・サーベル”の旦那、今日も派手に稼いだようですねえ!」
「さすがに宝石付きの大剣は威力が違うってわけだ」
「ま、あいつらにかかれば当然よな」
取り巻きの一人が、ちらりと俺に気づいたようだ。口元がゆがむ。
「おやおや、そこにいるのは……ああ、レイか。今日クビになったやつだな。プッ……」
周囲の冒険者たちも、俺のことを見てクスクスと笑う者がいる。
悔しいが、言い返せる言葉も見つからない。事実、クビなんだから仕方ない。俺はそそくさと視線をそらし、依頼板の方へ足を進めた。
――しかし、そのとき。
「……すみません。そこ、見てもいいですか?」
隣に立っていた少女が、か細い声で話しかけてきた。
栗色のセミロングヘアがウェーブがかって揺れている。華奢な体つきに、少しだけくたびれた軽装鎧。年は俺より下だろうか? それとも同い年くらいかもしれない。
少女は依頼板に手を伸ばそうとして、背が低めなせいか上の方に貼られた用紙が取れない様子だった。
「あ、ああ、これ?」
俺は少女が見たがっている依頼書を代わりに引き剥がし、手渡した。「小型魔物の緊急討伐依頼」とある。報酬はやや高めだが、危険度もそこそこ高そうだ。
「ありがとうございます。……えっと、あなたも依頼を探しているんですか?」
「まぁね。いろいろあってソロになったばっかりでさ」
少女は少し考え込むように視線を落とし、
「もしよかったら、一緒に行きませんか? 私、一人じゃ不安なので……」
その言葉に驚いた。だって、初対面もいいところだし、普通は相手の実力すらわからないままパーティを組もうとしないものだ。
だが、俺もソロでこの依頼を受けるのは不安が大きい。報酬が良い分、厄介な魔物が出る可能性が高いのだ。
「……いいの? 俺なんかと」
「はい。ここに貼ってある依頼、他に受ける人もいなさそうですし。誰かと組まないと私の力じゃきっと難しいですし」
あまりに正直な口ぶり。彼女には変に警戒するより、純粋に助けを求めているように見えた。
それに俺も“ゴミ装備の役立たず”だと、さんざん言われてきた身。似たような苦労を感じ取ったのかもしれない。
「わかった。俺はレイ。レイ・アーディンだ。よろしく」
「私、フローラ・グレイスといいます。……よろしくお願いします、レイさん」
差し出された彼女の手は、ほんの少しだけ震えていた。だが、それを握り返すと温もりが伝わってくる。
こうして始まった、俺とフローラの寄せ集めパーティ。
そしてこの選択が、後に“ゴミ装備の底辺冒険者”と呼ばれた俺の運命を大きく変えることになる――なんて、その時の俺はまだ知る由もなかった。
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